ユダヤ系フランス人のジャーナリスト、映画監督クロード・ランズマン(1925-2018)の「SHOAH ショア」(1985年)は、歴史的映像を一切用いることなく、ホロコーストに至る過程と実像を生存者、加害者、目撃者、歴史家などさまざまな視点のインタビューで構築した、唯一無二の映像作品です。ランズマンの生誕100年に当たる昨年11月27日、ベルリン・ユダヤ博物館で特別展「クロード・ランズマン – ザ・レコーディングス」のオープニングが行われました。11年もの歳月をかけ、上映時間が9時間27分に及ぶこの映画には、その準備段階として1974〜78年にかけてランズマンが取材した計152本ものカセットテープの存在があります。この特別展は、膨大な音声記録から約90分を厳選し、「ショア」が生まれるに至った過程を音でたどる初の試みです。
クロード・ランズマンが記録したカセットテープから
入口でヘッドフォンを借りて装着すると、インタビューの現場に立ち会ったような臨場感ある音声が聞こえてきます。映画でおなじみのランズマンの声と通訳の二人の女性。フランス語、ドイツ語、イディッシュ語、ポーランド語などによるインタビューは、原語の書き起こしに加え、英語とドイツ語の訳も画面に表示され、目でも追いやすい工夫がされています。
展示は六つのテーマによって構成されます。例えば「リトアニアのショア」は、1941年夏のナチス・ドイツ占領下のリトアニアにおけるユダヤ人大量殺りくに関する集中的なインタビューですが、当時ソ連の一部だったリトアニアで撮影許可が降りなかったため、この素材は丸々カットされることになりました。一方、映画で中核を占めることになったのがポーランドです。1978年にランズマンが初めてポーランドを旅した時のテープからは、彼がアウシュヴィッツの博物館を訪れ、展示物に絶句した際の空気まで伝わってきます。とりわけ張り詰めた感があるのは、加害者側へのインタビュー。これらは基本的にアポなし訪問の上、隠し録音で行われたため、生々しさが際立ちます。インタビュー音声は、各テーマの間を移動する過程で自動的に入れ替わります。後の「ショア」につながるさまざまな声がポリフォニックに重なり合い、ずっと聴いていたいと感じたのと同時に、時折立ち現れる人間存在の闇の深さに何度も立ち止まりました。
ユダヤ博物館の特別展「クロード・ランズマン」の様
「ショア」のプレミア上映からちょうど40年。タブーなき精神で切り込むランズマンが生きていたら、今のイスラエルとパレスチナの戦争についてどういう言葉を発しただろうか、という問いも頭から離れませんでした。展覧会の開催は2026年4月12日(日)まで。入場無料。



インベスト・イン・ババリア
スケッチブック
中村真人(なかむらまさと) 神奈川県横須賀市出身。早稲田大学第一文学部を卒業後、2000年よりベルリン在住。現在はフリーのライター。著書に『






