土を練り、形を整える。2週間ほど乾かした後、素焼きをする。絵付け、そして釉薬をかけ、本焼きを終えたらようやく完成。普段何気なく使っている陶器も、自ら作ろうとするとこんなに手間と時間がかかるものなのかと驚きます。今回は、ブラウンシュバイクのJahnstraße芸術協会が毎年10〜12月に開催している、親子向けの陶芸ワークショップ「Feuer & Ton」(炎と土)を紹介します。
焚き火の薪を割るのも楽しいです
場所は、この芸術協会の建物のあるヤーン通りの屋外。この地域には移民や低所得者の家族が集住しており、「社会問題のある地域」として見られています。ドイツに引っ越してきた当初、僕もこの地域に住んでおり、このワークショップに子どもと一緒に参加していました。10年ほどたち、今は芸術協会のメンバーとしてワークショプに関わっています。ワークショップは誰でも無料で参加可能です。
秋になると、僕らの陶芸シーズンの始まり。毎週水曜日の16時、夕方のまだ薄暗くなる前に路上に机と道具を設置します。その横で火を焚くと、ちらほらと親子連れが集まってきました。子どもたちは土いじりが大好きで、ユニコーン、滑り台、お皿、コップなど好きなものをどんどん生み出していきます。形を整えた土の上に、ピスタチオの殻や木の枝などで装飾をしていきます。日が落ちていくとあっという間に暗くなると、土の上にマッチを立てて、火をつける作業も人気です。大量のマッチを使いたがるので、もったいない気もしつつ、子どもらが喜んでいる姿はとてもほほ笑ましいです。花火を用意したり、たき火の上でパンを焼いたりもします。
マッチで火をつける
僕は、図工が苦手な子どもでした。授業中に課題が提示されると、作っては壊し、描いては消し、最後はいつもぐちゃぐちゃな仕上がり。作業に楽しみを見出せず、成績も低かったのを覚えています。今から振り返れば、お手本のように作るのが嫌で、きちんとしたものを作るのを避けていると、自分でもどこに向かっているのか見失い、作業に楽しみを見出せませんでした。そんな自分がドイツの大学で芸術を専攻したのは不思議なことですが、子どもらと一緒に作業するなかで、あれこれ考えずに楽しむことを教えてもらっています。土のひんやりとした感触は心地良く、すべすべにした表面に模様を入れていく時はドキドキし、焼き上がった時の釉薬のきらめきには、既製品を買った時には感じられないうれしさがあります。
おばあちゃんと一緒に土を練る
土を練り、炎を眺める。そんな原始的な体験が子どもにとって格別な時間になればいいなと願いながら、12月までこのワークショップを続けます。
神戸のコミュニティメディアで働いた後、2012年ドイツへ移住。現在ブラウンシュバイクで、ドキュメンタリーを中心に映像制作。作品に「ヒバクシャとボクの旅」「なぜ僕がドイツ語を学ぶのか」など。三児の父。
takashikunimoto.net



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