Hanacell

拾い、手放す日々 ベルリンで出会うモノたち

ベルリンに越してきてから、洋服やモノを買う頻度が減り、代わりにしょっちゅうそれらを街中で拾うようになりました。犬も歩けば棒に当たるとはよく言ったもので、お店で買った小物より、たまたま道で拾った置物の方が実は気に入っていたり、ふと気づいたら、本日のスタイリングは下着以外全て拾ったものになってしまった、というのは日常茶飯事です。

ベルリンの至る所にある古着回収ボックスベルリンの至る所にある古着回収ボックス

ベルリンには至る所に古着回収ボックスがあったり、軒先に「ご自由にどうぞ」と書かれた段ボールが置かれていたり、物品交換プロジェクトに当たる「GiveBox」があったり。ベルリンにはさまざまな人種やルーツを持つ人々が住んでいますが、周囲の人たちを見ていると、皆拾ったものを自分のファッションに取り入れるのがとても上手だなぁと思います。スーツやハイブランドを着ている人は少ないけれど、おしゃれに無頓着な人もあまり見かけません。流行りは少なからずあるものの、みんな好き勝手にファッションを楽しんでいて、妙にこだわりがありつつヘンテコで、なんだか肩の力が抜けているのです。私はよく街で十人十色のスタイルを観察しては、それぞれの人となりや職業などに思い巡らせています。

先日、たまたま道を歩いていたら、ハンガーにかかったたくさんの洋服が公園の柵にかけられているスポットを発見しました。そこで物色する人々もいれば、新しく大きな袋を持ってきて次々にハンガーに服をかける人の姿も。さらには服のみならず、じゅうたんや大型液晶テレビを置いていく人もいました。調べてみると、そこは「Gabenzaun」(ガーベンツァウン)という地域住民による自発的な支援活動の一環であることが分かりました。コロナ禍の際、ホームレス支援施設が閉鎖されたことをきっかけに始まったこの取り組みでは、袋に入れられた食料や衣類、衛生用品などがフェンスに掛けられ、必要な人が自由に持ち帰れるようになっています。

ガーベンツァウンの取り組みのスポットの一つ。洋服や靴、本などあらゆる物がきれいに並べられていますガーベンツァウンの取り組みのスポットの一つ。洋服や靴、本などあらゆる物がきれいに並べられています

ガーベンツァウンのウェブサイトを覗いてみると、パンデミックが終わった後も、ベルリンのあらゆる所に同じ取り組みをしている場所が存在していました。それを知ってからは、そこで何かを拾うだけではなく、手放すことも意識し始めました。自分ではもう使わないけれどまだ使えそうなものは、積極的に持っていくようにしています。

ある人にとっては不要になったものでも、別の人に拾われ、うれしい宝物として受け継がれる。金銭が生じることなく誰かの日々を支えたり、豊かにすることができるこの仕組みを楽しみながら、無理なく関わっていけたらいいなぁと思っています。

Gabenzaun:https://gabenzaun.de

 
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中村さん中村真人(なかむらまさと) 神奈川県横須賀市出身。早稲田大学第一文学部を卒業後、2000年よりベルリン在住。現在はフリーのライター。著書に『ベルリンガイドブック』(地球の歩き方)など。
ブログ「ベルリン中央駅」 http://berlinhbf.com
守屋健(もりやたけし)
ドイツの自動車、ビール、そして音楽に魅せられて、2017年に渡独。現在はベルリンに居を構えるライター。健康維持のために始めたノルディックウォーキングは、今ではすっかりメインの趣味に昇格し、日々森を歩き回っている。
守屋 亜衣(もりや あい)
2010年頃からドイツ各地でアーティスト活動を開始し、2017年にベルリンへ移住。ファインアート、グラフィックデザイン、陶磁器の金継ぎなど、領域を横断しながら表現を続けている。古いぬいぐるみが大好き。
www.aimoliya.com
佐藤 駿(さとう しゅん)
ドイツの大学へ進学を夢見て移住した、ベルリン在住のアラサー。サッカーとビールが好きな一児のパパです。地元岩手県奥州市を盛り上げるために活動中。
田澤 陽たざわ みなみ
1994年、長野県松本市生まれ。エディトリアルデザイナーのアシスタントを経験後、『IMA』編集部を経て、2024年2月よりベルリン在住。現在はフリーランスエディターとして活動。最近やっと住民登録ができる部屋に引っ越して、小さく静かに暮らしている。Instagram: @zawawa_wa
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