Hanacell

美しい日本語を声で感じる、日本の語り芸術

在ハンブルク日本国総領事館主催で、日本芸術の紹介として「語りの会」が行われました。どのようなものか予備知識がなかったので、朗読あるいは落語のようなものかしら? などと想像していましたが、今回、「かたりすと」と呼ばれる平野啓子さんが紹介してくださった「語り」は、もっと自由な新しいスタイルのものでした。

会場はハンブルク大学日本語学科の講義室
会場はハンブルク大学日本語学科の講義室

彼女によると、「語り」とは、聞き手の存在を前提とし、説得力をもって聞き手に「感じる、伝える、考える」を与える言葉の力であり、暗唱が基本だそうです。本を読み上げる朗読とは、その点で違っています。

ドイツ語でも、「物語る」はerzählen、「朗読する」はvorlesenで、異なっていますね。また、朗読は文章主体であり、著者の意図を忠実に反映させることが求められているのに対し、語りは、どう語るかは語る人の解釈に任せられており、より自由に表現できるとのことです。ドイツ語でも、erzählenのほうが、より聞き手との距離が近く、話し手と聞き手が双方向で一緒に参加しているような感じがします。

この日は、最初に日本最古の物語文学とされる『竹取物語』の抜粋が、古文のまま語られました。自由に動きながら表情豊かに語られる様子は、まるで一人芝居のよう。和楽器の笛の音が随所に入り、場の雰囲気をよく伝えていたことも、お芝居のように感じた一因だと思います。笛を演奏した望月美沙輔さんは、国立劇場で歌舞伎の演奏をする傍ら後進の指導にもあたっておられる方で、素晴らしい演奏でした。さらに『竹取物語』の後には、芥川龍之介の『蜘蛛の糸』が語られました。

笛の音とともに「竹取物語」を語る
笛の音とともに「竹取物語」を語る

平野啓子さんは、元NHKのアナウンサーだそうで、彼女の語りは、よく通る明るい声と明瞭な発音で、大変聞きやすかったです。また、それぞれの場面がありありと目に浮かぶように、豊かな表現力で語るだけでなく、彼女のお人柄がにじみ出るというか、存在そのものが「語って」いて、聴衆は皆、魅了されていました。

後半の質疑応答では、ドイツ人、日本人双方から活発な質問が出されました。「レパートリーは?」~「古事記や源氏物語などの古典から夏目漱石などの近代小説、現代の作品まで。自分の好きな作品を選んで取り組んでいる」。「どのようにして語りを学べるのか?」~「現在大阪芸術大学と武蔵野大学で語り芸術を教えている」などなど。「歌は歌わないのか?」というドイツ人の無茶な質問(?)に、にこやかに応えて歌ってくださったのには脱帽でした。

井野さん井野 葉由美(いの はゆみ)
ハンブルグ日本語福音キリスト教会牧師。イエス・キリスト命。ほかに好きなものはオペラ、ダンス、少女漫画。ギャップが激しいかしら?

 
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