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フランスワインに近づくドイツワイン

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2月上旬、ハンブルク日本人会館で、現在ドイツで栽培されているフランス品種のブドウから造られるワインについて講座を行いました。準備をしながら、隣り合わせるドイツとフランス北部のワインがずいぶん似通っていることに改めて気がつきました。アルザス地方、ブルゴーニュ地方、シャンパーニュ地方の栽培品種は、古くからドイツの栽培品種と共通しています。

ドイツとフランスの狭間で、歴史に翻弄されたアルザス地方の主要品種は、リースリング、ジルヴァーナー、ゲヴュルツトラミーナ、ムスカテラ、ピノ・ブラン、ピノ・グリ、ピノ・ノワールの7品種。ドイツ同様に単一品種で醸造し、品種名をエティケットに明記しています。

リースリングはドイツ、ライン地方原産。 ジルヴァーナーは中央ヨーロッパ原産でオーストリアという説が有力です。ゲヴュルツトラミーナはイタリアの南チロル地方の町トラミーンに由来する名称ですが、原産地は不明。ムスカテラはギリシャ原産といわれます。ピノ・グリはドイツではグラウブルグンダー、ピノ・ノワールはシュペートブルグンダーといい、ともにブルゴーニュ原産。ピノ・ブランはドイツではヴァイスブルグンダーと呼ばれ、原産地はブルゴーニュ、アルザス、ローヌのいずれかだといわれています。

アルザス地方原産の品種には、現在、旧東独のザクセン地方だけで栽培されている希少品種ゴールドリースリング、ドイツ全域で栽培されているオクセロワがあります。これら2つの白品種は、フランスよりドイツの風土に適応したようで、今ではドイツならではの品種として愛されています。

ブルゴーニュ地方の品種で、ドイツで栽培されていないのは、少数派のアリゴテとガメイだけ。ピノ・ノワールはドイツの伝統品種です。シャルドネは比較的新顔で、1990年代前半にドイツでの栽培が正式に認可され、年々栽培面積が増えています。

ブルゴーニュ由来の品種にも、フランスより、ドイツで愛好されている赤品種が2つあります。1つはザンクト・ラウレント(フランス名ピノ・サンローラン)とフリューブルグンダー(同ピノ・マドレーヌ)です。

シャンパーニュ地方の主要3品種である、ピノ・ノワール、ムニエ、シャルドネのうち、ムニエは、リースリングとは関連性がないものの、ドイツではシュヴァルツリースリングという名称で親しまれている赤品種です。ドイツではシャルドネの栽培が可能になった1990年代後半からシャンパーニュと同じブレンドのゼクトが生産されるようになっています。

ドイツにおけるフランス品種のニューカマーは、ロワール地方の白品種ソーヴィニヨン・ブランとシュナン・ブラン、北ローヌ地方の白品種ヴィオニエと赤品種シラー、そしてボルドー地方の赤品種メルロ、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、プチ・ヴェルドです。ソーヴィニヨン・ブランはボルドー品種でもあり、ニューカマーの間では最も人気がある品種です。

2月の講座では、品質的に同等であるボルドーの赤とドイツのボルドーブレンドをブラインドで比較試飲したのですが、12名の参加者のうち、1名を除くほぼ全員がドイツのボルドーブレンドをフランスワインだと確信しておられました。参加者の中にはワインに詳しい方も多く、ボルドー品種がドイツに適応していることの確証を得たような気がしました。

 
Weinbau Frédéric Fourré
フレデリック・フレ(ザクセン地方)

フランス人醸造家のフレデリック・フレさん
フランス人醸造家のフレデリック・
フレさん。手にしているのが今回
紹介する「グートエーデル」

90年代頃から、たまにドイツで働くフランス人醸造家に出会うようになった。昨年はザクセン地方でフレデリック・フレさんと出会った。フレデリックさんはパリ出身のソムリエ。20年前に醸造家のパートナー、アムレイ・ニーゼンさんの故郷であるザクセン地方に移住し、ドレスデンのホテルでソムリエとして働いていた。間もなく、ドレスデン近郊ラーデボイルの銘醸畑として知られる「ゴールデナー・ヴァーゲン」に小さな区画を手に入れ、ワイン造りを始めた。趣味で始めたワイン造りだが、2007年に醸造所を立ち上げ、現在では5ヘクタールを擁するまでに成長。ザクセンのテロワールを生かしたフレンチスタイルのワインは、地元のワインのなかでもひときわ輝いている。ザクセン地方の醸造家グループ「ゲミッシュテ・ブーデ」のメンバー。

Weinbau Frédéric Fourré
Kleiststr. 12, 01129 Dresden
Tel. 0179-6790863
www.weinbau-fourre.de
www.gemischte-bude.de


2017 Gutedel
2017年産グートエーデル 辛口 12.50€

フレデリックさんはアルザスでワイン造りを実習した経験を持ち、アルザス品種やブルゴーニュ品種を得意とするが、ミュラー=トゥルガウ、ショイレーベなどのドイツ系品種にも力を入れている。ご紹介するグートエーデルはシャスラとも呼ばれるフランス系品種。閃長岩、花崗岩の風化土壌である「ゴールデナー・ヴァーゲン」の樹齢60年の古木のブドウから造られたもの。熟したリンゴや洋梨の風味、柑橘系とハーバル系の風味が調和し、充実した味わいでありながら、バーデン地方のグートエーデルとは異なり、繊細で軽快だ。

 
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岩本順子(いわもとじゅんこ) 翻訳者、ライター。ハンブルク在住。ドイツとブラジルを往復しながら、主に両国の食生活、ワイン造り、生活習慣などを取材中。著書に「おいしいワインが出来た!」(講談社文庫)、「ドイツワイン、偉大なる造り手たちの肖像」(新宿書房)他。www.junkoiwamoto.com
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