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本場ドイツのバウムクーヘンを味わおう!

バウムクーヘン(Baumkuchen)……おそらく日本で一番親しまれているドイツ語ではないでしょうか。本場のバウムクーヘンをドイツで食べたい! お土産に買いたい!という人も多いはず。しかし、当地のバウムクーヘン事情は、日本とはずいぶん違うようです。では一体、ドイツのバウムクーヘンとは、どんなものなのでしょう? その歴史やおいしさの秘密を探ってみました。
(テキスト:坪井由美子、撮影:坪井由美子、米田由佳)

バウムクーヘンバウムクーヘンに歴史あり

ドイツでバウムクーヘンが誕生したのは、1800年代の初めといわれています。発祥の地は諸説ありますが、最初にバウムクーヘンが焼かれたという記録が残っているのが、北部ザクセン=アンハルト州の小さな町、ザルツヴェーデル(Salzwedel)。このほかにも「バウムクーヘン発祥」を名乗る町はいくつかあって、東部のドレスデンやコットブスなどが有名です。

ドイツ人はバウムクーヘンを食べない?

皆さんご存じの通り、バウムは「木」、クーヘンは「ケーキ」を意味します。名前のごとく、木の年輪のような層を持つこのお菓子は、ドイツ生まれ。ところが意外にも、当地ではなかなかお目にかかることができません。それもそのはず、ドイツのバウムクーヘンは日本のように身近な食べものではなく、クリスマスやお祝いに贈る高級菓子という位置付けなのです。常時店頭に置いているお店は少なく、バウムクーヘンを「食べたことがない」というドイツ人もたくさんいるようです。

バウムクーヘンの定義とは

ドイツでは、ビールに「ビール純粋令」があるように、「バウムクーヘンの定義」が国立菓子協会によって定められています。油脂はバターのみ、ベーキングパウダーは使用しないなど、数々の厳しい基準をクリアしたものだけが本物と認められています。専用のオーブンで手間暇かけて作られるバウムクーヘンは、高度な技術と経験が必要 とされるため、菓子職人のマイスター試験の課題にもなっているほど。ドイツのバウムクーヘンは、限られた職人さんだけが作ることのできる「特別なお菓子」なのです。

ドイツと日本のバウムクーヘンは別物?

柔らかくてふわふわの食感が好まれる日本では、バウムクーヘンも日本人の舌に合わせて独自に進化し、味も形もバラエティーに富んだ新商品が開発され続けています。一方、ドイツのバウムクーヘンは、「バウムクーヘンの定義」に則り、昔ながらのレシピと製法に基づいて忠実に作られ、伝統の味が大切に守られています。主な材料は、小麦粉、バター、マジパン(アーモンド)、卵、砂糖など。これにアルコールやスパイスなど、各店秘伝の隠し味がプラスされます。フォンダンやチョコレートでコーティングされているのは乾燥を防ぐため。ドイツのバウムクーヘンは、まるで歴史の重みを内包しているかのような、ずっしり感が印象的です。

バウムクーヘンの美味しい食べ方

ドイツには、バウムクーヘンが食べられるカフェを併設したコンディトライも、少数ですがあります。 こういったカフェで供されるのは、横に薄くそぎ切 りにした「バウムクーヘン・シャイベ」。縦に切るよりも口当たりが柔らかくなり、どっしりとしたバウムクーヘンでも重さを感じません。ドイツ風に、たっぷりと生クリームを添えていただくのもお勧めです。チョコレートでコーティングされているものは、常温に戻し、お湯で温めた包丁でチョコレートを溶かしながら刃を入れると、きれいに切れます。

Salzwedeler Baumkuchen
ザルツヴェーデル地図 バウムクーヘン発祥の町
ザルツヴェーデルへ

旧東ドイツに位置するザルツヴェーデルは、ガイドブックにも載らない小さな町ですが、「バウムクーヘンの町」として、知る人ぞ知る存在。バウムクーヘンを売るコンディトライがあちこちにあり、200年以上前のレシピ通りに直火で焼かれるバウムクーヘンを見たり食べたりできるという、お菓子好きにはたまらない町なのです。

アクセス

ベルリン中央駅から ICでStendalへ向かい、乗り換えて ザルツヴェーデルまで約1時間40分
ハンブルク中央駅から Uelzenで乗り換え、ザルツヴェーデルまで約1時間半
デュッセルドルフ中央駅から HannoverとUelzenで乗り換え、ザルツヴェーデルまで約4時間40分
※ザルツヴェーデル駅から町の中心までは徒歩で約15分

ザルツヴェーデル

ザルツヴェーデルには有名な観光名所こそありませんが、古いレンガ造りや木組みの家がたくさん残っていて情緒たっぷり。のんびりお散歩しながらバウムクーヘンが辿った波乱万丈の歴史に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

最古のバウムクーヘン作りを見学しよう

ドイツ最古のバムクーヘンドイツ最古のバムクーヘンのレシピは、1800年代初めに書かれたものと伝えられています。その後、2つの世界大戦や激動の歴史を経る中で、いろいろな人の手に渡ることになるこのレシピを現在保有しているのが、ザルツヴェーデルでバウムクーヘン専門店を営むヘニヒ家。

「最初のザルツヴェーデルのバウムクーヘン工場」という店名のごとく、同店では代々受け継がれてきたレシピ通りの材料を使い、今でも直火でバウムクーヘンを1本ずつ焼き上げています。

併設の工房は見学もできるので、ぜひ訪問してみましょう(見学無料、通常13時まで)。材料を調合し、生地を一層ずつ杓子でかけながら焼き上げ、カットしてコーティングする過程に至るまで、すべて手作業で行われているバウムクーヘン作りが目の前で見られるなんて、これは貴重な体験です。ごうごうと燃え盛る炎の中でできあがっていくバウムクーヘンを前にしたら、興奮せずにはいられません!

最初のザルツヴェーデルのバウムクーヘン工場

焼き上がったバウムクーヘンは手作りならではの、でこぼこを残したワイルドな形で、しっとりと柔らかく優しい味わい。美味しさに感動したのはもちろんですが、伝統と歴史の継承について考える、良い機会となりました。

Erste Salzwedeler Baumkuchenfabrik
St.-Georg-Str.87, 29410 Salzwedel
※工房見学時間は要確認
www.baumkuchen-salzwedel.de

ザルツヴェーデルのバウムクーヘン巡り

歴史あるバウムクーヘン・カフェ
Café Kruse

Café Kruse

「Erste Salzwedeler Baumkuchenfabrik」が保有する最古のレシピと、同じ時代から伝わる古いレシピを受け継ぐお店が、こちらのカフェ・クルーゼ。ほのかなスパイスとバニラの風味が印象的なバウムクーヘンです。200席もある広々としたカフェの中庭にはテラス席もあります。種類豊富なケーキやアイス、バウムクーヘンに生クリームをこんもりトッピングしたデザートもいただけます。

Café Kruse
Holzmarktstr.4-6, 29410 Salzwedel
www.Kruse-Baumkuchen.de

町の中心のコンディトライ・カフェ
Treff im Adler Horst

Treff im Adler Horst

ザルツヴェーデルとその近郊に何軒もの支店を持つバウムクーヘン工房「ザルツ ヴェーデラー・バウムクーヘン」が経営するコンディトライ・カフェ「トレフ・イム・アドラー」。町の中心広場に面した明るい雰囲気のお店で、朝食やランチ、アイスデザートなどもいただけます。バウムクーヘンはフォンダン、チョコレートがけのほか、2つの味が楽しめるハーフ&ハーフもあり。

Treff im Adler Horst(Salzwedeler Baumkuchen GmbH)
Neuperverstr.29, 29410 Salzwedel
www.baumkuchen-saw.de


バウムクーヘンの名店ドイツ全国
バウムクーヘンの名店5選

ドイツ各地で伝統の味を守り続ける、バウムクーヘンの名店をご紹介します。これらのお店なら、間違いなく「本物のバウムクーヘン」が手に入るはず!

コンディトライ・ラビーン
Konditorei Rabien
スパイスがほんのり香る優しい味。手作りならではの凸凹がいい!

コンディトライ・ラビーン

ベルリン郊外の住宅地に佇む「ラビーン」は、1878年の創業から、4代にわたって伝統の味を継承しています。当時のレシピと製法を守り、自然で新鮮な材料のみで手作りされているバウムクーヘンは、素朴で優しい味わいが魅力。海外からも注文がくるほどの人気ぶりで、一番多いお客様は日本人だとか。クリスマス前には1日に50本以上焼くこともあるというから驚きです。同店を訪れたなら、種類豊富なケーキもぜひお試しあれ。

Konditorei Rabien
Klingsorstr.13 12167 Berlin
www.rabien-berlin.de

コンディトライ・クロイツカム
Conditorei Kreutzkamm
見た目も味も上品でリッチな味わいのバウムクーヘン!

コンディトライ・クロイツカム

1825年にドレスデンで創業した クロイツカムは、ザクセン王国のアルバート王から王室御用達の称号を受けた、まさに「王様のお菓子」。第2次世界大戦時の空爆の影響で、ドレスデンは廃墟となってしまいましたが、ミュンヘンに拠点を移して再スタート。東西ドイツ再統一後、ドレスデンでも店を再開することができました。いまや日本人の間では、同店のバウムクーヘンはドイツの定番土産として大人気。ドレスデン銘菓のシュトレンも絶品です。

Conditorei Kreutzkamm
Altmarkt 25 01067 Dresden
http://kreutzkamm.de

ホレンディッシェ・カカオシュトゥーべ
Holländische Kakao-Stube
レトロなパッケージがかわいい!昔ながらの正統派バウムクーヘン。

ホレンディッシェ・カカオシュトゥーべ

数年前に日本のデパートに登場するやいなや、可愛いパッケージと本場の味で多くの女性ファンを獲得した同店は、1895年にハノーファーで創業。舌を噛みそうな店名は、オランダの老舗ココア「ヴァン・ホーテン」の試飲所としてオープンしたことに由来します。日本で「行列ができるバウムクーヘン」として有名になった今も、本店は変わらずレトロ感たっぷり。100年前にタイムトリップできる、愛すべきオーマ・カフェです。

Holländische Kakao-Stube
Ständehausstr. 2 30159 Hannover
http://hollaendische-kakao-stube.de

コンディトライ・ハイネマン
Konditrei Heinemann
しっとりとして口溶けが良い!外側のチョコレートもさすがの美味しさ!

コンディトライ・ハイネマン

1932年に、メンヒェングラットバッハの小さなお菓子屋さんから始まったハイネマン。支店を置くのは品質管理の行き届く近郊のみ、というこだわりからデュッセルドルフを中心に展開していますが、その美味しさは世界中のグルメから絶賛されるほど有名です。看板商品のシャンパントリュフのほか、日本人の間で圧倒的人気を誇る逸品がバウムクーヘン。一口サイズのバウムクーヘン・シュピッツェや各種ケーキもお勧めです。

Konditrei Heinemann
Martin-Luther-Platz 32 40212 Düsseldorf
www.konditorei-heinemann.de

ライジーファー
Leysieffer
オレンジ・リキュールを効かせた大人味。缶がステキ!

ライジーファー

ドイツ北部のオスナブリュックで1909年に創業したライジーファーは、現在はベルリンやミュンヘンをはじめ、20店舗以上を展開する人気店。主要空港内でも取り扱っているので、お土産 探しに困ったときにも重宝します。ドイツでは高級チョコレート店として知られていますが、日本人に人気なのは、やはりバウムクーヘン。同店ではコアントロー風味の生地に合うチョコレートがけのものがお勧めです。なかでも缶入り商品は贈り物に最適。

Leysieffer
Kranstr.41 49074 Osnabrück(本店)
www.leysieffer.com

番外編: スーパーのバウムクーヘン
普段のおやつにぴったり。
甘すぎないビターチョコがおすすめ!

スーパーのバウムクーヘン

普段はなかなかお目にかかれないバウムクーヘンですが、秋からクリスマスにかけては、スーパーマーケットでも購入可。年々売り出す時期が早まっているようで、最近は9月頃からクリスマス菓子のワゴンが見られます。大型スーパーケットから町のディスカウントスーパーまで、どのお店でもバウムクーヘンを見かけます。たいていは同じ形の箱入りのもので、味はミルクとビターチョコレートがけの2種類が定番。3ユーロ以下という安さなので、家庭でも手軽に楽しめますね。

購入できる場所:REWE、KAISER'S、
Aldi、realなど各種スーパー

 
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