Hanacell

輝け、原石たち
日本を飛び出し、ドイツで切磋琢磨する "若き血潮" を紹介します。


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1983年 新潟県新潟市生まれ
2006年3月 東京大学理学部化学科卒業
2008年3月 東京大学大学院理学系研究科・地球惑星科学修士課程首席卒業
2008年9月~ マックス・プランク化学研究所(マインツ)生物地球科学専攻
2011年8月 理学博士号を取得
文部科学省・長期海外留学制度の奨学生として渡独。今年3月、化学分野の先端研究を紹介する英国の学術誌「Nature Chemistry」に博士論文(一部)が掲載された。現在、マックス・プランク研究所のポスドク研究員。

世界トップクラスの科学者たちが、最先端の研究を行うマックス・プランク研究所。科学の権威を象徴するこの場所から今夏、1人の日本人博士が誕生した。花粉や車の排気ガスなどから出る有害な粒子が、大気中でオゾンや二酸化窒素と化学反応を起こし、アレルギー性や発がん性が高まるメカニズムを同研究所などと共同で解明した白岩学さんだ。昨今、社会的な関心が極めて高いアレルギー、花粉症が悪化するメカニズムの一端が解明されたとあって、各国のマスコミはこぞってこの成果を取り上げた。

小学生の頃、水、ごみ、エネルギーなど環境問題を解説するドラえもんの漫画を読み、オゾン層の問題に特に関心を抱いた。「フロンガスによってオゾン層が壊されるってどういうこと?」。目に見えない空気中で何かとても不思議なことが起きているという感覚が、白岩さんの好奇心を掻き立てた。加えて、生物学者である父親の下、科学や研究というものをごく自然に受け入れられる環境にも恵まれ、幼くして「大気化学者」になるという決意は固まった。

博士号は、その頃描いた夢を着実に形にしてきた証拠。大気化学研究で先端を行くドイツに渡り、世界に唯一無二の高度な設備が整うスイスの研究所にも度々通いながら、実験やモデル計算をこなしてきた。粒子とオゾンや二酸化窒素の反応速度・メカニズムを特殊な測定器で測るのは、実に地道で根気の要る作業。測定器が壊れることもあれば、失敗も幾度となく繰り返す。それでも、予想外の興味深い結果を見たときには思わず叫んだという。たとえ小さなことでも「自分が人類史上最初に発見した」という喜びは白岩さんにとって、研究者として何物にも代えがたい醍醐味なのだ。

自身の得た知が、大気汚染による気候変動や健康被害などの問題解決の糸口になればという願いを胸に、目指すは大気化学研究をリードできるような「超一流の科学者」。模範となる学者たちを間近に見てきたドイツでの研究生活に来年3月で区切りを付け、米国に渡る。

(編集部:林 康子)


マックス・プランク研究所の実験室にて。
分析機器の前で、実験サンプルを持って



2009年、ヨーロッパ・エアロゾル学会にて行った研究発表で
「ベスト・ポスター賞」受賞



大気環境化学の分野で博士号を最優等の
“Summa cum laude”で取得。審査員の先生たちと

Information

家族でイチゴ狩り。充実した研究生活も、
家族の支えがあってこそ
マインツのマックス・プランク化学研究所は、在籍する研究員・学生およそ200人のうち、半数がドイツ以外の国籍を持つ外国人というインターナショナルな研究機関。白岩さんはここで研究をしながら、休日は家族とライン川沿いを散歩したり、地元のサッカーチーム「マインツ05」の試合を観戦したりと、ドイツ生活を満喫しているそうだ。

・マックス・プランク研究所のホームページ
www.mpic.de

・白岩さんの研究情報
http://saturn.mpic.de/~shiraiwa/index_J.html

・白岩さんが博士論文で発表した研究成果
www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2011/19.html
www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2011/03.html

 
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