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ジャパンダイジェスト
Mo. 13. Jul. 2020

外出・接触制限の効果は?経済界が求める「出口戦略」

パンデミックは深刻化する一方だ。全世界の新型コロナウイルス感染者数が100万人を突破し、各国で死者数が増加している。日本政府は7日に緊急事態宣言を発令し、7都府県の市民に外出自粛を要請した。

7日、報道陣の前で話すロベルト・コッホ研究所のヴィーラー所長7日、報道陣の前で話すロベルト・コッホ研究所のヴィーラー所長

感染拡大速度に低下の兆候

ドイツの感染者数も、6日に10万人を超えた。しかし感染者の増加速度に変化が見え始めた。連邦政府、各州政府が外出・接触制限令を施行してから約2週間近く経った3日、ロベルト・コッホ研究所のヴィーラ―所長は、「制限令が導入されて以来、ウイルスの拡大速度が鈍り始めた」と述べ、政府の措置が一定の効果を見せていることを明らかにした。

ヴィーラ―所長は、「過去数週間には感染者1人が5~7人にウイルスを感染させていたが、ここ数日間は、感染者がウイルスを伝播する数が1人に減った」と語った。世界保健機関(WHO)の統計によると、3月の第2週目には、ドイツの感染者数は3日間で倍増。しかし4月2日の時点では、倍増にかかる日数が10日に増えていた。メルケル政権は、「重症者の数が急増して、イタリアやスペインのように人工呼吸器や集中治療室が足りなくなる事態を防ぐには、倍増日数を少なくとも14日に伸ばす必要がある」と主張している。

国民の大半が制限令を支持

このためメルケル首相は、直ちに外出・接触制限令を緩和することに反対する姿勢を打ち出した。首相は3日に発表したビデオ演説の中で、「今慌てて制限を緩めると、再び感染拡大速度が高まって、規制の強化が必要になる。そうした事態を避けるためには、復活祭の休暇にも外出制限令を守り、国内旅行や遠足などをやめていただきたい」と国民に訴えた。

ドイツ国民の大半は、メルケル政権の外出・接触制限令に理解を示している。公共放送局ARDが2日に公表した世論調査結果によると、回答者の72%が「メルケル政権のコロナ対策に満足している」と答えたほか、63%が「政府の仕事ぶりに満足している」と回答。63%という比率は、ARDが約20年前にこの世論調査を始めてから最高の数字だ。また回答者の93%が、「外出・接触制限令に賛成だ」と答えている。

「出口戦略」を求める経済界

これに対し産業界や経済学者たちからは、「メルケル政権はどういう条件が整えば現在の経済シャットダウン状態を緩和するのかについて、『出口戦略』を示すべきだ」という声が強まっている。この背景には、コロナ危機が国民経済に及ぼす悪影響が、日に日に深刻化しているという事実がある。

ドイツ商工会議所(DIHK)によると、現在ドイツ企業のほぼ半数が休業状態だ。その比率は、旅行業界と飲食業界では80%、小売業界では68%に上る。ドイツ小売業協会(HDE)は、3月16日の時点で「食料品を除くと、コロナ危機のために小売店業界が1日ごとに失う売上高は、11億5000万ユーロ(1380億円・1ユーロ=120円換算)に達する」と述べていた。4月1日には、全国でデパートを経営するガレリア・カールシュタット・グループが経営難に陥り債権者からの保護を申請した。

自動車メーカーなど多くの製造企業では生産ラインが停止。政府に対して短時間労働制度(クルツアルバイト)の適用を申請している企業は、約47万社に上る。

財界から「出口戦略を早く示してほしい」という声が上がるのも、無理はない。ドイツ経営者連盟のクラーマー会長は、「もしも感染者数の拡大に順調にブレーキがかかれば、5月以降は徐々に経済活動を復活させるべきだ」と訴えた。Ifo経済研究所のフュスト所長は、4月3日に13人の経済学者、医学者とともに提言書を発表し、「他人との間に1.5メートルの距離を取ることやマスク着用を義務付けながら、少しずつ企業活動や学校での授業を再開させるべきだ」と勧告している。

これまでメルケル政権は、国民の健康と安全を最優先にする政策を取ってきた。しかし経済界からは「メルケル首相は、感染症学者の意見を重視し過ぎている。雇用や企業活動にも配慮するべきだ」という意見が強まっているのだ。

コロナ警戒アプリも導入へ

このためメルケル政権も、復活祭の休暇明け以降、何らかの方向性を打ち出さざるを得ないだろう。政府がスマートフォンを利用した「警戒アプリ」の導入へ向けて実験を続けているのは、そのためだ。このアプリをダウンロードすると、一定の距離内に近づいたスマートフォン同士がブルートゥース機能によって自動的にデータを交換し合う。感染した市民がその事実を自分のアプリに登録すると、過去にその人に近づいた人のスマートフォンに自動的にデータが送られる。アプリはこのようにして、感染者と接近した人に対し、ウイルス検査に行くように促す。個人データは匿名化されるので、情報漏えいの心配はない。中国とは異なり、アプリの使用や自分が感染した事実の登録は任意なので強制力がないとはいえ、感染拡大にさらにブレーキをかけるのに役立つかもしれない。

コロナ危機の特徴は、健康への危険と経済への打撃のダブルパンチである点だ。健康を守るために制限令を施行すると経済活動がダウンし、企業や飲食店の活動を再開させると感染拡大のリスクが増大する。政府は、国民の生命を守りながら、大不況を回避するという難題にどのような解決策を打ち出すだろうか。

 
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熊谷徹
1959年東京生まれ。早稲田大学政経学部卒業後、NHKに入局。ワシントン支局勤務中に、ベルリンの壁崩壊、米ソ首脳会談などを取材。90年からはフリージャーナリストとしてドイツ・ミュンヘン市に在住。過去との対決、統一後のドイツの変化、欧州の政治・経済統合、安全保障問題を中心に取材、執筆を続けている。著書に「ドイツの憂鬱」、「新生ドイツの挑戦」(丸善ライブラリー)、「ドイツ病に学べ」、「住まなきゃわからないドイツ」、「びっくり先進国ドイツ」(新潮社)など。
http://www.tkumagai.de
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