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ロンドンのゲストハウス
Sa. 19. Okt. 2019

土着品種再発見 1 グートエーデル(シャスラ)

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ドイツにおいて、将来性が見込めそうな土着品種にグートエーデル(Gutedel)があります。グートエーデルを直訳すると「善き高貴なるもの」。ぶどうにこれほど立派な名前が付けられているのですから、きっと古来愛されてきた貴重な品種に違いありません。とはいえ、グートエーデルと聞いてピンとくる方は少ないかもしれません。でも、シャスラといえばご存知の方がきっとおられるはずです。フランス語圏ではそう呼ばれています。グートエーデルには、ローター(赤)・グートエーデルと、その突然変異とされるヴァイサー(白)・グートエーデルの2種類があります。

グートエーデルが最も多く栽培されている国はスイスで、栽培面積は約4000ヘクタール。フランス語圏のヴォー州ではシャスラ、ヴァリー州ではフォンダンと呼ばれ、主に地元で消費されています。ドイツではバーデン地方最南部、フランスとスイスに近いマルクグレーフラーラント地区に合計約1100ヘクタールの畑があります。このほか、フランス・アルザス地方、ルーマニア、ハンガリーなどでもグートエーデルからワインが造られています。また、グートエーデルは食用ぶどうとしても世界各地で親しまれており、その主要産地はトルコです。食用には、果皮がほんのり赤みがかったローター・グートエーデルが好まれています。

グートエーデルは、栽培ぶどうとしては最古の品種とされ、その故郷はヨルダン川流域ではないかという説があります。上エジプト地域、ナイル川流域のファイユーム・オアシスでは5000年前に栽培されていた痕跡があるといわれています。また、フェニキアの船乗りたちによって、紀元前1200年頃から古代ギリシアやローマに運ばれ、広まったともいわれています。しかし、グートエーデルに限らず、伝統品種の起源説は不明確なことが多いようです。確実といわれているのが、1523年にフランス王に仕えていた外交官がコンスタンティノープルから、フォンテーヌブローとブルゴーニュにグートエーデル種を取り寄せたこと。ブルゴーニュ、マコネ地域にシャスラという村がありますが、グートエーデルのフランス名は、ひょっとすると、この村名に由来しているのかもしれません。しかしスイスでは、シャスラが野生のぶどう品種の自然交配で誕生したレマン湖地域の固有品種であり、1654年の古文書に登場しているといわれています。一方フランスは、18世紀にルイ15世の指示により、シャスラがフォンテーヌブローからスイス、ヴァリー州のシオンにもたらされたと主張しています。

ドイツでは、17世紀初頭からヴュルテンベルク地方やフランケン地方、ザクセン地方やバーデン地方で栽培され始めたとされています。1780年にはバーデン辺境伯カール・フリードリヒがスイス・ヴォー州レマン湖畔のヴェヴェイ(Vevey)からシャスラを取り寄せ、栽培を奨励しました。現在、バーデン地方マルクグレーフラーラント地区でグートエーデルが栽培されているのはその名残りであり、その遺伝子は、おそらくレマン湖畔のシャスラのものでしょう。

 
Weingut Kerber
ケルバー醸造所(バーデン地方)

ケルバー醸造所バーデン地方南部、マルクグレーフラーラント地区にある家族経営の醸造所。創業は1910年。1998年から父親の醸造所でワイン造りを担当しているリヒャルト=マルティンは、10年にわたりコックとして、ドイツをはじめスイスやノルウェーなどで腕を振るった後、ガイゼンハイムの大学でぶどう栽培・ワイン醸造学部を卒業、ベルリンでソムリエ資格も取得した。オーストラリア、南アフリカでのワイン造りの経験もあり、世界的な視野でワイン造りに取り組んでいる。ケルバー醸造所の所有畑はすべて、同地域で最も優れた畑に数えられるシュタウフェナー・シュロスベルクにある。土壌は軽い粘土とレス土が混じった貝殻石灰岩。栽培品種はピノ・ノワール(樹齢58年)やゲヴュルツトラミーナ(樹齢52年)などの伝統品種が主流。旧市街にあるヴィノテークと畑にあるヒュッテは試飲会やワインと食関連のイベントなどに使われており、年間を通じて予約可能。

Weingut Kerber
Hauptstraße 19, 79219 Staufen im Breisgau
Tel. 07633-924276
www.kerberwein.de


2010 Chasselas SL "Schlossgasse" Spätlese trocken
2010年 シャスラ シュール・リ
シュロスガッセシュペートレーゼ(辛口)8.00€

シャスラ シュール・リ シュロスガッセシュペートレーゼリヒャルト=マルティンは、グートエーデルをより世界的に知られた名称「シャスラ」の名でリリースしている。彼のシャスラが植えられているのは、シュタウフェナー・シュロスベルク内のシュロスガッセと呼ばれる区画。樹齢は20~30年。SLはシュール・リの略で、春先のボトリング時までワインを酵母と接触させておく、フランス・ロワールのミュスカデ地域で実践されている醸造法。このシャスラは、年によって全体の5~15%程度を少なくとも一度は使用されたフレンチオーク樽で寝かせ、ステンレススティールタンクのものとブレンドしている。軽快さを保ちつつも、とても味わい深いシャスラ。

 
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岩本順子(いわもとじゅんこ) 翻訳者、ライター。ハンブルク在住。ドイツとブラジルを往復しながら、主に両国の食生活、ワイン造り、生活習慣などを取材中。著書に「おいしいワインが出来た!」(講談社文庫)、「ドイツワイン、偉大なる造り手たちの肖像」(新宿書房)他。www.junkoiwamoto.com
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