ドイツワイン・ナビゲーター


ワインと食の合わせ方6 リースリングと食

今から10年前、ドイツワイン・ナビゲーターの第1回目(2007年/ 第663号)に、リースリングの多様性と包容力について、以下のように書きました。

「リースリングは、たった一つの品種でありながら、ライトなものから重厚なものまで、また辛口から中辛口、甘口、そして極甘口まで、さまざまな表情を見せてくれます。そして、食中酒としておすすめのクヴァリテーツワイン、プレディカーツワインのカビネットといったカテゴリーのリースリングは、たいていの食事と難なくマッチしてしまうのです」

ドイツワインの中で、リースリングとならんでポピュラーなジルヴァーナーやヴァイスブルグンダー、シュペートブルグンダーなどは、中辛口や甘口がほとんど作られていませんし、極甘口などは例外です。世界的に見ても、リースリングのようにさまざまなスタイルのワインが作られているケースは珍しいのです。アルプス山脈の北側の気候が活かされたドイツワインは、低アルコールという観点からも注目を浴びています。

108回目(第1051号)で述べた「ワインと食のウエイトを合わせる」試みに、リースリングは最適です。食前のゼクトから食後のデザートワインまでのほとんどをカバーしてくれるからです。加えて、産地の気候や土壌の違いにより、硬質のものから柔らかなものまでさまざまなテクスチュアのものがそろいます。

我が家では週末の食卓にワインが登場します。献立は和食あり、洋食ありで、たまに南米料理も作ります。関西出身のせいか、私の料理は何を作っても味付けが控えめ。食材の風味を楽しみたいので、リースリングの場合は香りが控えめで、軽快かつ柔らかな仕上がりのものを選びます。逆にブラジル出身の夫は濃い味好み。私の料理に塩や醤油を足したり、和えるソースやたれを多めにしたりしています。庭にマンゴーやグアバが実る環境で生まれ育ったせいか、香りが華やかなゲヴュルツトラミーナやムスカテラがお気に入りで、リースリングも香りが充分表現された重めのものを選びます。。いずれにせよ、野菜料理をはじめ、鶏肉、豚肉、子牛肉にはリースリングをはじめとする白を合わせ、牛肉にはシュペートブルグンダーを開けることが多いです。ワインの好みは両極端ですが、それぞれにお気に入りの地域や畑、醸造所を探すのは楽しいものです。みなさんもご自分の好みを大切に組み合わせを楽しんでください。

ところで、先頃、ローター・リースリング種から造られたワインに出会いました。「赤いリースリング」という名称ですが、果皮に含まれる色素は赤ワインの生産には充分ではなく、白ワインが造られます。柑橘系ではない、熟したリンゴや洋梨系の風味、リースリングよりも穏やかな酸味、リースリングとは少し異なる凝縮感のある味わいで、濃い味付けの料理には、リースリングよりも相性が良い場合もあります。

リースリングはローター・リースリングの突然変異であるという説が一般的ですが、リースリングの突然変異がローター・リースリングであるという説もあります。2007年に、まずヘッセン州で栽培が認可され、今ではラインラント・ファルツ州などでも栽培可能になりました。まだ珍しい品種ですが、リースリングよりもやや病害に強いという利点もあるため、今後栽培面積が増えるかもしれません。

 
Weingut Prinz
プリンツ醸造所(ラインガウ地方)

Weingut Stachel
写真/フレッド&ザビーネ・プリンツ夫妻

背後にタウヌスの森が広がるラインガウの高台、ハルガルテンの家族経営の醸造所。所有畑は約8ヘクタール。うちリースリングが88%、シュペートブルグンダーが6%を占める。ハルガルテンの南東向きのユングファー、南西向きのシェーンヘルなど優れた畑を所有。いずれもレス、粘土、小石、砂の混合土壌で、ユングファーは珪岩が多く混ざる。オーナーで醸造家のフレッド・プリンツ氏は、ヘッセン州営クロースター・エーバーバッハ醸造所の醸造責任者として活躍していたが、1991年に個人用の畑を手に入れ、副業としてワインの生産をはじめ、2004年に独立。澄みきった味わいのリースリングはことのほか魅力的。現在ビオに移行中。VDP会員。

Weingut Prinz
Im Flachsgarten 5, 65375 Hallgarten
www.prinz-wein.de


Schäferlay2016 Roter Riesling trocken
ローター・リースリング 辛口 16.60€

プリンツ氏は専門誌の記事でローター・リースリングを知ったという。早速ガイゼンハイム研究所から苗を入手し、2006年に栽培を開始した。畑はハルガルテンのユングファー、栽培面積は0.2ヘクタール。「ローター・リースリングは比較的酸の量が少なく、エキス分が多い。力強く余韻の長いワインに仕上る」とプリンツ氏。古い品種で個体差があり、個々のブドウの生育ペースが異なるほか、収量の差が大きく、グリーンハーベストは必須だという。熟したリンゴの控えめな風味、柔らかな酸味の味わい深いワイン。

最終更新 Montag, 18 Dezember 2017 18:32
 

ワインと食の合わせ方5 ワインとチーズ

ドイツのチーズ売り場や専門店では、フランスやイタリアのチーズが幅をきかせています。両国ではワインのほか、チーズにおいても洗練された製品が多く作られています。フランスには、ロワール地方の白、サンセール(ソーヴィニヨン・ブラン種)とクロタン・ド・シャヴィニョール、アルザス地方の白、ゲヴュルツトラミーナとマンステルといった、広く知られた伝統的な組み合わせがあります。

ドイツでは古くから、ハントケーゼという手で成形するサワーミルクチーズが作られてきました。現在の主産地はライン・マイン地域で、フランクフルト地域ではアップルワインを、ラインヘッセン、プファルツ地方などのワイン産地では軽めの辛口の白ワインを合わせます。出来たてのハントケーゼはそのままでも美味しいですが、玉ねぎのみじん切り、クミンシード、パプリカパウダーなどのスパイスと和えたり、熟成が進んだものをマリネ液に漬けこんだりします。

ドイツで好まれているのが、シュペートレーゼ以上の凝縮感のある甘口ワインと青カビチーズの組み合わせです。ボルドー地方の貴腐ワイン、ソーテルヌ(セミヨン種など)にピレネー地方のロックフォールを合わせるのと同じ感覚です。

ワインとチーズもワインと料理のように、それぞれの「ウエイト」(注)を揃えると美味しくいただけます。チーズには同じ産地のワインを合わせるのが一番ですが、ドイツワインでも楽しめます。白ワインを合わせる場合は、辛口に限定せず、中辛口や甘口もぜひ試してみてください。

  • ● クワルク、リコッタなどのフレッシュチーズには、リースリング、ジルヴァーナー、ヴァイスブルグンダーなどの軽快な白を。

  • ● クロタン・ド・シャヴィニョール、サント・モール、ヴァランセなどの山羊のチーズは、フレッシュなものには軽快なソーヴィニヨンブランなどの白を、熟成したものには、やや重めの白やシュペートブルグンダーなどの赤を。

  • ● カマンベール、ブリー・ド・モー、 ブリー・ド・ムラン、クロミエ、サン・マルセランなど、クリーミーで濃厚な白カビチーズには、熟成したシェーブル同様、やや重めの凝縮した白や赤が合います。

  • ● マンステル、ラングレ、レブロション、エポワス、ヴァシュラン・モン・ドールなどのウオッシュタイプの熟成香豊かなチーズには、やや重めで凝縮感のあるゲヴュルツトラミーナ、グラウブルグンダーなどの白、やや重めの赤が合います。

  • ● ハードタイプのチーズにはアッペンツェラー、ゴーダ、トム・ド・サヴォワ、モルビエ、パルミジャーノ、コンテ、グリュイエール、アルゴイ地方のエメンタールやベルクケーゼなどがあります。いずれも重めの白や赤が合います。

チーズとワインは、お互いを高め合うような味のハーモニーが感じられれば一番です。それは、チーズをひとくち食べてワインを飲んだ時、凝縮した味わいが生まれるような感覚です。両者を色々味わっているうちに、きっとそのような瞬間に出会えるはずです。

(注)1051号参照。グーツワイン(エステートワイン)=軽快、オルツワイン(村名ワイン)=やや重厚、ラーゲンワイン(畑名ワイン)=重厚、というのが大体の目安になります。

 
Weingut Brennerei Zum Eulenturm
オイレントゥルム醸造所(モーゼル地方)

Weingut Stachel
ティモ・C・シュトルベン(Timo C. Stölben)さんと
パートナーのウルズラ・ツォス(Ursula Zoss)さん

モーゼル地方ブリーデルの家族経営の醸造所。ブリーデルの市壁の一部で、現存する塔「オイレントゥルム」から命名。醸造所の歴史は1525年まで遡ることができる。現在のオーナーはティモ・C・シュトルベン。子供の頃からイタリアに憧れ、アビトゥア終了後、イタリアのワイン醸造所で8カ月働き、共同学位制度を利用してドイツのガイゼンハイム大学とイタリアのウディーネ大学で醸造学を修めた。ワインが生活に密着しているイタリアで、自然を大切にした畑の環境づくり、ワインと料理の奥深い関係などを学んだと言う。ブリーデル村で最も優れたシェーファーライとトリエレンに畑を所有。リースリングのほかにブルグンダー品種などを栽培、2013年からはゼクトも生産している。

Weingut Brennerei Zum Eulenturm
Hauptstrasse 218,56867 Briedel
www.zum-eulenturm.de


Schäferlay2016 Riesling Spätlese Edelsüss „Schäferlay“ 
リースリング シュペートレーゼ エーデルズュース「シェーファーライ」甘口 12€

シュトルベン家では、除草剤や化学肥料は一切投入せず、昔ながらの棒仕立てでリースリングを栽培。自根のリースリングが70%を占め、中には樹齢80年のものもある。ご紹介するリースリングは、主に灰色スレート岩で構成されるシェーファーライという畑のもの。羽のように軽やかで、ほのかな甘みのあるリースリングはシェーブルチーズ(山羊のチーズ)のフレッシュなものや中くらいに熟成したもの、ゴルゴンゾーラなどと良く合う。モーゼル地方の残糖のあるエレガントなワインは、チーズのパートナーに最適だ。

最終更新 Mittwoch, 11 Oktober 2017 11:04
 

ワインと食の合わせ方 4 料理とワイン

ワインは古くから料理に使われてきました。「料理用ワイン」という商品があるくらいです。ワインは日本酒などと同様、料理に美味しさや「こく」を加える調味料となります。

ワインは調理のあらゆる段階で使えます。例えば、肉などに下味を付けるマリネ液としても、煮込む時の水代わりとしても利用できます。肉汁や魚介の煮汁、スープなどに加えて味わいを豊かにすることもできます。肉や魚介が焼き上がったフライパンに注いでアルコールを飛ばして風味付けをしたり、サラダのドレッシングやデザートに使うこともできます。料理が食卓にサービスされた段階でも、お皿のスープにワインを垂らして美味しさを加えることができます。

ドイツの「ワインズッペ」には「リースリングズッペ」「ジルヴァーナーズッペ」など、特定のワインを使うレシピもあります。熱々の、または冷製の牛肉のコンソメスープ(リンダークラフトブリューエ)にはシェリー(オロロソ、またはアモンティジャード)を少量加えると味わいが深まります。シェリーは酵母と長い間接触させて醸造するため、うま味が加わるのでしょう。

ワインをふんだんに使う料理には、以前ご紹介した鶏肉のワイン煮(コック・オー・ヴァン)や牛肉の赤ワイン煮(ブッフ・ブルキニヨン)があります( 1047号 で紹介)。いずれも「蒸し煮」という調理法で、肉を焼いて風味を引き立ててからワインで煮込みます。ドイツ語では「シュモーレン(Schmoren)」といい、肉料理のポピュラーな調理法です。ザウアーブラーテンはマリネ液にワインを加えて蒸し煮にします。鶏のリースリング煮(リースリングフーン)、グラーシュなどのラグー(シチュー)も蒸し煮です。鴨やレバーの蒸し煮には、甘口のポートワインを使うレシピがあります。

ソースにもワインを加えるとより美味しくなります。オランデーズソースには白ワインを、トマトソースには赤ワインか白ワインを加えると味に深みが出ます。

シャンパン・リゾットはドイツのゼクトで手軽に作れます。チーズフォンデュはスイスではファンダン(シャスラ)を使用しますが、辛口の白であればほかのワインも使えます。 シャンパン・フォンデュはゼクト・フォンデュにしても良いでしょう。魚介のワイン蒸しには、あらゆるワインが使えます。肉料理の付け合わせのヴァインクラウトはザワークラウトにワインを加えて調理したものです。

ワインはデザートにも使われます。ワインゼリー、赤ワインのクグロフや赤ワインケーキ、ヴェルフェンシュパイゼ(Welfenspeise)、洋梨の赤ワイン煮など多彩です。甘口のゲヴュルツトラミーナをふんだんに使ったバニラアイスクリームもあります。あるいはバニラアイスクリームに甘口のシェリー、PX(ペドロ・ヒメネス) を添えるだけで、気のきいたデザートになります。

和食には日本酒を少量使用するレシピが沢山ありますが、自宅に日本酒がないことが多いので、辛口の白ワインを使用しています。酒蒸しは白ワイン蒸しに、肉や魚介の下味には醤油と白ワインを合わせます。白ワインは大抵の和食に使え、美味しくでき上がります。

料理には、白、赤ともにベーシックな辛口ワイン(グーツワインなど)が使いやすいと思います。料理に使うワインに国境はなく、あらゆるワインが使えます。

 
Weingut Knewitz
クネーヴィッツ醸造所(ラインヘッセン地方)

Weingut Knewitz
右からトビアスとパートナーのコリンナ、弟のビョルン

ラインヘッセン地方北西部、アッペンハイムの家族経営の醸造所。19世紀末からのワイン造りの伝統を持つ。1968年にエルヴィン・クネーヴィッツが今日の醸造所の基礎を築き、現在は二代目のゲロルドと三代目のトビアス、ビョルン兄弟の二世代で高品質のワインを生産している。2009年からリースリングとブルゴーニュ品種に絞ってのコレクションを展開。標高247mのヴェスターベルクの西側の裾野にフンデルトグルデン、ホーニヒベルクなどの優れた畑を所有。所有畑は20ha。今春結成されたラインヘッセン地方の生産者団体「MAXIME HERKUNFT」(マキシーメ・ヘアクンフト)の設立メンバー。同団体はVDPに倣い、3段階の格付けを実施。現会員はVDP 会員を含む70醸造所。

Weingut Knewitz
Rheinblick 13, 55437 Appenheim
Tel. 06725-2949
www.weingut-knewitz.de


2016 Chardonnay trocken Holzfass2016 Chardonnay trocken Holzfass
2016年シャルドネ「ホルツファス」辛口
12,50 €(マグナムボトルは27€)

1990年代末、二代目のゲロルドがシャルドネの栽培を開始。ニューワールドのシャルドネに感銘を受けての挑戦だったが、植えたのはフレンチクローン。クネーヴィッツ家の石灰質の多い畑にうまく適応している。樹齢も約30年に達し、収穫ブドウは非常に小粒。ご紹介するシャルドネは主にガウ・アルゲスハイムのゴールドベルクという畑のもの。フレンチオークの小樽で醸造。グーツワインだが収量は規定以下で凝縮した味わい。上品な香ばしさ、活き活きとした味わい、なめらかなテクスチュアのシャルドネ。

最終更新 Mittwoch, 09 August 2017 11:31
 

ワインと食の合わせ方 3 ワインのウエイトに注目!

「魚には白ワイン、肉には赤ワイン」というよく知られたルールがありますが、ある種の魚介料理に合う赤ワインもあり、鶏肉や豚肉、子牛肉には白ワインも合います。このほかロゼやオレンジワイン(1003号参照) という選択肢もあります。ワインの色だけに注目するのではなく、料理のウエイト(重量感)とワインのウエイト、食材のテクスチュア(質感)とワインのテクスチュア、 料理の風味とワインの風味のバランスが良いと、食事とワインの双方をより楽しむことができます。

「ウエイト」に関して参考になるのが、ドイツで最もよく知られるソムリエールの1人、クリスチーナ・フィッシャーさんの著書「Wein & Speisen」です。ワインと食のマッチングを解りやすく体系化した実用書で、英語版もあります。

クリスチーナさんは、世界中のあらゆる白ワイン、赤ワイン、甘口ワイン、スパークリングワイン、酒精強化ワイン(シェリーなど)を、軽快なものから重厚なものに至る4カテゴリーに分類し、それぞれに合う料理、調理法、ソースなどを紹介しています。

4つのカテゴリーは、軽いものから重いものへと、タイプ1(ライト&フレッシュ)、タイプ2(ジューシー&ハーモニー豊か)、タイプ3(重層的&エレガント)、タイプ4(重厚&リッチ)に分けられています。ただ、ドイツでは気候柄、アルコール度数が14度を越える、タイプ4のような重厚なワインは作られません。

ドイツワインの場合、タイプ1はミュラー・トゥルガウ、エルプリング、リースリングならカビネットクラスまで、赤ならトロリンガー。タイプ2はジルヴァーナー、ヴァイスブルグンダー、グラウブルグンダー、赤のシュペートブルグンダーやドルンフェルダーなどのクヴァリテーツワイン。タイプ3はエアステス・ゲヴェックス&グローセス・ゲヴェックス級のワインが相当します。主にアルコール度数の高低が、ワインの軽さ、重さの目安となります。ここで思い浮かぶのが、VDP(ドイツ・プレディカーツワイン生産者協会)の4段階の格付け(グーツワイン、オルツワイン、エアステ・ラーゲ&グローセ・ラーゲ)です。最近では会員以外の醸造所も、この格付けにならってワインを3段階、または4段階で生産しています。格付けの段階は、軽快なワインから重厚なワインへの段階にほぼ対応しています。

ライトなワインに合わせるライトな料理なら、サラダ、茹で野菜、焼き野菜、セビーチェやカルパッチョ、魚介のグリルやエスカベッシュ、サラダ感覚のパスタなど。中くらいのウエイトの料理は、テリーヌ、リゾット、ラザニア、鶏肉、豚肉、子牛肉料理、クリームソースを使う料理、チーズフォンデュなど、重厚な料理なら、牛肉のステーキ、ジビエ料理、濃厚なソースを使う料理などが思い浮かびます。ワインを2段階用意しておき、どちらが合うか比較するのも楽しいと思います。

同じ魚でも、カルパッチョや茹でたものはライト、ソテーやフライなら中くらい、ベーコンなどを巻いて焼くと重めになります。ソースでは、ヴィネグレットソースやチャツネは軽快、ブール・ブランなどは中くらい、グレイビーソースなどは重厚です。同じ食材でも調理法やソースを変えれば軽いワインにも重厚なワインにも合うようになります。このように、ウエイトについてちょっと思いをめぐらせるだけで、料理とワインの、だいたいのマッチングが見つかります。

 
Weingut Stachel
シュタッヒェル醸造所(プファルツ地方)

Weingut Stachel

プファルツ地方南部、マイカマーの家族経営の醸造所。所有畑は15ヘクタール。3代目にあたる父エーリッヒが主にぶどう栽培を、息子マティアスが醸造を担当する。エーリッヒはロワールで、マティアスはカリフォルニアとニュージーランドで、それぞれ醸造経験を持つ。マイカマーのキルヒェンシュトゥックとハイリゲンベルク、アルスターヴァイラーのカペレンベルクなど6つの優れた畑を所有。土壌を何よりも大切にし、投入するのはオーガニック肥料だけ。リースリング、ゲヴュルツトラミーナを始めとするドイツの伝統品種に加え、エーリッヒがソーヴィニヨン・ブラン、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロの栽培を開始。マティアスもシラー、マルベックを新たに植え、親子共にフランス品種にも力を入れている。

Weingut Stachel
Bahnhofstraße 40, 67487 Maikammer
Tel. 06321-5112
www.weingut-stachel.de


2015 Sauvignon Blanc Paradies2015 Sauvignon Blanc “Paradies” 9,70 €
2015年ソーヴィニヨン・ブラン「パラディース」辛口

ディーデスフェルダーのパラディースは、ハンバッハ城を頂く丘の裾野にある雑色砂岩土壌の畑。背後の山なみが、畑を霜害などから守っている。父エーリッヒがソーヴィニヨン・ブランの栽培を開始したのは2000年。収穫量は1ヘクタール当り45 ヘクトリットルに抑えられている。ハーバル系の清々しい風味が印象的で、味わい深いワインはニュージーランドよりもロワールのスタイルを思わせる。香りは控えめで、ライトな料理から、中くらいのウエイトの料理まで広く合わせられる、気品あるソーヴィニヨン・ブランだ。

最終更新 Mittwoch, 07 Juni 2017 14:58
 

ワインと食の合わせ方 2 トラディショナルな組み合わせ

長年ワインが造られてきた土地では、ワインは食事時のごく当たり前の飲み物で、地元の食材を使った郷土料理に合わせて飲まれていました。その組み合わせのいくつかは、定番として今日まで伝えられています。

中でも、フランスの伝統的な組み合わせは世界のお手本。まず思い浮かぶのは、「牡蠣」とロワール川河口地域のミュスカデ(メロン・ブラン)、ブルゴーニュ地方のシャブリ(シャルドネ)、シャンパン(ピノ・ノワール、ピノ・ムニエ、シャルドネ)の組み合わせ。「エスカルゴのブルゴーニュ風」「カエルのもも肉のソテー」には、やはりブルゴーニュ地方の白(シャルドネ、アリゴテ)。「シュークルート(ザワークラウト)」にはアルザス地方のリースリング。

赤ワインなら、ボルドー地方の赤(カベルネソーヴィニヨン、カベルネフラン、メルロ)と 「カレ・ダニョー」などの子羊料理や「ヤツメウナギのボルドー風」。ブルゴーニュ地方の赤(ピノ・ノワール)と牛肉のワイン煮込み「ブッフ・ブルギニヨン」や、ラングドック地方の赤(グルナッシュ、シラーなど)と白インゲン豆と肉の煮込み「カスレ」。鶏のワイン煮「コック・オー・ヴァン」は、ブルゴーニュの赤で煮込むものが有名ですが、各地で地元のワインが使われており、アルザス地方では「コック・オー・リースリング」と呼び、リースリングで煮込みます。「フォアグラ」は伝統的にハイクラスの甘口ワインと合わせます。ボルドー地方ソーテルヌ、南西地方モンバジヤック(いずれもセミヨン、ソーヴィニヨン・ブラン、ムスカデル)の貴腐ワイン、アルザス地方のゲヴュルツトラミーナーやピノ・グリの遅摘みワインとの組み合わせが定番です。

古代ローマ時代から美食の伝統を持つイタリアにも、無数の定番があります。よく知られているのは、ピエモンテ地方のバローロやバルバレスコ(ネビオッロ)と、「セルヴァッジーナ(=ジビエ)の煮込み」やトリュフを使った料理との組み合わせ。同地方を代表する赤ワイン、バルベラは地元で良く食べられるリゾットに最適です。トスカーナ地方の赤、キアンティ(サンジョヴェーゼ)は、軽快なものはパスタ料理やポレンタ料理、重厚なものはTボーンステーキ「ビステッカ・アラ・フィオレンティーナ」の良きパートナーです。

オーストリアでは、「ヴィーナー・シュニッツェル」や牛肉をブイヨンで煮た「ターフェルシュピッツ」にグリューナー・フェルトリーナーが定番。ドイツにもファルツ地方の「ザウマーゲン」とリースリング、フランケン地方の「ブラウエ・ツィプフェル」とジルヴァーナー、ヴュルテンベルク地方の「マウルタッシェン」と軽快な赤のトロリンガーなど様々な組み合わせがあります。リースリングはドイツの全ワイン生産地域で栽培されているため、「アイスバイン」から「カスラー」、鶏肉から川魚まで、あらゆる郷土料理と合わせて楽しまれています。シュペートブルグンダーは黒い森地方の薫製ハムや「ヴィルト(=ジビエ)」と合わせます。

ヨーロッパの定番を見ると、ドイツのように、気候、風土の関係で白ワインが多く作られている土地では、肉料理も白ワインに合う調理法が発達しているようです。フランス北部では、シャルドネ、ピノ・ノワール(=シュペートブルグンダー)などドイツと共通する品種が栽培されていますので、フランス料理にドイツ産ワインを合わせるのも面白いと思います。

※括弧内の小さな文字はそれぞれのワインに使われる品種名です。他国のワインを合わせる時の参考になさってください。

 
Weingut Johann Ruck
ヨハン・ルック醸造所(フランケン地方)

Weingut Johann Ruck

1839年創業の家族経営の醸造所。フランケン地方では、約2億5000年前の三畳紀(トリアス紀)の岩石が風化・堆積した土壌で、偉大なワインが造られている。ルック家が所有するイプホーフェン村のユリウス・エヒター・ベルクなどの畑もトリアス紀のコイパー土壌が主体だ。現在、醸造所を率いるのはハンジ&マリオン・ルック夫妻。高品質なワインの生産者として名を成した父ハンスも今なお現役。親子二代で更なる品質向上のための研究に余念がない。ルック家はドイツではまれな密植に取り組み、1ヘクタール当たり7000本のぶどうを育て、収穫量も1ヘクタール当たり50ヘクトリットルに制限している。さぞ力強いワインが誕生するかと思いきや、ルック・ワインは思いのほか繊細で優美。力強さは内に秘められている。

Weingut Johann Ruck
Marktplatz 19
97346 Iphofen
Tel. 09323-800880
www.ruckwein


2015 Blauer Silvaner trocken Marion Ruck2015 Blauer Silvaner trocken „Marion Ruck“ 8,50€
2015年ブラウアー・ジルヴァーナー「マリオン・ルック」辛口

ジルヴァーナーにはグリューナー・ジルヴァーナーとその突然変異であるブラウアー・ジルヴァーナーとがある。ブラウアー・ジルヴァーナーは果皮がほんのり黒ぶどうのように染まる希少なぶどう。マリオンの実家、ランダースアッカーのイム・ピュールベン醸造所では、1985年から栽培されている。「マリオン・ルック」はこのブラウアー・ジルヴァーナーだけを醸したワイン。土壌は貝殻石灰岩土壌。リンゴと洋梨の爽やかな風味でグリューナー・ジルヴァーナーよりもフルーティー。食材を引き立てるので和食にも合わせやすい。

最終更新 Mittwoch, 21 Juni 2017 14:25
 

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