Hanacell

「ホアン・ミロ
ポエジーとしての絵画」
„Miró. Malerei als Poesie“

スペインを代表する画家ホアン・ミロ(1893〜1983)が、美術よりも文学に傾倒していたことは、あまり知られていない。現在K20で開催中の展覧会「ホアン・ミロ ポエジーとしての絵画」では、言葉と造形が交わる独特の“絵画詩”シリーズを中心に、ミロと文学の関係に迫った110点の作品が公開されている。

ホアン・ミロ

2015年6月13日(土)~2015年9月27日(日)

開館時間:火〜金 10:00–18:00 土日祝 11:00–18:00  / 月曜休館
入場料:大人12€、割引10€、団体9€(10人以上のグループ、1人分の料金)
会場 : Kunstsammlung NRW K20 Grabbeplatz
Grabbeplatz 5 40213 Düsseldorf
Tel: 0211-8381 204

www.kunstsammlung.de

Kunstsammlung NRW K20 Grabbeplatz

日本語によるガイドツアー

6月21日(日)12:00~13:00
8月22日(土)15:30〜16:30

入場料:9ユーロ 
ガイド料:8ユーロ
※最少催行人数(10人)の関係上、
事前のお申し込みが必要です。
下記までお申し込み下さい。
E-Mail: このメールアドレスは、スパムロボットから保護されています。アドレスを確認するにはJavaScriptを有効にしてください
(田中聖香)

講演「ミロと日本」

2015年9月10日(木)19:00(開場18.30)
英語、入場無料
Schmela Haus,
Mutter-Ey-Straße 3, 40213 Düsseldorf 
講演者:Michael Richardson
(Goldsmiths College, University of London)

Miró. Malerei als Poesieミロの作品を前にしたとき、ほとんどの人は構えることなく、素直に作品の中に入っていけるのではないだろうか。赤や黄などの原色を用い、大きな筆づかいで描かれる太陽や星、人の身体、鳥にも動物にも見える生き物たち。具象画と抽象画の間に位置する独特の画風には、ユーモアと明るい開放感が感じられる。

そんな作風が私たちを魅了する一方で、ミロが美術よりも文学から多くのインスピレーションを得ていたことは、あまり知られていない。ミロは無類の読書家だった。そして、画家として活動を始めた1920年代に、パリで超現実主義(シュールレアリスム)の詩人たちと知り合い、ますます言葉やテキストが喚起するファンタジーを意識するようになる。文字やテキストを直接作品に取り込むだけでなく、 トリスタン・ツァラ、ロベール・デスノス、瀧口修造といった詩人たちとの共同制作により、生涯に260冊もの詩画集を出版している。

ミロと文学との関わりは重層的だ。まず、文章から創作のアイデアを得るという段階がある。ミロの作品に詩人たちがタイトルをつけることもあった。詩人たちとの交流を通して、ミロは詩人という存在に特別な意味を見出すようになる。ミロにとって詩人とは、単に詩を書く人ではなく、世界を哲学的に再解釈する人を指した。そして、自ら「詩人の威厳をもって生きる」ことを目指したのだった。

その一方で、文字やテキストを絵画に取り込む作業も始まる。ミロが最も敬愛した詩人アルテュール・ランボーは、Aは黒、Uは緑といった具合に、5つの母音に色を与えていた。ミロはランボー理論を作品に生かしただけでなく、これに形を追加した。Aは三角形で下半身、Oは丸で目や太陽、Uは曲線で腕や脚を意味する。文字や言葉は人間の理性を規定するものだが、ミロはそれを絵画という異世界に解放することで、人の精神を解放したと言える。ミロが「自分は詩と絵を区別しない」と公言し、“絵詩人”を自称したのには、こうした背景がある。

本展では、ミロと文学、特に詩との相関関係をたどることができる。より抽象的で内省的な表現の20年代、原色の採用が本格化する30年代、独自の造形ボキャブラリーが確立した40年代と、作品の傾向は時代とともに微妙に変化するが、一貫してミロが好んで描いたのは、自然や動物、そして人間の姿だった。

それは、文学と並行して、ミロのファンタジーの源泉が常に「いのち」にあったことを示している。生きとし生けるものへの愛と共感。それはミロがスペイン・カタルーニャ地方に生まれ育ち、光に溢れた大らかな地中海岸の風景から、多くを享受したことと無関係ではないだろう。

パリに住み、シュールレアリストたちと頻繁に交流していた時代も、ミロはまとまった制作はカタルーニャに帰郷して行い、後年はマヨルカ島にアトリエを構えた。ダリやキリコなど超現実主義の騎手たちがフロイトの理論を援用し、夢や無意識の世界を具象として描いたのとは対照的に、ミロはあくまでも自然と人間という現実から離れず、それをむしろ抽象的に表現した。超現実主義の提唱者アンドレ・ブルトンから「ミロは我々の中で最もシュールレアルだ」との賛辞を受けながら、ミロが間もなくグループから離れていったのは、現実世界を否定するシュールレアリスムと、いのちを肯定する自分の間に相容れぬものを感じたからだろう。ミロ自身は、むしろパウル・クレーの作風に共感していたと言われる。

文学と密接に結びついた知性をたたえつつ、ミロの作品が見る人になお温かさを伝えるのは、自然と人間への敬愛が満ちているからだ。そんなミロの絵画言語を、この展覧会で身近に感じていただきたいと思う。

(NRW州立美術館非常勤スタッフ・田中聖香)

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