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ベルリンならではのランドスケープを探して

「ベルリンのランドスケープ(景観)は、今まで僕が見てきたどの街とも似ていません。剪定(せんてい)をあまりせずに雑草を多く残した自然主義的なランドスケープや、人がのんびりと過ごせる公園や広場が非常に多いのが特徴で、東京やメルボルンとは全く異なります」。そう語るのは、現在ベルリンのランドスケープ設計事務所に勤める中島悠輔さん。東京とメルボルンの大学でランドスケープを学んだ後、メルボルンのランドスケープ事務所で個人庭の設計・施工・管理を経験。2021年9月にベルリンに移住し、現在は主に公共空間の設計に携わっています。

今回は中島さんにベルリンらしいランドスケープを体験できる場所を案内してもらいました。中島さんが選んだのは「パーク・アム・グライスドライエック」。かつての鉄道跡地に広がる広大な公園です。

階段状に造られた場所でくつろぐ人々。目の前には砂場が広がっています階段状に造られた場所でくつろぐ人々。目の前には砂場が広がっています

中島さんがまず足を止めたのが、地下鉄の駅が見渡せる場所です。緩やかに盛られた土手の手前側は、座りやすい木製の大きな段差。歩いて登る場所は、鉄板を貼った間隔の狭い階段になっていて、一目で見分けがつきます。「手前の砂場で子どもたちが遊んで、親は腰かけて見守る。ただ土を盛るだけではなくて、ごくシンプルな方法で機能を持たせている一例です」。

公園内には至る所にかつての線路跡が残されていますが、中には木が生い茂り、森と同化してしまっているような場所もあります。筆者が「とてもベルリンらしい風景ですね」と漏らすと、中島さんも同意してくれました。「ニューヨークにはハイライン・パークといって、高架の廃線を緑地化した公園があるのですが、そちらは全体的に大きく手を入れて整備しています。それに比べるとここは手つかずのままというか、これも自然の一つだというメッセージを感じますね」と中島さん。

森に埋もれるかつての線路跡森に埋もれるかつての線路跡

もう一つ、この公園で見られる独特のランドスケープが、石がゴロゴロと無造作に敷き詰められた、何の目的のために作られたのか一見分かりにくいエリアです。「この公園が線路跡地に造られたことを想起させるためのデザインだと思います。石の隙間を利用して、多くの動植物がここをすみかにするでしょうね」。公園の入口付近や、バスケットボールのコートの周り、歩道の脇などに突如現れるこのエリアは、ほかの街では見たことがないと中島さんは言います。

「いずれ大きなランドスケープ・プロジェクトに参加したい」と語る中島さんは、フェイスブックグループ「ランドスケープを学びたい人の井戸端会議」の運営も行っています。自身の経験をシェアしつつ、日々ランドスケープの設計に取り組む中島さん。そう遠くない未来、中島さんのデザインした公園や広場がベルリンの一部になる、そんな日が訪れることでしょう。

歩道の脇に広がる「石のエリア」。石の隙間から草木が顔を出しています歩道の脇に広がる「石のエリア」。石の隙間から草木が顔を出しています

ランドスケープを学びたい人の井戸端会議:www.facebook.com/groups/761432894388378

 
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中村さん中村真人(なかむらまさと) 神奈川県横須賀市出身。早稲田大学第一文学部を卒業後、2000年よりベルリン在住。現在はフリーのライター。著書に『ベルリンガイドブック』(学研プラス)など。
ブログ「ベルリン中央駅」 http://berlinhbf.com
守屋健(もりやたけし)
ドイツの自動車、ビール、そして音楽に魅せられて、2017年に渡独。現在はベルリンに居を構えるライター。健康維持のために始めたノルディックウォーキングは、今ではすっかりメインの趣味に昇格し、日々森を歩き回っている。
守屋 亜衣(もりや あい)
2010年頃からドイツ各地でアーティスト活動を開始し、2017年にベルリンへ移住。ファインアート、グラフィックデザイン、陶磁器の金継ぎなど、領域を横断しながら表現を続けている。古いぬいぐるみが大好き。
www.aimoliya.com
佐藤 駿(さとう しゅん)
ドイツの大学へ進学を夢見て移住した、ベルリン在住のアラサー。サッカーとビールが好きな一児のパパです。地元岩手県奥州市を盛り上げるために活動中。
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