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アフガン戦争とドイツの苦悩

最近アフガニスタンから流れてくるニュースは、ドイツにとって悪いものばかりだ。8月下旬には北東部のクンドゥスでパトロール中のドイツ軍兵士が、道端に仕掛けられた爆弾で殺害された。これまでドイツ軍が駐留している北東地域は、他の地域に比べて治安が良かったが、今年に入ってから抵抗勢力による攻撃が増えている。

8月28日の夜には、クンドゥスの検問所で悲惨な事件が起きた。ドイツ軍とアフガン人の警察官が共同で警戒にあたっていたところ、2台の自動車が検問所に接近。兵士と警察官たちは止まるように指示したが、車が接近し続けたので発砲した。その結果、車に乗っていた女性1人と子ども2人が死亡し、4人の子どもが重軽傷を負った。

紛争地域に展開する国際治安支援部隊(ISAF)は、停止するよう命じても車などが止まらない場合、自爆テロの危険が高いので武器の使用を許されている。市民を殺したのがアフガン人の警察官か、ドイツ兵かはまだわからない。いずれにしても、誤って婦女子を殺傷した者は一生癒えることのない心の傷を負うに違いない。

市民が犠牲になる事件は増加している。アフガン内務省の発表によると、8月末にはヘラート州で米軍が行った爆撃で、50人の子どもを含む76人の市民が死亡した。米軍にしてみれば「付近にタリバンのゲリラがいたので攻撃した」と主張するのだろうが、これだけ多数の市民が犠牲になるとは戦慄するしかない。

ドイツの左派政党や、緑の党に属する議員からは「アフガンでの汚い戦争に巻き込まれてはならない」という声が出始めている。読者の中には、「なぜドイツなどNATO(北大西洋条約機構)加盟国はアフガンで戦っているのか」と思われる方が多いだろう。最大の目的は、2001年9月11日にニューヨークとワシントンで起きたような大規模テロの再発を防ぐことだ。当時、タリバン政権はテロ組織アルカイダを保護し、ビンラディンは同国にテロリストの訓練基地を持っていた。今タリバンはパキスタンとの国境に近い地域を拠点として、アフガン全土で抵抗活動を強めている。もしも米国を中心とするISAFがアフガンから撤退した場合、タリバンが政権を奪回し、再びアルカイダがこの国を拠点として欧米に大規模なテロ攻撃をしかける危険がある。

ISAFの兵力は02年には5000人だったが、今年春には8倍の4万3000人に増えている。それでもタリバンによる攻撃は衰えず、兵士に対するテロ攻撃の数は06年からの1年間で2倍に増えた。タリバンとの戦闘任務を受け持っている米国、英国、カナダ軍の間では死傷者が増えている。このためNATOは、これまで主に平和維持や復興任務にあたってきたドイツに対して、戦闘任務も受け持つように要請している。ドイツ政府は、アフガンに駐留している兵士の数を現在の3500人から1000人増やす方針だ。かつて精強を誇ったソ連軍も、アフガンでは敗北して撤退した。ドイツと西欧諸国は、アフガン駐留が長引くほど不利な立場に追い込まれていくに違いない。

12 September 2008 Nr. 731



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著者プロフィール:熊谷徹
1959年東京生まれ。早稲田大学政経学部卒業後、NHKに入局。ワシントン支局勤務中に、ベルリンの壁崩壊、米ソ首脳会談などを取材。90年からはフリージャーナリストとしてドイツ・ミュンヘン市に在住。過去との対決、統一後のドイツの変化、欧州の政治・経済統合、安全保障問題を中心に取材、執筆を続けている。著書に「ドイツの憂鬱」、「新生ドイツの挑戦」(丸善ライブラリー)、「ドイツ病に学べ」、「住まなきゃわからないドイツ」、「びっくり先進国ドイツ」(新潮社)など。
http://www.tkumagai.de/
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