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ロンドンのゲストハウス
So. 22. Sep. 2019

樽をめぐるお話 3 - 樽造りとバリックの現在

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1つの樽は、気の遠くなるような時間を経て造られます。前々回にご紹介したブライト氏は、樹齢150年を経た直径約50cmのオークを使用していました。年輪の幅が狭いものは、樹木がゆっくりと成長している証であり、そのようなオークは質が良く、ワインの樽に適しているのだそうです。理想的なオーク材は、縦に割って節のない部分を選別し、2~3年間にわたって空気の良い屋外で日光と風雨にさらします。

ドイツで使用されているバリックの素材は、ほとんどがフランス産オークです。フランスの森林のおよそ3分の1はオークの森で、年間20万樽を生産するサイクルができているそうです。今日ではドイツの造り手も樽の品質を吟味するようになり、リムーザン地域圏、ニエーヴル県、アリエ県、アリエ県内のトロンセなど、オークの産地や種類、樹齢、さらには樽の生産者に至るまで、こだわりを持って選ぶようになりました。

樽材は通常、一方のたがをはめた段階で、水で湿らせながら、内側から直火で熱して曲げやすくし、工具で締めて成形します。その後、仮成形された樽の内側をトーストします。バリック特有の樽香の強弱は、このトーストの度合いで決まります。通常、ライトなトーストからヘビーなトーストまで4段階あり、醸造家はそれぞれのワインに相応しいものを選択します。

バリックは、フランスで製造されるものが最も優れているそうです。微妙なトースティング技術には熟練の技が必要です。ドイツにはバリック樽造りの伝統がないため、ドイツ産、あるいは東欧産のオークを使用する場合も、フランスの工場で樽にしてもらうことが多いようです。

ワインには果皮や果梗から得られるタンニンが含まれていますが、バリック内で熟成していくうちに、バリックのオークに含まれるタンニンが加わり、出来上がるワインに骨格や力強さを与えます。また、ワインはバリックで熟成していく間、オークを通して微量の酸素と接触します。これは大樽においても同じです。この微量の「酸化」はワインを安定させるのに役立ちます。

バリックの使い手には、長期にわたる熟成を待つ根気が必要です。また、バリックを使いこなすには、経験の豊かさも必要です。かつてはドイツでも新樽による強調されたトースト香がもてはやされましたが、最近では新樽の比率を減らし、上品なトースト香を出すようになっています。

バリックのトースト香は、いまや世界的な流行となりましたが、バリック自体が非常に高価であり(1樽約700ユーロ)、3~4年しか使用できないため、ニューワールドのフレンチスタイルのワインの生産者たちの間ではバリックを使用せずにトースト香を加えるという自由な発想が生まれました。現在、実施されている方法には、ステンレスタンクで醸造するワインにオークチップやインナーステーヴと呼ばれるオークの板を加えて風味を移す方法などがあります。

EU圏内でも2006年10月以降、オークチップやインナーステーヴの使用が認められるようになりました。ただ、ドイツではプレディカーツワインへの使用はいまだ禁じられています。

Weingut Bergdolt-Reif & Nett ベルグドルト=ライフ&ネット醸造所
(プファルツ地方)

ベルグドルト=ライフ&ネット醸造所
写真:クリスティアン&カティア・ネット夫妻と息子のアレキサンダーくん
© Weingut Bergdolt-Reif & Nettf

プファルツ地方、ノイシュタット近郊のドゥットヴァイラーにある家族経営の醸造所。目下、親子3代でワイン造りに取り組んでいる。10年前からは、ジュニア世代のクリスティアン・ネットが主に醸造を担当。地下10mにわたる黄土、粘土、そして石灰岩が主体の土壌、そして自然のサイクルがもたらす恵みを大切に、テロワールが活きるワイン造りを目指している。分散する所有畑には、約15品種のぶどうが、それぞれ最適な場所に配されている。主体はリースリングだが、ブルゴーニュ品種やボルドー品種も栽培している。クリスティアンは祖父と父から、何よりも畑の個性を知ること、そして気象を読むことを学んだという。 醸造所では、クリスティアンの父親ベルンハルトさんが射止めたイノシシ肉も販売している。

Weingut Bergdolt-Reif & Nett
Dudostraße 24, 67435 Duttweiler/Pfalz
Tel. 06327-2803
www.weingut-brn.de


2008 Avantgarde Lagrein
2009年 2008年 アヴァンギャルド・ラグライン

€13

2009 Riesling Bundsandstein Oestlich Lenchen

クリスティアン・ネットは2003年に研修で南チロル地方(イタリア)を旅した時、現地の土着品種、ラグライン種(赤)のダークチョコレートを思い起こさせる美味しさに感動し、ドイツにまだ存在しないこの品種を栽培しようと思い立ったという。ファーストヴィンテージは2005年。ラグラインは早霜に弱いので、気候が安定するまではなるべく成長するがままにし、8月に入ってから徹底したグリーンハーヴェストを行って収穫量を落としている。このアヴァンギャルト・ラグラインは、18カ月にわたりバリックにて熟成。新樽比率は50%。穏やかなスパイシーさが魅力的なワイン。
 
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岩本順子(いわもとじゅんこ) 翻訳者、ライター。ハンブルク在住。ドイツとブラジルを往復しながら、主に両国の食生活、ワイン造り、生活習慣などを取材中。著書に「おいしいワインが出来た!」(講談社文庫)、「ドイツワイン、偉大なる造り手たちの肖像」(新宿書房)他。www.junkoiwamoto.com
● ドイツゼクト物語
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