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若者の短編映画フェスティバル「up and coming」

若い映像作家たちによる短編映画フェスティバル「アップ・アンド・カミング(up and coming)」が11月19日から22日まで、ハノーファーで開かれました。27歳以下を対象としており、世界57カ国から約3400点の応募がありました。ドイツ部門と国際部門の二つがあり、ドイツ部門は75本、国際部門は34カ国からの56本が上映されました。若い映像作家や俳優たちの交流の場にもなっており、毎回盛況です。

up and coming
若い才能が集う短編映画フェスティバル「up and coming」

もともとこの催しは、1982年に学生映画コンクールとして始まりました。ドイツ全国より学生・生徒たちが自分の作品を応募するうち、年々参加者が増えていきました。その後、2年に一度の国際コンクールとなり、今回で13回目を迎えました。このコンクールに参加した人の中には、俳優や映像作家として現在第一線で活躍する人たちもいます。

開会式で主催者は、「ホラーや恋愛、世界の終わり、コメディーなど、年によって映画の題材に傾向があるが、最近は政治的、社会的テーマが増えてきた」と話しました。5年前より「映像教師」を学校に派遣し、クラブ活動や授業の一環として生徒たちに映像作りをさせる動きも始まっているといいます。

日本からの参加者
日本の映像教育について討論する日本からの参加者

今回は7歳から27歳による作品が上映されました。アニメーションや実写ドラマ、実験映像がありましたが、どれもテレビや映画館では見られない個性的な作品ばかり。発想が自由なのです。スポンサーの意向にとらわれる必要がないため、自分が作りたいと望むものを作っています。エンターテインメントから芸術的なものまでのジャンルが多様で、それがランダムな順序で上映されるのですから、映画好きにはたまりません。監督の多くが来場しており、インタビューやトークを聞けるのも魅力的です。

日本からも、アニメーションや実写など7つの作品が上映され、目の付けどころや、映像の背景が「日本らしい」と感想を述べる人もいました。日本の映像教育についてのトークショーには、同フェスティバル審査員の藤岡朝子さん、映像関係の仕事をする柳田慎太郎さん、阿佐ヶ谷美術専門学校メディアデザイン科の末岡一郎科長と学生の西村真奈さん、中島輝砂さん、酒井彩貴さん、宇敷慎太さんが参加しました。「自分の撮りたいものを作りたい、と思って学校に入った」「学校は、いろんな作品を見てお互いに高めあう場所」という意見が出ました。ドイツや欧州の参加者から見ると、遠い異国の日本は未知の国なのでしょう。作品に込める思いはそれぞれ。映像は自己表現の一つであり、他の人に何かを伝える大事な手段なのだと感じました。

田口理穂(たぐち・りほ)
日本で新聞記者を経て1996年よりハノーファー在住。社会学修士。ジャーナリスト、裁判所認定ドイツ語通訳・翻訳士。著書に『市民がつくった電力会社: ドイツ・シェーナウの草の根エネルギー革命』(大月書店)、共著に「お手本の国」のウソ(新潮新書) など。
 
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