ジャパンダイジェスト

ドイツで性暴力や家庭内暴力の被害にあったら?

①ドイツで顔見知りの人に食事に誘われ、被害に遭いました。ドイツ語もできず、どうしたら良いか分かりませんでした。
②知人が配偶者の許可がなければ何もできない、いつも見張られている、お金も無くなった……と困っています。相談できるところはありますか?

Point

  • 知り合いの間柄でも性暴力は犯罪です
  • ドイツでは暴行・脅迫なしでも性暴力となります
  • 着の身着のままで医療機関を受診してください
  • 配偶者間の家庭内暴力は支配欲が背景に
  • 暴力は身体的・精神的・経済的・性的とさまざま
  • ドイツでも日本語で相談できるところがあります

性暴力の解釈(Sexualisierte Gewalt、Vergewaltigung)

望まない性的行為

望まない性的な行為を強いることは「性暴力」です(内閣府男女共同参画局)。恋人同士や夫婦であっても、本人が望まない性的行為は人権と尊厳を傷つける暴力となります。

暴行、脅迫を伴わなくても犯罪

2016年以降のドイツでは、暴行や脅迫を伴わなくても性暴力と判断され、心理的・経済的な優越性をもって性的行為を強要した場合も犯罪となります。被害者はとっさの混乱で声も出せず、抵抗しきれないことがほとんどで(2018年4月「女性のひろば」)、「同意があった」とする加害者の理屈は通じません。

多いデートレイプ

性暴力の約8割は、知人関係の間で生じています(内閣府男女共同参画局の調査報告)。加害者の誤った価値観、罪悪感の欠如、罰せられることはないとの思い込みも指摘されています(北風菜穂子著『親密な関係間の性暴力の判断に関する心理学的研究』風間書房、2019年)。

決して稀ではありません

日本では女性の13人に1人、男性の67人に1人が無理やり性交させられた経験があると回答(2017年の内閣府男女共同参画局の調査)。ドイツでは7人に1人の女性が性暴力を経験しており、そのうち4人に1人が現在あるいは以前のパートナーから被害に遭っています(ベルリンのMenschenrechte für die Frau e. V.)。

ドイツでの邦人への性暴力

留学生、ワーホリへの性暴力

ドイツでも、日本からの留学生やワーキングホリデーで来独した人、現地採用の邦人女性の被害が起きています。東京のNPOの「SAYNO!」(#留学セクハラに声をあげよう)の調査では、アンケート回答者516名のうち30%(156名)が海外留学中に性暴力被害に遭っています。加害者の多くは社会人で、そのうち日系企業の駐在員が56%と半数以上を占めます。

海外での性暴力の背景

友人もなく言葉も慣れない土地で、現地生活のノウハウを教えてくれる日本人を親切な人と信用し、食事の誘いなどを断りにくい状況で被害が起きています。日本人以外による性暴力には、アジア人女性に対する蔑視、加害者が育った土地の女性観が影響することがあります。

もし性暴力の被害に遭ったら

あなたは悪くありません

悪いのは加害者です。「襲われたほうに落ち度がある」と考えるのは間違いです(警視庁の講演資料、frauenberatungsstelle e.V.のQ&A)。自分を責めることなく、「私は悪くない」と繰り返し言い聞かせてください。

すぐに医療機関へ

見た目に外傷がなくとも、可能な限りシャワーを浴びず、服も着替えずに(あるいは被害時の服をビニール袋で保存して)医療機関を受診してください。怪我の有無のチェック、DNAの証拠の確保、HIVなど性感染症のテストを受けます(Rape-Kitに相当)。妊娠する可能性を否定できない際は、アフターピル(Pill danach)を用います。

どこの医療機関で?

ドイツの大学病院(Uni-Klinik)の多くには、性暴力被害担当の科(多くはRechtsmedizinにて)が設置されています。病院(Krankenhaus)の救急外来、診療時間内であれば産婦人科(Frauenartz/-ärztin)、最寄りの開業医(Praxis)でも対応してくれます。

信用できる人に連絡して

被害に遭った直後は気が動転し、落ち着いて考えるのは難しい状態です。まず信頼できる人に連絡し、医療機関、警察にも付き添ってもらうと良いでしょう(frauenberatungsstelle e.V.)。

法的な対応

警察への届け出、弁護士との相談(時に有料)、告発や追訴申請を行います。慰謝料を目的とした民事訴訟は、加害者、被害者の双方が日本へ本帰国した後でも可能です。

心への影響

性暴力被害は心に深い傷を残します。以後、抑うつ気分やパニック障害を引き起こしたり、後年になってフラッシュバックで苦しむこともあります(警察庁の講演会資料)。臨床心理士とのカウンセリングが勧められます。

夫婦間の家庭内暴力(Häusliche Gewalt、DV)

支配欲が背景に

夫婦間の強者が弱者に対して腕力、言葉、お金の支配にて、身体的・精神的に押さえ付けてコントロールしようとするものです。問題は加害者の支配欲で、あらゆる手段で配偶者を自分に従わせようとします。

自分が悪いと考えない

決してあなたに原因があるのではありません。「わたしが〇〇だから」、「わたしがもっと××していれば」と、被害者側に非があるかのように考えるのは間違いです。

このような兆候はありせんか?

身体的な暴力

殴る、蹴る、引きずり回すといった暴力です。

精神的なダメージ

大きな声で怒鳴りつける、無視する、行動・服装・話の内容を批判しばかにする。行動や外出を制限したり、配偶者の大切な品を意図的に壊すなど、尊厳を傷つけようとします。

経済的に差別する

「稼いでいるのは自分だ」と、生活に必要なお金や小遣いを配偶者には与えない金銭面での差別です。経済的な困窮から、社会的にも孤立することがあります。

性的な暴力

前述の夫婦間での性暴力、避妊の拒否、嫌がるにもかかわらずポルノを見せたり、性的ないじめをする。

配偶者による家庭内暴力

謝ってもまた繰り返す暴力

感情むき出しで攻撃的だった(攻撃期)後に、一時的に「自分が悪かった」と大人しくなることがあります(鎮静期)。しかし不満が溜まり(蓄積期)、また同じことが繰り返されます。次第にサイクルが短くなる傾向が指摘されています。

子どもの心にも影響

夫婦間の一方的な暴力の常態化は、子どもにとって大きなストレスです。親が大きな声を出せば最初は驚いていた子どもも、大きくなってから同じような態度をとるかもしれません。逆に自分が弱い立場になった際には、抜け出すのは無理と悲観的に考えるようになる可能性も考えられます。

悩まないで最初の一歩を

日本語で相談できます

ドイツ各地に家庭内暴力の被害者を守る相談室があり、日本人通訳に連絡を取るほか、通訳を予約できるところもあります。今年1月には、デュッセルドルフの女性のための相談所に日本語の無料相談室も開設されました。

frauenberatungsstelle düsseldorf e.V.
•日本語のメール: このメールアドレスは、スパムロボットから保護されています。アドレスを確認するにはJavaScriptを有効にしてください
•電話:0170-6570130

独りで悩まず相談してください

家庭内暴力の相談所には経験とノウハウを持った専門の相談員がいます。一時的に避難するシェルターの確保、子どもについての相談に乗ってくれます。他都市の相談所と連携して問題解決に動くこともできます。

もっと知りたい方は

8月27日(金)に、ドイツに暮らす邦人女性のための「性暴力・家庭内暴力」のオンラインセミナー(日本語)が催されます(案内はwww.jamsnet.de、問い合わせは このメールアドレスは、スパムロボットから保護されています。アドレスを確認するにはJavaScriptを有効にしてください )。

 
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馬場恒春 内科医師、医学博士、元福島医大助教授。 ザビーネ夫人がノイゲバウア馬場内科クリニックを開設 (Oststraße 51, Tel. 0211-383756)、著者は同分院 (Prinzenallee 19) で診療。

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