ジャパンダイジェスト

原因不明の胃痛・胃もたれ - 機能性ディスペプシア

食後の胃もたれや胃の痛みが続いているのですが、検査で「異常なし」と言われました。「機能性ディスペプシア」という病気があると聞きましたが、どんな病気でしょうか?

Point

  • 機能性胃腸障害の1つで、胃痛、胃もたれ、早期の腹部膨満感が主な症状です。
  • 日本人の6~10人に1人が患っています。
  • 胃カメラで器質的な異常が見つかりません。
  • 治療は消化機能改善薬、胃酸分泌を抑える薬を使用します。
  • 規則正しい食生活、十分な睡眠が大切です。

機能性ディスペプシア(機能性胃腸症)とは

● 主な症状は?

みぞおち(Oberbauch)の痛み、食後の胃もたれ、少し食べただけでお腹が一杯になる(Völlegefühl、vorzeitiges Sättigungsgefühl)など、不快な症状が続いているにもかかわらず、胃カメラ検査では異常が確認されず、そのほかに原因となり得る全身疾患もありません。命に別状はないものの、QOL(生活の質)を低下させる病状として捉えられています。

みぞおちの症状

● 病気にかかる確率は?

日本人の機能性ディスペプシアの有病率は高く、一般健康診断の受診者でみると10人から6人に1人(11〜17%)、腹部症状を訴えて外来を受診する患者の約半数(45~53%)にも上ると考えられています※。

● 機能性の胃腸障害とは?

消化器系の不快症状はあるのに、内視鏡検査などで形の変化を伴った(器質的な)異常が見つからない、一連の胃腸病を「機能性胃腸障害(Funktionelle Magen-Darm-Erkrankungen)」と呼んでいます。今回取り上げる「機能性ディスペプシア」のほか、「胃食道逆流症」(2013年12月20日発行968号掲載)「過敏性腸症候群」(2011年11月16日発行894号掲載)も機能性胃腸障害の仲間です。以前は「気のせい」「気持ちの問題」として、「慢性胃炎」「神経性胃炎」などと片付けられてきたものも含まれています。

機能性ディスペプシアの原因

● 原因1 胃の動き方の異常

食べた後に胃が「適切に動かない」、逆に「働き過ぎる」といった機能異常が現れます。ストレスによって自律神経系のバランスが乱れた結果、胃の働きがおかしくなることが要因として考えられています。正常な状態の場合、食物が食道から胃に入ると、胃は消化を助けるように形を変えて膨らみます。これを「胃適応性弛緩」といいます。しかし機能性ディスペプシアにかかると、約半数のケースで胃の膨らみ方に異常が認められます。それに伴い、胃の中に食べ物を適切にとどめておけなかったり、十二指腸への排出に問題が生じたりします。消化機能改善薬(アコチアミドなど)を用いると、胃適応性弛緩の改善がみられるという報告があります。

みぞおちの症状

● 原因2 胃の知覚過敏

さらに、刺激に対して胃が痛みを感じやすくなっていると考えられています。そのため、通常では何ということもない少量の食事でも満腹感を覚えたり、胃酸の刺激を、痛みとして知覚することがあります。

胃の知覚過敏

● 原因3 その他の影響因子

ストレス、睡眠不足、食生活の乱れ、脂肪分の多い食事、アルコールやタバコ、幼少時のトラウマといった心理的因子などが、増悪因子として関与していると考えられています※。

機能性ディスペプシアの治療

● 胃もたれ、膨満感に対して

胃が適切に機能していないことが多いので、胃の運動を正常に近づける作用のある消化管機能改善薬(アコチアミド、商品名アコファイド®など)が治療に用いられます。漢方薬の「六君子湯(りっくんしとう)」にも胃運動改善効果があると報告されています。

● 胃の痛みに対して

胃の痛みには胃酸の分泌を抑える薬(プロトンポンプ阻害剤のオメプラゾールなど)が用いられます。

● 不安やストレスに対して

強いストレスが背景にある場合には、医師や臨床心理士と相談しながらストレスを改善する方法を模索します。場合によっては、軽い不安や緊張を取り除くために抗不安薬が用いられることもあります。

● ピロリ菌の除菌

胃・十二指腸潰瘍の原因となるヘリコバクター・ピロリ菌が陽性の場合には、抗菌薬を用いた除菌を進めます。

機能性ディスペプシアの治療
症状
胃のもたれ 胃の運動を改善する薬
早期の満腹感
胃の痛み 胃酸の分泌を抑える薬
強いストレス、心理的要因 リラックスさせる植物製剤、抗不安薬
ヘリコバクター・ピロリ菌 除菌のための抗菌薬

日常生活で気をつけること

● 甘いもの、脂肪、アルコールは控えめに

脂肪分を多く含む食事、強い香辛料、甘いものの摂り過ぎは胃に負担を掛け、胃もたれの原因となります。外食の際、ドイツ食は脂肪成分の比率が和食に比べて多いことにも留意しましょう。過度のアルコールは胃酸の分泌を促し、胃の症状を悪化させます。

● 食後はリラックス・タイムを

食後すぐに活動を開始すると、交感神経が働き、胃の働きがうまくいかないことがあります。胃の運動を促進するのは、心身がリラックスしているときに優位となる副交感神経ですので、食後はひと休みしてから活動を再開しましょう。

● 規則正しい食生活

食事の時間が不規則になってしまうのは現代人の生活の特徴。しかし、深夜の夕食や就寝直前の食事は胃に負担をかけ、夜間の胃酸分泌を促すので、好ましくありません。

● 十分な休養と睡眠

理屈では分かっていてもなかなか難しいのが十分な睡眠時間の確保です。胃腸は、ストレスや睡眠不足の影響を受けやすいので、適度な休養と十分な睡眠がとても大切です。ちょっとドイツ式に「明日でも良いことは明日に延ばす」というスタンスで根を詰め過ぎないようにしてみましょう。夜遅くまでメールをチェックしたり、ウェブサイトを閲覧したりする習慣も好ましいとは言えません。

● 体を動かす

自家用車をお持ちの場合、車での移動の多くなるドイツ生活。通勤時、乗り換えのためにホームを走る機会もなくなり、運動不足になっていませんか? 身体を動かすことは胃腸の運動を改善します。階段を使うなど、日々の生活の中で歩く機会を増やしましょう。


日常生活で気を付けること
脂肪分、アルコール、甘いものは控えめに
食事の直後はリラックスする時間を
就寝直前の食事は避ける
十分な睡眠
仕事、家事から離れる時間を
体を動かす

※日本消化器病学会
「機能性消化管疾患 - 診療ガイドライン 2014:機能性ディスペプシア(FD)」
www.jsge.or.jp/files/uploads/FDGL2.pdf

 

 

 
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馬場恒春 内科医師、医学博士、元福島医大助教授。 ザビーネ夫人がノイゲバウア馬場内科クリニックを開設 (Oststraße 51, Tel. 0211-383756)、著者は同分院 (Prinzenallee 19) で診療。

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