コロナ禍で人との接触が制限された暮らしは、おかげさまで新型コロナウイルスに罹患することもなく、僕にとっては家族の絆とご近所付き合いの大切さを感じる時間となりました。学校や店舗、公共施設などの活動が部分的に再開され、少しずつ家の外に出る機会も増えています。コロナ禍でも人々が楽しめるようにと、文化施設などではさまざまな試行錯誤が行われていますが、今回は1番心に残った活動を紹介します。
接触制限令が出されてからは家にいることが多かったのですが、ブラウンシュバイク市の博物館Landesmuseumで「子ども博物館」という面白い取り組みがあると聞いて、久しぶりに街へ行くことに。この博物館もほかの施設と同じく3月中旬より閉鎖していましたが、5月より再開されました。展覧会のテーマは「昔のザクセン人の暮らし」だそう。館内の感染予防対策はどうなっているのでしょうか。
思いっきり遊べる空間
その答えは、いたってシンプル。博物館内に、一家族だけが入場できるシステムになっているのです。時間は90分間で、入場料は無料。入場して手を消毒したあとは、僕たち家族の貸し切り状態で、自由に館内を回ることができました。
もう一つの面白い点は、展示物に自由に触っても良いということ。子どもたちは剣や盾を装備して、その重さに驚いていました。また、昔の製法で作られたインクで文字を書いたり、金貨を鋳造したりと、待ち時間なく好きなことを体験。館内で大声を出したり走り回ったりしても、怒られることもありません。子どもたちは動く馬のおもちゃに乗って、飛び回っていました。
大人向けには、寄付制のコーヒーサービスもありました。普段は、子どもたちが展示物を壊したり、周りに迷惑をかけないかと気を揉む場面もありますが、この日に限ってはその心配はなし。跳ね回る子どもたちを眺めながらカプチーノを飲み、僕たち親も贅沢な時間を過ごすことができました。
展示物に触ってもOKです
友だちに会えず、公園にも行けずでは、子どもたちの心にもストレスが溜まってしまいます。また、家で仕事をしている親のイライラも、子どもに伝わるでしょう。しかし、ストレスを言葉にするのは難しいこと。そんな子どもたちのことを第一に考え、彼らが自由に動き回って楽しめる工夫がなされたこの取り組みに、感動を覚えました。
博物館を出る際、「久しぶりに外出して、特別な体験ができた」と職員の方に感謝の気持ちを伝えると、笑いながら「(コロナ禍を耐えている子どもたちへの)サービスだよ」と答えてくれました。今後の感染状況を見ながら、「子ども博物館」の取り組みは続けるそうです。興味のある方は、ブラウンシュバイクのLandesmuseumまで問い合わせてみてください。
Braunschweigisches Landesmuseum:www.3landesmuseen.de
神戸のコミュニティメディアで働いた後、2012年ドイツへ移住。現在ブラウンシュバイクで、ドキュメンタリーを中心に映像制作。作品に「ヒバクシャとボクの旅」「なぜ僕がドイツ語を学ぶのか」など。三児の父。
takashikunimoto.net



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