
| QbA |
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前回、QbAという言葉を使いましたが、ドイツワインを楽しむとき、この言葉を通り過ぎてゆくことはできません。そこで、今日はこのアルファベット3文字についてお話しましょう。発音はクーベーアー、Qualitätswein bestimmter Anbaugebiet(指定生産地産・上級ワイン)の略。QbAは、ドイツワインの中で最も注目すべきカテゴリー。フランスワインの AOC、イタリアワインのDOCに相当します。 ドイツには13の認定ワイン生産地域がありますが、QbAはそれぞれの地域内で生産されるぶどうを100%使用しているため、各地域の特性がしっかりと表現されています。一方、QbAの下部カテゴリーである、ドイツ・ターフェルワイン(Deutscher Tafelwein)は、ドイツ国内のあちこちで生産されたぶどうを混醸することが認められているため、地域色や造り手の個性が表現できないワインです。でもターフェルワインの生産量はとても少なく、全生産量の3.5%、一方、QbAはドイツで一番多く生産されているカテゴリー、つまり出会う機会が一番多いワインで、全生産量の65%を占めています。 QbAとその上部カテゴリーとの決定的な違いは、「QbAには加糖が認められている」ことです。加糖と言っても、甘みを加えるのではなく、アルコール度数を補うための加糖、つまりアルコール発酵をさらに促進させるための加糖です。この技術はフランス人シャプタル氏が発明したため、シャプタリザシオンと呼ばれ、フランスでは上級ワインに認可されており、ドイツでは逆にQbA以下と決められています。 シャプタリザシオンは、ぶどうが完熟していない状態で収穫しなければならない場合に、大きな助けとなります。またぶどうの種類によっては、完熟期と前後して進行する腐敗が始まる前に収穫し、シャプタリザシオンする方が良い仕上がりになることもあります。しかし、ドイツの一流醸造所は、QbAでも、できる限りぶどうが完熟するのを待って収穫し、あまり加糖を行いません。ですから、同じQbAでも、シャプタリザシオンをしているものと、していないものがあるのです。 またQbAにも、収穫ぶどうの糖度の基準が設定されていますが、優れた醸造家たちは、その基準よりも熟したぶどうを使っています。QbAと書かれているボトルの中に、その上のランクで出荷できるワインが詰まっていることがあるのです。「うちのQbAはカビネットクラスだよ」とか「シュペートレーゼクラスだけどQbAにした」といった会話を聞かれたことがあるかもしれません。これを「格下げ」と言ったりしますが、よく考えると、ワインの格が下がっているのではなく、QbAの格が上がっているのです。QbAの値段で、上質のカビネットやシュペートレーゼが手に入るわけですから、ますますQbAに注目しないわけにはいきません。 最近では、カビネットやシュペートレーゼ、アウスレーゼといった分類は混乱のもとになると考え、QbA1種類だけを生産している醸造所もあります。このような醸造所のQbAには、シュペートレーゼ、時にはアウスレーゼクラスのワインが詰まっていると考えていいでしょう。QbAは各々の醸造所の、いわば名刺のようなもの。手軽なランクですが、醸造所の第一印象を決めてしまうワインなので、力が入っています。そして、ボトルの中に詰まったQbAのストーリーは、醸造所によって千差万別なのです。
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著者プロフィール 岩本順子(いわもとじゅんこ):翻訳者、ライター。ハンブルク在住。ドイツとブラジルを往復しながら、主に両国の食生活、ワイン造り、生活習慣などを取材中。著書に「おいしいワインが出来た!」(講談社文庫)、「ドイツワイン、偉大なる造り手たちの肖像」(新宿書房)他。 www.junkoiwamoto.com |


ナイス醸造所のグーツワイン(醸造所のスタンダードワイン)、「ブラン・デ・ノワール」は、赤ワイン品種であるシュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)の圧搾果汁を、色素を含むぶどうの皮とコンタクトさせずに発酵させている。「ブラン・デ・ノワール」とは「黒から得られる白」という意味。外観は白ワインのそれだが、味はやはりシュペートブルグンダー。爽やかな夏向きのワインです。
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