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学校感染症の出席停止日数は? -ドイツの基準-

ドイツでは子供が頭シラミにかかったら、出席停止になると聞きました。またノロウイルスに感染した場合、下痢が止まってもすぐに学校に行けないそうですが、日本との出席停止日数の基準や違いを教えてください。

Point

  • 予防接種はきちんと済んでいますか?
  • 病気ごとに出席停止の基準があります
  • 出席停止期間を過ぎても排菌が続く感染症もあります

集団生活の場への出席停止

● なぜ休む必要があるのか

子供が集団で生活している幼稚園(Kindergarten、Kita)や学校(Schule)では、伝染性の感染症があっという間にほかの児童、生徒に拡がる恐れがあります。そのため、感染予防の観点から主な感染症ごとに出席停止(Kitaverbot、Schulverbot)の基準が定められています。多くの児童が感染した場合には授業中止(Unterrichtsausfall )もありえます。

● ドイツの出席停止の基準

ロベルト・コッホ研究所(RKI)が勧める感染児童の再登園、再登校(Zulassung)の基準に従います。RKIの資料を基に各地域の保険所が作成している主な学校感染症の一覧表(Wiederzulannsungstabelle)もあります。

ドイツの主な学校感染症
病気潜伏期(日)出席停止の期間保健所届出
基準あり症状改善診断書
インフルエンザ 1〜2 ◯ *
手足口病 4〜30 なし
りんご病 7〜14 ◯ *
溶連菌感染 1〜3
(疑いも)
伝染性膿痂疹 2〜20
(疑いも)
流行性角結膜炎 5〜12 ◯ *
頭シラミ -
感染性胃腸炎 1〜10
* 2名以上の患児の時、△ 場合によって必要

● 日本の基準とは異なる場合も

日本の学校保健安全法に則った、感染症発症の後の復学・復園の基準と、ドイツの基準とは、必ずしも一致しません。不明な場合は、医療機関や通学している学校にたずねてみましょう。次にご紹介する感染症の中で、復学・復園する際に医師の許可書(診断書、schriftliches Attest)を必要とするものには※をつけています。

時々流行る学校感染

● 頭シラミ(Kopfläuse)

第1回目の治療の後(重要:8日後に2回目の治療を要します)に復学が可能。医師の診断書を必要とするか否かは幼稚園、学校によって異なり、親が十分な処置をしたことを確認するだけの所もあります(日本では出席可能)

● はやり目(流行性角結膜炎、Ansteckende Bindehautentzündung)※

発赤と分泌物がなくなったら復学可能。アデノウイルスによる流行性角結膜炎では、医師の診断書が必要。

発疹性の感染症

● 知恵熱(突発性発疹、3-Tage Fieber)

丸1日(24時間)発熱がなければ登園可能。日本では食事ができて元気が良ければ登園可能。

● はしか(麻疹、Masern)

症状が回復し、最初の発疹が出てから少なくとも5日以上経過したら復学可能。日本では解熱(体温の正常化)して3日を経過するまで自宅療養とします。

● 風疹(三日麻疹、Röteln)

症状が回復し、最初の発疹が出てから少なくとも1週間が経過したら可能。日本では発疹が消えたら可能。

● 水ぼうそう(水痘、Windpocken)

全ての水疱が治癒したら、復学・復園が可能(合併症のない場合は、発疹が出てから約7日間が経過した後)。

● りんご病(伝染性紅斑、Ringelröteln)

発疹(紅斑)が出現していても登園可能(日本でも紅斑出現時に元気が良ければ登園可能)。

● 飛び火(伝染性膿痂疹、Borkenflechte)※

抗菌薬を服用して24時間以上経過するか、皮疹が治った後に出席可能。再登校には医師による診断書が必要となります(日本は出席可能)。

● 手足口病(Hand-Fuß-Mund-Krankheit)

水疱がみられなくなったら登園・登校可能。

● 疥癬(かいせん、Krätze、Skabies)※

きちんと治療した後、医師の診断書をもらい、登園・登校可能。

胃腸(おなか)の感染症

● 流行性嘔吐下痢症(感染性胃腸炎、Magen-Darm-Erkrankungen)

ノロウイルス(Norovirus)、ロタウイルス(Rotavirus)、サルモネラ(Salmonellen)、カンピロバクター(campylobacter)などの感染性下痢症では、最後のおう吐(Erbrechen)もしくは下痢(Durchfall)をしてから少なくとも48時間が経過してから(日本とは異なるので要注意)。

● 口内炎(Mundfäule)

症状が回復したらOK。

● 腸管出血性大腸菌感染(病原性大腸菌感染、EHEC)※

症状が回復後、3回の排便で起因菌が陰性であれば復学・復園を許可される。要診断書。

● A型肝炎(Hepatitis A)

 医師の判断に従う(ほぼ同じ意味であるが、日本では肝機能が正常化してから)。

● 赤痢(Shigella)※

治療の上、3回の便検査で赤痢菌が陰性となったら、登園・登校可能。医師の診断書が必要で、場合によっては保健所の判断に従うことも。

発熱、全身の感染症

● 溶連菌感染症(猩紅熱、Streptokokken A-Mandelentzündung、Scarlach)

抗菌薬を開始して24時間後、もしくは症状が回復すれば登園・登校可能。

● おたふく風邪(流行性耳下腺炎、Mumps)

発症から少なくとも5日間経過し、症状が改善すれば登園・登校可能。

● 風邪(Erkältung)

38℃以上の発熱があった場合には、解熱して24時間が経過してから登園・登校が可能。

● インフルエンザ(Grippe)

症状が回復したら登園・登校が可能。解熱後何日という基準はなく、再登校の際の医師の診断書の必要もありません。日本では発症後5日、かつ解熱後2日(幼児は3日)が経過してから。

● 伝染性単核球症(キス病、Pfeiffersches Drüsenfieber)

症状が回復したら登園・登校が可能。

● 髄膜炎(Hib、Meningokokken)

原因となる細菌(起因菌)がヒブ菌でも髄膜炎菌でも、抗菌薬による治療を開始して、症状の回復がみられたら登園・登校が可能。

● 百日咳(Keuchusten、Pertussis)※

抗菌薬による治療開始から5日経過したら登園・登校が可能。

● ジフテリア(Keuchusten、Pertussis)

症状が改善し、他人への感染の可能性がなくなったら登校が可能。医師の判断と保健所の同意が必要。

● 結核(tuberkulose)

治療の後、3回以上菌検出が検出されなくなり、医師の診断書が出てから登園・登校が可能。

● その他の重篤感染症

コレラ、ウィルス性出血熱などの重篤な感染症では保険所(Gesundheitsamt)の許可が必要。

気をつけたい点

● 短すぎる療養期間は他人に迷惑をかけることに

1日も早く幼稚園や学校に復帰させたい親の気持ちも分かりますが、ほかの児童に感染させ多大な迷惑をかけることがあるので、決められた基準は守りましょう。

● 出席停止後の排菌にも留意

ノロウイルス感染症などでは下痢症状が治まっても1〜2週間という長い期間、便への排菌が持続します。出席停止期間が過ぎても手洗いなどを徹底しましょう。

● 予防ワクチン接種は済んでいますか?

学校感染症の中には予防接種により感染を防げるものもありますので、ドイツで必要な予防接種について不確かな場合は医師に相談すると良いでしょう。

 
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馬場恒春 内科医師、医学博士、元福島医大助教授。 ザビーネ夫人がノイゲバウア馬場内科クリニックを開設 (Oststraße 51, Tel. 0211-383756)、著者は同分院 (Prinzenallee 19) で診療。

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