「利用者が少なすぎるので、このままでは日本語の本棚を維持できません」。ブラウンシュバイク市の公共図書室に日本語の本棚を設置してから5年。設置当時の様子は本誌1133号でもお伝えしましたが、最近、図書館のスタッフの方にそう言われました。「1カ月に20人が40冊を借りるようにならないと維持は難しい」とのこと。思わず心の中で「それは無理かも……」とつぶやきましたが、「やってみます」と答えました。現在、ブラウンシュヴァイク市内には100人ほどの日本人が住んでいますが、日本語の本を借りる人は月に数人程度。本棚は以前より目立たない場所に移され、存続の危機にあります。
ペアになって好きな本を読む時間
もともと市の中央図書館には、英語、フランス語、スペイン語、イタリア語、アラビア語、ロシア語、ポーランド語、トルコ語、ウクライナ語、中国語などの本棚がありましたが、日本語は対象外でした。そこで郊外にある図書分室に相談したところ、日本語の本棚の設置を前向きに受け入れてもらえたという経緯があります。オランダ・マーストリヒトの日本語補習授業校からたくさんの本を寄贈していただき、僕の蔵書を合わせて本棚を作り、2020年にはオープニングイベントも開催。返却期限はなし、貸し出しはノートに記入するだけというシンプルな運営にしています。中央図書館では年間20ユーロの利用料がかかりますが、分室では無料で借りられるのも魅力の一つです。
日本から来た留学生も参加!
ですが、思った以上に利用者は増えませんでした。立地の問題や、若い世代が紙の本に触れる機会が減っていることも影響しているようです。さらに、蔵書はやや古めのものが中心で、最近の人気シリーズなどはほとんどなく、子どもたちの関心と合わないこともあります。一度、アクセスの良い市内の語学学校内に引っ越しすることも検討しましたが、自分としては、公共施設に日本語の本棚を置きたいという思いがあるため、今も地域の図書分室に本棚を置いています。
さて、この本棚の存続のため、利用者を増やさなければということで、月1回の「日本語本棚オープンデー」を実施することに。読み聞かせ、折り紙、ゲーム、茶道、習字などを通じて、子どもたちと日本語を学ぶ学生たちが交流しています。最近のイベントでは、大学生約20人が参加し、日本人の子どもたちが絵本を朗読する姿に拍手が送られました。本をきっかけに自然と会話が生まれ、数名が日本語の本を借りて帰りました。
子どもが折り紙の先生に
今後も日本にルーツを持つ子どもたちと、日本文化に関心を持つ人たちの架け橋となる本棚を目指して、細く長く活動を続けていくつもりです。もし日本語の本を譲ってくださる方がいたら、ぜひ下記までご連絡いただければうれしいです。
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神戸のコミュニティメディアで働いた後、2012年ドイツへ移住。現在ブラウンシュバイクで、ドキュメンタリーを中心に映像制作。作品に「ヒバクシャとボクの旅」「なぜ僕がドイツ語を学ぶのか」など。三児の父。
takashikunimoto.net