Hanacell

年に一度の地域の祭典 フリースペース・フェスティバル

毎年9月に私達ライプツィヒ「日本の家」が主催しているフリースペース・フェスティバルも、今年で5回目になりました。行政が衰退地域を盛り上げようと2012年に始めたこの祭典には、地域で活動している団体やアーティスト、ミュージシャンなど約20組が毎年参加しています。最初の2年は参加者の一組として関わっていましたが、3回目の年に主催者が育児休暇に入り、直談判される形で引き継ぎました。毎年恒例となってきたこのイベントも、楽しみにしてくれている人達に支えられて、準備におよそ半年かかるにも関わらずなんとか続けています。

コンサート
教会での光のインスタレーションとコンサート

そもそも、壁崩壊後に大量の人口流出を経験して「縮退都市」として有名なライプツィヒの中でさらに衰退地域として名高い東地域も、近年の人口増加で大きく発展が進んでいます。当初はそれこそあちこちに空き家と空き地があり、活動拠点にしている団体も少なかった状態でしたが、現在では自由に使える空き家や空き地を見つけることが難しくなっています。フェスティバルへの公募には、参加希望者の応募が大量に届き、彼らの展示や演奏場所を調整するのも大変な作業になってきました。とは言え、まったく商業性なしの手作りのフェスティバルでは、助成金の申請、広報、参加者と場所の調整、ポスター・プログラムの作成と配布、ウェブサイトの作成と逐次更新、当日の準備・片付け、助成金の清算・報告書の提出など、すべての業務が手探りです。どの作業にも答えが用意されているわけではないので、試行錯誤しながら当日までの準備の過程を楽しむことにしています。大事にしているコンセプトは、アイデアがある人が自由に実現できるプラットフォームをつくることで、参加者はもちろん、運営側にも参加したい人には門戸を開いています。

展示
日本の家での展示 

今年の運営には、文化科学を学ぶ修士課程の学生二人、フィリップとマーレンが参加し、「フリースペース」に関連する講演会と地元の教会を使って大規模なコンサートと光のインスタレーションを実現させました。

すべての会場は入場無料です。メイン会場となった「日本の家」では、すべての参加場所を表した地図を壁面に展示し、行政と地域の活動家を招いたディスカッションを行いました。その後は、投げ銭でごはんの会を開き、飛び入り参加のミュージシャンが演奏しました。1日だけのイベントなので、当日はあっと言う間に終わってしまいますが、自分達の活動している地域で他の団体と共に作り上げる過程を共有することで非常に深い連帯感が生まれます。この祭典は、そもそもメディアに大きく取り上げられて知名度を上げることでもなく、外部から多くの来場者を呼び込むのが目的でもありません。自分達が活動している地域のためにあります。自分達の「フリースペース」を守るために、これからも続けていこうと思います。

www.freiraumleipzig.de
ミンクス 典子
ドイツ建築家協会認定建築家。福岡県出身。東京理科大学建築学科修士課程修了後、2003年に渡欧。欧州各地の設計事務所に所属し、10年から「ミンクス・アーキテクツ」主宰。11年より日独文化交流拠点ライプツィヒ「日本の家」の共同代表。
www.djh-leipzig.de
 
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