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ロンドンのゲストハウス
Sa. 23. Nov. 2019

交配品種の話 4 ピーヴィ(PiWi)種とは?

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今日に至るまで、ワイン用ぶどうにおいては不利な気候に耐えられる品種や安定した収穫量が得られる品種など、いくつもの新しい交配品種が生み出されました。このほかに、農薬散布が少量で済む品種の開発もコツコツと進められています。「ピーヴィ(PiWi=Pilzwiderstandsfähige Rebsorten)種」と呼ばれるカビ菌耐性品種です。PiWi種は主にアメリカから運ばれてきた、ヨーロッパのぶどう畑における大敵であるカビ菌に対抗できるよう交配されています。ドイツでは1980年代から、このようなカビ菌耐性品種が栽培され始めています。

かつてハイブリッド種と呼ばれる品種がありました。ハイブリッド種とは、やはりアメリカから運ばれたフィロキセラに耐性のあるアメリカ品種と、耐性のないヨーロッパ品種の掛け合わせで生まれた品種です。ヨーロッパのぶどう畑がフィロキセラ禍に襲われていた19世紀末、フランスの医師セイベル(Seibel) などによってハイブリッド種の研究が進められました。

まもなく、従来のヨーロッパ品種(ヴィティス・ヴィニフェラ)をハイブリッド種に植え替えることで、フィロキセラ禍により壊滅状態にあったヨーロッパのワイン産業を救済する見通しが立ちましたが、ハイブリッド種から造られたワインは、ヨーロッパ品種ほどの美味しさや品質には至りませんでした。フランスでは1960年頃にハイブリッド種の作付けが禁止されたほどです。その結果、フィロキセラ禍への対抗策として、ぶどうの根の部分だけをフィロキセラに耐性のあるアメリカ品種に接ぎ木する方法が採られるようになり、ハイブリッド種の研究は停滞します。

現在、ドイツではフライブルク・ワイン研究所、ガイゼンハイム研究所、ガイルヴァイラーホーフぶどう品種改良研究所などがピーヴィー種の研究に力を入れています。最も成果を挙げているのはガイルヴァイラーホーフで誕生した赤品種、レゲントです。レゲントは、ディアナ(ジルヴァーナー×ミュラー=トゥルガウ)とシャンボーソンの掛け合わせ。シャンボーソンはフランス人の生化学者セイヴ(Seyve)が生み出した品種で、ハイブリッド種同士の掛け合わせです。レゲントは色も濃く、メルロに似た風味があり、ラインヘッセン地方、プファルツ地方を中心に2000ヘクタール以上栽培されています。完全無農薬での栽培は困難ですが、最大8割まで農薬散布量を減らすことが可能だそうです。

レゲントに続かんとしている品種もいくつかあります。例えば、フライブルクの研究所が世に送り出したヨハニーター、ブロナー、ソラリス、カベルネ系のカベルネ・コルティス、カベルネ・カルボンなどです。これらのピーヴィー種は、ヨーロッパ品種として連邦品種局に登録されています。

前述のようにピーヴィー種は、植物の生長期の農薬(殺菌剤)投与が少量で済むため、ビオワインの生産者が注目しています。また、食用ぶどうとしても大いに活躍の場があります。しかし、ピーヴィー種は様々な問題を抱えています。その1つは品種の知名度がないこと。ビオワインとしてチャンスをつかめるかもしれませんが、それも消費者がピーヴィー種のワインを美味しいと感じるか否かにかかっています。ピーヴィー種のワインの品質が伝統品種のワインに匹敵するほど向上するかどうか、今後の動向に注目したいと思います。

Staatsweingut Freiburg
フライブルク国立醸造所(バーデン地方)

ゼーホーフ醸造所
©Staatsweingut Freiburg

フライブルク・ワイン研究所の施設として設立されたバーデン=ヴュルテンベルク州管轄の醸造所。フライブルクとブランケンホルン(イーリンゲン)に醸造施設を持ち、ブランケンホルンには1847年建造の伝統あるセラーがある。所有畑は計37ヘクタール。13ヘクタールがフライブルクとエブリンゲンに、24ヘクタールがカイザーシュトゥール地域にある。主力品種はピノ・ノワールをはじめとするブルグンダー種だが、リースリングも醸造している。研究所施設であるため、展開しているワインのバラエティーは実に多彩。PiWi種にも力を入れている。VDP、エコヴィン(EcoVin)会員。

Staatsweingut Freiburg
Merzhauser Straße 119, 79100 Freiburg
Tel. 0761-4016544
www.staatsweingut-freiburg.de


2011 Ebringer Johanniter trocken
2011年 エプリンガー・ヨハニーター
(辛口)14.80 €

エプリンガー・ヨハニーター

ヨハニーターは代表的な白のPiWi種。フライブルク・ワイン研究所で1968年に交配された。グラウブルグンダーとグートエーデルの掛け合わせにセイヴ・ヴィラール12481(ハイブリッド)を掛け合わせたものを、さらにリースリングと掛け合わせており、研究所所長だったヨハネス・ツィマーマンのファーストネームが付けられている。リースリングの特徴をしっかりと受け継ぎ、寒さに強い品種。このワインは、フライブルク近郊のエプリンゲン村で栽培されているぶどうから造られた爽やかな風味のワインで、2002年から毎年生産されている。フルーティーさはリースリングよりは控えめだが、ボティーはしっかりとしており、親品種であるグラウブルグンダーのボディーとリースリングのフルーティーさをあわせ持つ。ヨハニーターはドイツ全土で、まだ60ヘクタールほどしか栽培されていない。

 
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岩本順子(いわもとじゅんこ) 翻訳者、ライター。ハンブルク在住。ドイツとブラジルを往復しながら、主に両国の食生活、ワイン造り、生活習慣などを取材中。著書に「おいしいワインが出来た!」(講談社文庫)、「ドイツワイン、偉大なる造り手たちの肖像」(新宿書房)他。www.junkoiwamoto.com
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