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アフガン撤退は可能か


©Michael Sohn/AP/
Press Association Images
2010年は、アフガニスタンでの戦争に参加している国々にとって重要な年になる。今年1月、NATO(北大西洋条約機構)諸国はロンドンで開いた会議で、アフガンに駐留している部隊を3万人増強し、タリバンに対する攻勢を強めるだけでなく、アフガンの軍と警察の訓練に力を入れることを決めた。

その目的は、アフガン政府が独自に治安を維持できる態勢を1日も早く整えて、欧米諸国の早期撤退を可能にすることである。

ドイツも兵士の数を500人増やすが、来年には撤退を始めたい意向だ。欧米諸国は、「戦闘によってタリバンを撃滅し、アフガンを平定することは無理なので、面目を保ちながら早く同国から引き揚げたい」という本音を持っている。

欧米諸国が支援しているカルザイ大統領は、昨年の選挙で票を操作するなどの不正を行っていた。アフガニスタンに欧米型の民主主義を根付かせるのは極めて難しい。カルザイに代わる人材がいないために、不正選挙を行う大統領を支援せざるを得ない点は、欧米諸国の大きなジレンマだ。

アフガン問題は欧州諸国の内政にも暗い影を落としつつある。オランダでは撤退時期をめぐる議論が原因で、連立政権が崩壊してしまった。リベラル勢力にとっては、アフガンでの戦争を続けることが難しくなりつつあるのだ。ドイツではプロテスタント教会の最高指導者がアフガンからの早期撤退を求めて、注目を集めた。

ある意味で、欧米諸国はアフガンの将来について匙(さじ)を投げたと言える。だがNATOが撤退した直後にカルザイ政権が崩壊してタリバンが権力に返り咲いたら、欧米の面目は丸つぶれになる。タリバンはNATOに協力したアフガン人を処刑し、女性には働いたり学校へ行ったりすることを再び禁止するだろう。多数のアフガン人が国外脱出を図るに違いない。同国が、再びアルカイダのようなテロ組織の出撃拠点として使われる恐れもある。

こうした事態を避けるために、NATOは兵力増強によってタリバンの勢いをできるだけ弱め、アフガン政府の防衛力を高めようとしているのだ。

だが本当にNATOが望むような形の撤退が実現するかどうかは、未知数だ。今年2月にミュンヘンの安全保障会議で、米国のマケイン議員は「今年はアフガンで最も犠牲者が多くなる。我々にとって、一番厳しい年になるだろう」という悲観的な見方を示した。カルザイ大統領は「NATOは少なくとも10年はアフガンに残るべきだ」と語っている。

NATOは2月15日にアフガン軍と合同で、過去8年間で最大規模の攻勢を開始したが、今のところ大きな戦果は上がっていない。むしろNATOの誤爆によって、約50人の市民が犠牲となっている。

ドイツ連邦軍が駐留しているアフガン北東部に、米軍が大量の兵士を増員することを決めたことは、この地域の治安も急速に悪化していることを示している。ドイツ軍の兵士たちは、これまで主に基地の中などでアフガン軍や警察の訓練を行ってきた。今後は基地の外に出て地元の兵士を訓練したり、治安を維持するためのパトロールを増やしたりすることが求められる。つまりドイツ兵にとってのリスクは、これまで以上に増えるのだ。

アフガンは、イランの核兵器開発と並び、欧米諸国の国際安全保障をめぐる最大の難題となりつつある。

5 März 2010 Nr. 806



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著者プロフィール:熊谷徹
1959年東京生まれ。早稲田大学政経学部卒業後、NHKに入局。ワシントン支局勤務中に、ベルリンの壁崩壊、米ソ首脳会談などを取材。90年からはフリージャーナリストとしてドイツ・ミュンヘン市に在住。過去との対決、統一後のドイツの変化、欧州の政治・経済統合、安全保障問題を中心に取材、執筆を続けている。著書に「ドイツの憂鬱」、「新生ドイツの挑戦」(丸善ライブラリー)、「ドイツ病に学べ」、「住まなきゃわからないドイツ」、「びっくり先進国ドイツ」(新潮社)など。
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