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オラファー・エリアソン展

現在、ポツダム広場からほど近いマルティン・グロピウス・バウ(Mar tin- Gropius-Bau)にて、オラファー・エリアソン(Olafur Eliasson)のベルリン初の大規模な個展「Innen Stadt Außen」(内-都市-外)が開催されており、大きな話題を呼んでいます。

デンマーク・コペンハーゲン生まれのアイスランド人作家エリアソンは、光、影、色、霧といった要素を通して、人間の知覚に新たな角度から訴えかける大規模な作品を発表してきたことで知られています。今年3月まで開催されていた金沢21世紀美術館での個展「あなたが出会うとき」などで、その作品をご覧になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。

オープニングの4月28日は、作家自らの希望で入場無料となったため、多くの人が殺到。私もこの日に足を運んでみました。会場の前に来ると、窓から煙のようなものがもくもくと出ていて、「一体何だろう」と思わされます。

オラファー・エリアソン展
博物館の中庭に設置された鏡のインスタレーション
「Mikroskop」
Olafur Eliasson, Mikroskope, 2010 Foto: Jens Ziehe
Courtesy the artist; neugerriemschneider, Berlin;
Tanya Bonakdar Gallery, New York © 2010 Olafur Eliasson

「私がまだアカデミーの学生だった1988年、現在とは反対側の入り口から初めてこのマルティン・グロピウス・バウの中に入った。(ベルリンの)壁はそれまで何度も見たことがあったけれど、この窓から壁とその緩衝地帯を眺めて、反対側がどれほど遠いかを実感した。視覚の演出が、置かれた環境を先鋭化させたからだ」(Tip誌のインタビューより)

94年からベルリンに在住するエリアソンは、この個展を「ベルリンと深く関係した非常に個人的な展覧会」と語っており、ベルリンという都市との関わりから生まれた作品がいくつも並んでいます。入り口近くの床には「ベルリンの歩道」という名の花崗岩が置いてあり、博物館の内と外の境界がなくなるかのような感覚を覚えます。また、展覧会と同じタイトルを冠したビデオ作品は、巨大な鏡をワゴン車に設置し、走る車とその鏡を通して写る風景をカメラが追いかけるというものなのですが、2つの現実の重なり合う様が面白かったです。博物館の中庭に設置された「Mikroskop」というインスタレーションは、まさに圧巻。「Round rainbow」や「Water pendulum」などの光、影、水を生かした作品も、多くの人がしばし立ち止まって見入っていました。

正面の窓から出ている煙らしきものの謎は、最後の部屋で解き明かされることになります。部屋の中を歩きながら、夢の中をさまよっているような不思議な気分を味わいました。現代アートの展覧会で、1つ1つの作品がこれほど記憶に残るのも珍しい体験で、普段見慣れた街を新鮮な感覚で捉え直してみたい気持ちになりました。8月9日まで開催。

www.gropiusbau.de

オラファー・エリアソン展
かつて目の前にベルリンの壁が立ちはだかっていた
マルティン・グロピウス・バウ

 
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中村さん中村真人(なかむらまさと) 神奈川県横須賀市出身。早稲田大学第一文学部を卒業後、2000年よりベルリン在住。現在はフリーのライター。著書に『ベルリンガイドブック』(学研プラス)など。
ブログ「ベルリン中央駅」 http://berlinhbf.com
守屋健(もりやたけし)
ドイツの自動車、ビール、そして音楽に魅せられて、2017年に渡独。現在はベルリンに居を構えるライター。健康維持のために始めたノルディックウォーキングは、今ではすっかりメインの趣味に昇格し、日々森を歩き回っている。
守屋 亜衣(もりや あい)
2010年頃からドイツ各地でアーティスト活動を開始し、2017年にベルリンへ移住。ファインアート、グラフィックデザイン、陶磁器の金継ぎなど、領域を横断しながら表現を続けている。古いぬいぐるみが大好き。
www.aimoliya.com
佐藤 駿(さとう しゅん)
ドイツの大学へ進学を夢見て移住した、ベルリン在住のアラサー。サッカーとビールが好きな一児のパパです。地元岩手県奥州市を盛り上げるために活動中。
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