ドイツワインナビゲーター
土壌の姿

| 土壌の姿 |
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テロワールに畑の格付けと、このところちょっと複雑なテーマが続きましたが、本来、ぶどう畑や土壌を実際にこの目で見て新しい知識を得ることは、とても楽しいものです。 旅をしていると、おのずと建築物が目にとまります。たとえばアール地方やミッテルライン地方、ラインガウ地方、モーゼル地方を旅すると、スレート岩(粘板岩)で造られた濃い色の家をよく見かけます。そしてそのスレート岩も、黒灰色に青みがさしていたり、あるいは茶色っぽかったり、同じ岩石でも微妙に違うことがわかります。 フランケン地方やラインヘッセン地方、プファルツ地方の一部では、ほのかな赤色や黄土色など、様々な色調の砂岩で建てられた家がたくさんあります。また、ラインヘッセン地方やプファルツ地方には石灰岩で造られた家も多く、一見ブルゴーニュと見間違えてしまいそうな風景にも出会います。 今から100年以上前にそれぞれのワイン生産地で建てられた伝統的な石造りの家々は、各地方のぶどう畑の土壌そのものを現しているかのようです。ぶどう畑の土壌の奥深くの様子は、通常見ることはできませんが、古い建築物が土壌についての情報を発信してくれているのです。 ドイツのワイン生産地には散歩道やハイキング道が整備されており、ぶどう畑の間をどんどん歩いていくことができます。そのハイキングの途中に洞窟があったり、石切り場が見えたり、岩が突き出ていたり、断層が顔を出していたりするところがあると、ぶどう畑の土壌構成をいくらか知ることができます。専門ガイドと一緒にぶどう畑を歩き回り、土壌について教えてもらえるウォーキング・ツアーもあります。 私は昨年の夏、ぶどう畑に詳しいガイドと一緒にモーゼル地方をハイキングしたのですが、そのとき彼女がスレート岩の洞窟に連れて行ってくれました。地表からは風化して小さな板状になったスレートの黒っぽい石片が散らばる畑の表面しか見ることができませんが、洞窟に入ると、スレート岩の塊をちょうど真下から見上げることになります。そしてその洞窟の上に生えているぶどうの古木が、岩を突き抜けて根を生やしているのを見ることができます。私が訪れたのは暑くて乾燥がひどい時期でしたが、洞窟の中はひんやりしていて、スレート岩の天井は湿り気を帯び、地下水が滴っていました。このことから、岩場の土壌は水はけが良いこと、そして地中深いところにしっかりと地下水が確保されることがわかります。 秋には、ラインヘッセンで醸造家の友人と一緒にぶどう畑の近くの石灰岩の断層を見に行きました。上部は粘土質の土壌やレス土(黄土)などに覆われているのですが、下へ行くほど色調は白くなっていて、その石灰質の土を指先でほぐしていくと貝殻がたくさん出てきます。小指のサイズほどの牡蠣の殻や、口を閉じたままで石化し、真っ白になっているムール貝の殻も見つかり、太古の時代、本当にここが海だったことがわかります。 ぶどう畑とその周辺を歩くと、実に様々な発見があります。畑を歩き、土や石に手を触れ、造り手の労働の場という視点に立つと、ワインを違った形で楽しめるようになるかもしれません。
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著者プロフィール 岩本順子(いわもとじゅんこ):翻訳者、ライター。ハンブルク在住。ドイツとブラジルを往復しながら、主に両国の食生活、ワイン造り、生活習慣などを取材中。著書に「おいしいワインが出来た!」(講談社文庫)、「ドイツワイン、偉大なる造り手たちの肖像」(新宿書房)他。 www.junkoiwamoto.com |






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