1月のとある日、ドイツ人の友人に薦められて、ベルリン医学史博物館(Medizinhistorisches Museum der Charité)へ行ってきました。ベルリン中央駅近く、シュプレー川沿いに広がるシャリテー大学病院に付属する施設です。ベルリンの医師で白血病の発見者として知られるルドルフ・フィルヒョウの病理学博物館を前身とし、現在もこの博物館は、大学における教育・研究の一環として重要な研究資源となっています。
常設展示では、今日に至るまでの約3世紀にわたる医学史に関わる医療器具や、約750点の病理解剖学にまつわる湿式標本・乾燥標本に加え、主要な医療の現場である解剖劇場、実験室、病室などを再現した模型や図版が紹介されています。今回は主に、標本や医療器具が展示されている建物を訪れました。
1973年生まれのアーティスト、イラナ・ハルペリンによる人間の結石を素材にした作品
医療ドラマにも疎く、ホラー映画もまっすぐには見られない自分にとって、この博物館を楽しめるのか、正直かなり不安でした。まず建物に入って最初に目に入ってきたのは、美しく輝く鉱石……ではなく胆嚢や胆管に作られる胆石でした。大きさも色もさまざまですが、これらが人間の体の中から出てきたものだとは、言われなければ分からないと思います。自分の体の中にも、いつか同じものができるかもしれないと、健康の大切さをあらためて思うのでした。2階では、発明妄想を伴う精神疾患を抱えた人物に焦点を当てた特別展示が行われており、3階には常設の標本室と、「粘液」(Schleim)をテーマにした特別展がありました。
特別展「粘液」(Schleim)の様子
解剖学や手術の歴史、目の病気に関する展示の先には、人体のさまざまな部位の標本が並びます。脳や心臓、肺などの臓器、タトゥーの入った皮ふ、さらには先天異常の標本までありました。自分的に直視できないような資料も多かったのですが、目の前にすると、人体が本能的に呼応するような感覚があり、むしろ見なくてはならないと感じました。医師の視点をなぞるようでとても興味深く、こうした研究の積み重ねの上に現在の医療があることを痛感します。特別展も、人間が生み出す体液をさまざまな角度から掘り下げる内容で、非常にユニークでした。
健康な成人の気道だけでも1日に約1.5リットルの量の粘液が作られる
さらに4階では患者に焦点を当てた展示も行われていたものの、あっという間に時間が過ぎてしまい、全てを見切ることはできませんでしたが、展示を通して、私たちの皮ふの下には無限に広がる小宇宙があるのだと実感しました。内容はもちろん、展示全体がスタイリッシュなデザインで統一されており、デザインに関心のある方にもおすすめです。



インベスト・イン・ババリア
スケッチブック
中村真人(なかむらまさと) 神奈川県横須賀市出身。早稲田大学第一文学部を卒業後、2000年よりベルリン在住。現在はフリーのライター。著書に『






