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総選挙・テレビ討論の不発


 ©www.pixelio.de
9月13日にメルケル首相(CDU)とシュタインマイヤー外相(SPD)が行ったテレビ討論会をご覧になっただろうか。

過去の選挙結果を見ると、この討論会での首相候補の態度に影響されて投票する政党を決めたという有権者は少なくない。その理由は、無党派層が増加しているからだ。最近の連邦議会選挙では、市民の30~40%が、投票日の1カ月前になってもどの政党に入れるか決めていないと言われる。それだけに、選挙直前のテレビ討論は重要なのだ。

しかし今回の討論では、「がっかりした」とか「しらけた」という声が強い。それはメルケル氏とシュタインマイヤー氏が大連立政権で同じ内閣に属しているため、政策の違いがほとんど目立たなかったからだ。

両者の意見が食い違ったのは、増税の是非、最低賃金の導入、原子力発電所の稼動年数の延長問題の3点だけ。経済危機の克服、格差社会の是正、金融機関の取締役の報酬制限、アフガニスタン派兵問題など大半の争点で2人は同じ意見だった。

教育問題や若者の犯罪について刑罰を重くするかどうか、旧東ドイツの再建などについては全く触れられなかった。膨らみつつある公共債務をどのように減らすのかについても、十分に議論されなかった。

司会を務めた4人のジャーナリストたちは、挑発的な質問をぶつけてなんとかお互いを批判させようと試みたが、メルケル氏・シュタインマイヤー氏ともに質問を巧みにかわしてライバルへの批判を避けた。相手を批判することは、自分が属する大連立政権に対する批判に繋がるからだ。2人とも「大連立政権は健闘した」と自画自賛した。

ジャーナリストの1人は、「お二人は、まるで仲の良い夫婦のようですね。いっそのこと大連立政権を続けられたらどうですか」と皮肉を言ったほどである。

番組のタイトルの中に使われた「Duell(対決)」という言葉とは裏腹に、両候補の政策の違いは浮き彫りにはならなかった。無党派層に属する人々が投票する政党を決める上で、あまり参考にはならなかったものと思われる。

米国の影響で、選挙に及ぼすマスコミの影響、とくに候補者のイメージの重要性は増す一方だ。イメージに限って言えば、メルケル首相は緊張気味でやや精彩を欠いていた。これに対しシュタインマイヤー外相は話し方に余裕を感じさせ、好感を抱いた視聴者が多かったようだ。

また、このテレビ討論会は、大連立政権がいかに不健全な状態であるかをはっきりと示した。本来ならば与党席と野党席に分かれて対決すべき2つの党が、やむをえず一緒に政権の座に就くことは、政策の違いをぼやけさせ、有権者の選挙への関心を減らすからだ。二大政党制を基本とするドイツの民主主義制度にふさわしい状態ではない。

だが最近の世論調査によると、CDU・CSU・FDPへの支持率は50%を割っている。「もはや大連立は続けたくない」と明言しているメルケル氏・シュタインマイヤー氏が最も懸念しているのは、保守、リベラルともに過半数を取れない事態だろう。

9月27日、国民はどのような審判を下すのだろうか。

25 September 2009 Nr. 784



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著者プロフィール:熊谷徹
1959年東京生まれ。早稲田大学政経学部卒業後、NHKに入局。ワシントン支局勤務中に、ベルリンの壁崩壊、米ソ首脳会談などを取材。90年からはフリージャーナリストとしてドイツ・ミュンヘン市に在住。過去との対決、統一後のドイツの変化、欧州の政治・経済統合、安全保障問題を中心に取材、執筆を続けている。著書に「ドイツの憂鬱」、「新生ドイツの挑戦」(丸善ライブラリー)、「ドイツ病に学べ」、「住まなきゃわからないドイツ」、「びっくり先進国ドイツ」(新潮社)など。
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