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ワインと食の合わせ方 2 トラディショナルな組み合わせ

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長年ワインが造られてきた土地では、ワインは食事時のごく当たり前の飲み物で、地元の食材を使った郷土料理に合わせて飲まれていました。その組み合わせのいくつかは、定番として今日まで伝えられています。

中でも、フランスの伝統的な組み合わせは世界のお手本。まず思い浮かぶのは、「牡蠣」とロワール川河口地域のミュスカデ(メロン・ブラン)、ブルゴーニュ地方のシャブリ(シャルドネ)、シャンパン(ピノ・ノワール、ピノ・ムニエ、シャルドネ)の組み合わせ。「エスカルゴのブルゴーニュ風」「カエルのもも肉のソテー」には、やはりブルゴーニュ地方の白(シャルドネ、アリゴテ)。「シュークルート(ザワークラウト)」にはアルザス地方のリースリング。

赤ワインなら、ボルドー地方の赤(カベルネソーヴィニヨン、カベルネフラン、メルロ)と 「カレ・ダニョー」などの子羊料理や「ヤツメウナギのボルドー風」。ブルゴーニュ地方の赤(ピノ・ノワール)と牛肉のワイン煮込み「ブッフ・ブルギニヨン」や、ラングドック地方の赤(グルナッシュ、シラーなど)と白インゲン豆と肉の煮込み「カスレ」。鶏のワイン煮「コック・オー・ヴァン」は、ブルゴーニュの赤で煮込むものが有名ですが、各地で地元のワインが使われており、アルザス地方では「コック・オー・リースリング」と呼び、リースリングで煮込みます。「フォアグラ」は伝統的にハイクラスの甘口ワインと合わせます。ボルドー地方ソーテルヌ、南西地方モンバジヤック(いずれもセミヨン、ソーヴィニヨン・ブラン、ムスカデル)の貴腐ワイン、アルザス地方のゲヴュルツトラミーナーやピノ・グリの遅摘みワインとの組み合わせが定番です。

古代ローマ時代から美食の伝統を持つイタリアにも、無数の定番があります。よく知られているのは、ピエモンテ地方のバローロやバルバレスコ(ネビオッロ)と、「セルヴァッジーナ(=ジビエ)の煮込み」やトリュフを使った料理との組み合わせ。同地方を代表する赤ワイン、バルベラは地元で良く食べられるリゾットに最適です。トスカーナ地方の赤、キアンティ(サンジョヴェーゼ)は、軽快なものはパスタ料理やポレンタ料理、重厚なものはTボーンステーキ「ビステッカ・アラ・フィオレンティーナ」の良きパートナーです。

オーストリアでは、「ヴィーナー・シュニッツェル」や牛肉をブイヨンで煮た「ターフェルシュピッツ」にグリューナー・フェルトリーナーが定番。ドイツにもファルツ地方の「ザウマーゲン」とリースリング、フランケン地方の「ブラウエ・ツィプフェル」とジルヴァーナー、ヴュルテンベルク地方の「マウルタッシェン」と軽快な赤のトロリンガーなど様々な組み合わせがあります。リースリングはドイツの全ワイン生産地域で栽培されているため、「アイスバイン」から「カスラー」、鶏肉から川魚まで、あらゆる郷土料理と合わせて楽しまれています。シュペートブルグンダーは黒い森地方の薫製ハムや「ヴィルト(=ジビエ)」と合わせます。

ヨーロッパの定番を見ると、ドイツのように、気候、風土の関係で白ワインが多く作られている土地では、肉料理も白ワインに合う調理法が発達しているようです。フランス北部では、シャルドネ、ピノ・ノワール(=シュペートブルグンダー)などドイツと共通する品種が栽培されていますので、フランス料理にドイツ産ワインを合わせるのも面白いと思います。

※括弧内の小さな文字はそれぞれのワインに使われる品種名です。他国のワインを合わせる時の参考になさってください。

 
Weingut Johann Ruck
ヨハン・ルック醸造所(フランケン地方)

Weingut Johann Ruck

1839年創業の家族経営の醸造所。フランケン地方では、約2億5000年前の三畳紀(トリアス紀)の岩石が風化・堆積した土壌で、偉大なワインが造られている。ルック家が所有するイプホーフェン村のユリウス・エヒター・ベルクなどの畑もトリアス紀のコイパー土壌が主体だ。現在、醸造所を率いるのはハンジ&マリオン・ルック夫妻。高品質なワインの生産者として名を成した父ハンスも今なお現役。親子二代で更なる品質向上のための研究に余念がない。ルック家はドイツではまれな密植に取り組み、1ヘクタール当たり7000本のぶどうを育て、収穫量も1ヘクタール当たり50ヘクトリットルに制限している。さぞ力強いワインが誕生するかと思いきや、ルック・ワインは思いのほか繊細で優美。力強さは内に秘められている。

Weingut Johann Ruck
Marktplatz 19
97346 Iphofen
Tel. 09323-800880
www.ruckwein


2015 Blauer Silvaner trocken Marion Ruck2015 Blauer Silvaner trocken „Marion Ruck“ 8,50€
2015年ブラウアー・ジルヴァーナー「マリオン・ルック」辛口

ジルヴァーナーにはグリューナー・ジルヴァーナーとその突然変異であるブラウアー・ジルヴァーナーとがある。ブラウアー・ジルヴァーナーは果皮がほんのり黒ぶどうのように染まる希少なぶどう。マリオンの実家、ランダースアッカーのイム・ピュールベン醸造所では、1985年から栽培されている。「マリオン・ルック」はこのブラウアー・ジルヴァーナーだけを醸したワイン。土壌は貝殻石灰岩土壌。リンゴと洋梨の爽やかな風味でグリューナー・ジルヴァーナーよりもフルーティー。食材を引き立てるので和食にも合わせやすい。

 
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岩本順子(いわもとじゅんこ) 翻訳者、ライター。ハンブルク在住。ドイツとブラジルを往復しながら、主に両国の食生活、ワイン造り、生活習慣などを取材中。著書に「おいしいワインが出来た!」(講談社文庫)、「ドイツワイン、偉大なる造り手たちの肖像」(新宿書房)他。www.junkoiwamoto.com
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