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排尿トラブルいろいろ - おねしょと夜尿症、尿失禁

質問:6歳の子どもが、今でも時々おねしょをします。サマーキャンプに参加する予定なので心配です。私自身も出産後はまれに下着を汚すことがあり、排尿トラブルの対策などがあれば教えてください。

Point

  • 尿生成・排尿メカニズムはゆっくり発達。
  • おねしょと夜尿症の違いは年齢の違い。
  • 学童期の夜尿症には、焦らず、根気よく。
  • 成人女性に多いのは、「腹圧性尿失禁」。
  • 前立腺肥大の場合、「切迫性尿失禁」と「溢流(いつりゅう)性尿失禁」を伴うことがあります。

用語の説明

●おねしょと夜尿症
小学校に入る6歳前後までの乳幼児にみられ、睡眠中におしっこ(Pipi、Urin)を漏らしてしまう「寝小便」。語頭に「お」を付けて語尾を省略したのが「おねしょ」です。6歳を過ぎてもおねしょを繰り返す場合は「夜尿症」と呼ばれます。ドイツ語ではおねしょも夜尿症も同じく「Bettnässen(ベットを濡らす)」といいます。生活指導や服薬などによって改善することがあります。

●尿失禁
日常生活の中で、自分の意思とは関係なく尿が漏れてしまうことを尿失禁(Harninkontinenz)といいます。お年寄りだけでなく、出産後の若い女性、前立腺肥大症の男性にもみられます(後述)。

排尿のメカニズム

●尿を作る
血液が腎臓でろ過されて作られる尿。利尿調整を行っているのは、脳下垂体で作られる抗利尿ホルモンです。大人は夜眠っているときに分泌が増えます。

●尿をため、尿意を感じる
膀胱に尿がたまると、その信号が脳に伝わり、「尿意(Harndrang)」が感じられます。この尿意を感じる仕組みが未熟だと、膀胱に尿がたまった段階で反射的に放尿されてしまいます。

●排尿をコントロールする
大人は、排尿を意識的にコントロールすることができます。これは骨盤内の「外尿道括約筋」という筋肉を意識的に収縮させているもので、この筋肉の働きが不十分だと、尿漏れを来すことがあります。

おねしょ

●おねしょの原因は?
乳幼児の排尿メカニズムはまだまだ未熟なため、眠っている間に作られる尿量と膀胱の大きさ、尿意を感じ、排尿をコントロールする仕組みのバランスが取れていません。赤ん坊の膀胱は小さく、昼も夜も同じように尿が作られ、何度も排尿をします。

●年齢とともに改善
2~3歳頃になると膀胱の容量も増え、夜に作られる尿量が減り、おねしょの回数も減ります。多くの子どもが4~5歳までにおねしょをしなくなりますが、10~15%の子どもについては、小学校に入学する年齢になっても、おねしょがみられることがあります。

おねしょ・夜尿症の頻度

●個人差が大きい
排尿のメカニズムの発達には個人差があります。従って、「おねしょの自立」の年齢にも個人差があるのです。近年の研究では、遺伝的な要因も関係することが分かってきました。おねしょをした子どもを叱っても、自立が早まることはありません。

夜尿症

●夜尿症の原因は?
夜間に作られる尿量が多く、それに対して膀胱の容量が十分ではないことが主な原因です。このため、夜尿症は「多尿型」「膀胱型」「両者の混合型」の3つのタイプに分けられます。さらに、寝る前の水分摂取量、遺伝的な素因、強い心理的ストレスも影響します。

夜尿症の原因

●日常生活上の留意点
夜尿症治療における3原則は、「睡眠中に起こさない」「治療を焦らない」「子どもを叱らない」です。また、規則正しい生活サイクル、就寝前の水分の摂り過ぎを避ける、寒い季節は就寝前の入浴などで体を温めることが大切です。夜尿症の子どもは、自信を失っていることもあります。朝起きて、夜尿がみられなかったときは、大いに褒めてあげましょう。

●専門医を訪れる
夜尿症には治りにくいタイプや、膀胱や腎臓に問題がある場合もあります。学童期の夜尿が自信喪失に繋がり、精神面に影響を与えることもありますので、家庭で対策を講じても改善がみられない場合は、専門の医療機関に相談してください。

●夜尿症に対する治療法
膀胱や腎臓を検査し、夜尿の原因となるような問題がないことを確かめた上で、夜尿のタイプを診断し、抗利尿ホルモンや膀胱機能を安定させる薬などを用いる薬物治療、または、夜間に下着が濡れるとアラームが鳴る機器などを用いて治療を進めます。

夜尿症の原因

●外泊時の工夫
集団での宿泊行事やキャンプに参加する際は、不安を感じるでしょう。主催者や代表者に相談し、夕方以降の飲水は控えめに、夜中に一度起こしてもらう、必要なら朝早く着替えをさせる、といった配慮をお願いします。

その他の排尿トラブル

●若い女性の尿失禁
咳やくしゃみ、大笑いした瞬間、または階段を上ったり、重いものを持ち上げる動作によって、急にお腹に力が入ったときに尿漏れすることを「腹圧性尿失禁(Belastungsinkontinenz)」といいます。出産や加齢によって、外尿道括約筋の筋力が低下することと関係します。腹圧性尿失禁は女性に多く、女性の約4割が経験すると推計されています。軽症の場合は骨盤底筋群のトレーニングで、重症の場合も、多くは手術療法で改善します。

女性の尿失禁

●前立腺肥大に伴う尿失禁
男性の前立腺肥大症の症状には、尿意を催した際に直ちにトイレに行かないと、我慢が利かずに尿が漏れてしまう「切迫性尿失禁(Dranginkontinenz)」と、自然排尿が上手くいかずに少しずつ尿が漏れる「溢流性尿失禁(Überlaufinkontinenz)」がみられることがあります。前立腺肥大を治療すれば、多くは改善します。

●水流音だけで尿意
水の流れる音を聞いたり、冷たい水に触ったりしただけで、急に尿意を催したり、排尿してしまうことがあります。これは切迫性尿失禁の症状で、過敏になった膀胱が勝手に収縮することによって生じます。膀胱の容量を増やし、急な収縮を防ぐ作用のある薬が用いられます。

●泌尿器科での治療を
尿漏れは、日常生活の質(Quality of life)を低下させます。尿失禁の原因や症状の程度に応じて様々な治療法がありますので、お悩みの方は、我慢せずに一度泌尿器科の先生に相談してみましょう。

 
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馬場恒春 内科医師、医学博士、元福島医大助教授。 ザビーネ夫人がノイゲバウア馬場内科クリニックを開設 (Oststraße 51, Tel. 0211-383756)、著者は同分院 (Prinzenallee 19) で診療。

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