Das Japanische Haus e.V.
ザクセン州西部に位置するライプツィヒ。19世紀にはパリやウィーンと並ぶ音楽の都として栄え、20世紀に入ると、近代化・工業化に伴ってドイツ有数の産業都市へと急成長を遂げたこの町には、当時の興隆の様子を今に伝える荘厳な歴史的建造物が数多く現存する。しかし、ピーク時に約70万人を数えた町の人口は旧東独時代以降、産業の衰退と共に減少の一途をたどり、東西統一後の著しい流出も重なって、現在では約50万人にまで落ち込んでいる。繁栄の象徴だった工場は廃屋と化し、住宅街には空き家が目立つ。町が、まさに"縮小"していると感じられる光景だ。
町の縮小とどう向き合うか。これは旧東独地域のみならず、地方の過疎化が進む日本にも共通する問題と言える。地域ごとに様々な町おこしの試みが行われている中、縮小を現実として受け止めつつ、その中で実現可能な都市活性化の可能性を探ろうというユニークなプロジェクトがある。それが、ライプツィヒの「日本の家」だ。
上写真)日本の家の内観。元々の天井が高いため、格子状の仮天井を作り、日本的なスケールの空間にアレンジした右上写真)2012年3月に開かれた「漫画フェスティバル」
写真:溝渕真子
右下写真)2011年8月のイベント「盆栽の日」


ここでは2011年7月のオープン以来、運営者である建築家の大谷悠さんとミンクス典子さん、そしてライプツィヒ大学の学生有志らを中心に、「日本」をテーマに漫画や囲碁のワークショップから日本人アーティストの展覧会、ライプツィヒ大学の日本学科と連携した学術シンポジウムまで幅広いイベントを開催している。これだけ聞くと日独交流を推進する協会のようにも思われるが、特徴的なのは、商店街の空き家の家主と借り手の間を取り持つ市民団体「ハウスハルテン(Haushalten)」を介して借りた物件を利用して活動する、地域再生プロジェクトの一環であるということ。

オープニング前のリフォーム風景
ハウスハルテンは、空き家をできるだけ減らすことで建物を保持・保存すべく、5年間という期限付きで、格安の家賃で物件を貸し出す「ヴェヒターハウス(Wächterhaus)」というプロジェクトを行っている。ただし、借りるには“地域再生”というキーワードに沿った明確なコンセプトが必要。日本の家の場合も、発起人である大谷さんらが設立の目的や空間の用途、コストプランなどをまとめた企画書を同団体に提出し、認可された。
日本の家は市内北部、東側に工業地帯、西側に歴史的な住宅街が広がる、幹線道路沿いに立地している。旧東独時代はスーパーマーケット、統一後はレンタルビデオ屋として使われていた物件だ。家賃は光熱費や保険込みで約360ユーロ。イベントに利用している75㎡の空間のほか、元倉庫だった2部屋とトイレがある。倉庫のうちの1部屋は住居用にリフォームし、現在は大谷さんが生活している。イベント用空間には、約2m四方の4つの窓に沿って4つの舞台を設置し、格子に掘りごたつ、低い天井と、日本建築の要素を取り入れた造りになっている。イベントごとに、主旨に合わせて空間をアレンジするため、リフォームが延々と続いている状態。運営は助成金や寄付金で賄っているので、工事はすべて自分たちの手で行う。それゆえ必要な機材は引っ越す人から譲り受けたり、周囲の工場跡から拾ってきたりと、節約に余念がない。しかしそこは建築家。もの作りの楽しさは苦労を凌駕する。

日本の家が建つ地区は市内でも特に人口流出が顕著で空き家が多く、再生重点地区に指定されている
発足当初の予定では、日本の家は3カ月限定のプロジェクトだった。しかし、実際に始めてみると反響は予想以上に大きく、初めの頃は自分たちで企画し、参加者を募っていたイベントも、次々に各方面からアイデアが持ち込まれるようになった。日本の家の活動は、地元の町づくりのマネージメント団体「Magistralenmanagement Georg-Schumann-Straße」からも高い評価を受け、来る9月には同団体と共同で当地で開かれる芸術祭「Nacht der Kunst」のオーガナイズも行うことになっている。
「ドイツの地域再生の現場に、実際に関わってみたい」という建築家たちの想いが、空き家の再生支援システムを利用した「日本の家」の設立につながり、市の都市再生担当職員やほかの空き地・空き家の再生プロジェクトの団体、地元住民との交流が生まれた。日本の家は10月に引っ越しを控えているが、次にこの場所を利用したいという申し出がすでに殺到しているという。日本の家にとっても、新たな場所での新たな一幕の始まりとなる。
「目的ありきで建物を建てるのではなく、まずは場所を作ることで人が集まり、そこから活動が生まれる。その逆転発想が、意外に面白いんですよね」と大谷さん。縮小する都市の中で、人間の営みを絶やさないようにする小さな都市再生の試みが今、着実に実を結ぼうとしている。
(編集部:林 康子)



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