JAL
Do. 07. Jul. 2022
[PR]

祝!職人最高位・マイスター取得ドイツで挑戦する若手職人たちの夢

ものづくり大国ドイツで、今年新たに2人の日本人マイスターが誕生した。ビスポークテーラーの城田真至(まさよし)さんと整形靴職人の北川大介さんだ。マイスター取得後は日本を活動拠点に選ぶ人が多いなかで、ドイツで仕事を続けていく道を選んだおふたり。マイスターがどんな資格であるのかをはじめ、それぞれの職業やこれからの目標についてお話を伺った。(文: ドイツニュースダイジェスト編集部)

左:城田 真至さん、:北川 大介さん左:城田 真至さん、右:北川 大介さん

一人ひとりの着心地の良さを追求したい身体になじむドイツ仕立てのスーツ

城田 真至さん Masayoshi Shirota

1988年兵庫県生まれ。注文紳士服製造マイスター。日本での修行を経て、2015年からベルリンのテーラーに勤務。2021年にデュッセルドルフでマイスター取得後、工房をオープンした。

服に関するお悩みやお問い合わせは このメールアドレスは、スパムロボットから保護されています。アドレスを確認するにはJavaScriptを有効にしてください まで。
Instagram:@masayoshi_shirota
Twitter:@shirota_bespoke

クラシックで細やかな技術が特徴

取材当日も自身が仕立てたスーツに身を包んでいた城田真至さん。ビスポークテーラー(Herrenmaßschneider)と呼ばれる職業で、お客さんと話し合う(be spoken)ことで、一人ひとりに合った服作りをする。日本人でドイツの注文紳士服製造マイスターを取得したのは、城田さんが初。ドイツ仕立ての注文洋服には、どんな魅力があるのだろうか。

工房で裁断する城田さん工房で裁断する城田さん

「あまり知られていませんが、ドイツ紳士服は19世紀後半に目まぐるしい発展を遂げ、世界をリードしました。脈々と受け継がれる伝統の裁断と縫製、そして確かな素材で仕立てる、気取らないクラシックなスタイルが特徴です」と城田さんは説明する。さらに、ドイツ紳士服の強みは着心地の良さ。その秘密はどうやら、ドイツならではの仕立て技術にあるようだ。

「ドイツではほとんどが手縫い。ミシンだと一定のリズムでしか縫うことができませんが、手縫いなら強弱を付けられるため、身体を動かした時に遊びが生まれて柔らかく感じるんです。それから『クセ取り』というアイロンワークで生地に立体感を出すことで、当たりが少なく軽く感じられる服になるのですが、ドイツ仕立てではしっかりとクセを取る。そういう隠れたところにある技術で、着心地の良さを作り出しています」

さまざまな服の悩みに応えられる職人

お客さんのさまざまな目的に合わせて服を仕立ててきた城田さん。その目的を達成させるだけでなく、それ以上の価値を生むことがテーラーの仕事だと語る。日本の師であるテーラーの佐伯博史さんの「僕たちは服を売っているんじゃない、夢を売っているんだ」という言葉に影響され、そう考えるようになった。

城田さんが仕立てたスーツ城田さんが仕立てたスーツ

城田さんがこの世界に入ったのは、学生時代に「長く着られる服がほしい」と思ったことが始まり。その背景には、まだ着られるのに流行を過ぎれば着なくなってしまう「ファッション」への強い違和感があったという。その点で、注文紳士服は持続可能で現代の価値感に合っている。

さらに、人生を変える出来事が城田さんの身に起こった。バイク事故に遭い、生死をさまよったのだ。「もともと戦場ジャーナリストになるという夢がありましたが、事故で進路変更を余儀なくされて」と城田さん。葛藤の末、仕立ての道へ進むことに決めた。その後、松葉づえをつきながら専門学校で洋裁を学び、神戸のテーラーで修行を積んだ。そして幼少期より憧れていたドイツで、仕立てのプロを目指すことを決意する。ベルリンのテーラーで縫製と裁断の全てを学んだ後、デュッセルドルフのマイスター学校に入学した。

仮縫い中の婦人用コート仮縫い中の婦人用コート

晴れてマイスターとなり、「目標だと思っていた場所がスタート地点に変わりました」と話す城田さんは、この秋に工房を構えた。ビスポークスーツはもちろん、ドイツではサイズが合わないという悩みに手頃な価格で応えるべく、パターンオーダースーツも展開する予定だ。また紳士服に限らず、婦人服やお直しなど、異国の地で大切な洋服を安心して任せられる「洋服のサービスポイント」になりたいと語る。

「僕がそうだったように、病気やけがで既製の洋服が着られない人の力になりたい。身体障がい者用の服を作ることも目標の一つで、今はその研究を進めています。障がいのある人が何に困っていて、どこが痛いかなどを理解して寄り添えることも自分の強み。僕は縫うことが好きだから、この技術で誰かを幸せにできたらうれしいです」

服を通してみんなを笑顔にしたいという城田さんの挑戦は、まだ始まったばかりだ。

どんな悩みもベストな解決策に導きたいおしゃれも楽しめるドイツ仕込みの整形靴

北川 大介さん Daisuke Kitagawa

1992年兵庫県生まれ。整形靴マイスター。神戸の会社で修行を積み、2015年に渡独。マイスター取得後、バイエルン州にあるOrthopädie Müller Zentrale in Fürthの整形靴部門の工房長として勤務している。

Instagram:@daisukeshoemaker

整形靴はドイツでは身近な選択肢

「整形靴」(Orthopädische Schuhe)とは、外反母趾(がいはんぼし)や足の長さが違うなど、足に悩みのある人たちのための特別な靴のこと。それぞれの悩みに応じてオーダーメイドの靴やインソール(中敷き)を作るほか、既製品の調整などを行うのが整形靴職人の仕事だ。北川大介さんは、そんな整形靴マイスターの資格を取得した。

木型制作のため足のギプスを取る北川さん木型制作のため足のギプスを取る北川さん

日本にも整形靴があるものの、ドイツの方がずっと認知度が高いと話す北川さん。病院で処方箋を出してもらい整形靴を作ることが多いドイツでは、足の問題を解決するための身近な選択肢の一つなのだ。

「初めての処方の方には外用に2足、室内用に1足作ることができます。日本だと高価ということもあって、どんな服装にも合わせやすい茶色や黒を選びがち。一方ドイツでは、次はこの色を試してみよう、今度はスニーカーが欲しいなど、デザインを楽しむことができるんです」

もともと北川さんには、スポーツメーカーで働くという夢があった。中学は野球部、高校はサッカー部に所属し、靴に興味を持ったと続ける。

「野球のスパイクは茶色や黒しかないのに対して、サッカーではピンクやオレンジと色鮮やか。そんなかっこいいスパイクを作ってみたいなと思って」

お客さんにとって最高の靴を作る喜び

高校卒業後、スポーツメーカーへの就職を目指し、地元にある整形靴の専門学校で学び始めた北川さん。ある授業で、大きな転機を迎える。

「実際に患者さんの話を聞きながら整形靴を作るという授業があったんです。ここに問題がある、こうしてみましょう、良くなった悪くなった……と患者さんからフィードバックをもらうのですが、こうしたやり取りのある仕事が自分に合っていると思いましたし、何より楽しかったんですね。そこで整形靴の世界に行こうと決意しました」

専門学校を卒業して、神戸にある工房に就職した北川さん。そこには、ドイツ出身のマイスターであるダニエル・ウィンデルさんがいた。しかし、入社1年目に作ったインソールを無言でごみ箱に捨てられてしまうという事件が発生……。

「当時は半泣きでしたが、『俺が一から教えてあげるから』と言って、本当に一から十まで横に立って教えてくれたんです。それから、『マイスターになりたいならドイツに行け』と後押しもしてもらいました」

そうして渡独した北川さんは、ウィンデルさんが修行したバイエルン州にある企業に就職し、マイスターを目指すことになった。語学面などで苦労も多かったが、最終の実技試験では成績は2位。州旗をモチーフにした青と白の着物地を使ったデザインで、何より患者さんが喜んでくれたことが印象的だったと話す。

青と白の着物地による靴青と白の着物地による靴

「マイスター学校の授業では足の長さが違う方の靴で、長さが違う部分に桜をデザインしたことも。それを友人たちに見せると言って、とても喜んでくれました。本来はハンディキャップの部分を人に自慢できる、そんな靴を作れたと思います」

桜を散らしたデザインの靴桜を散らしたデザインの靴

マイスターを取得して、「やっと終わった」とほっとした様子の北川さん。一方で工房長として、「お客さんがベストな選択をできるように心がけて働いていきたい」と意気込む。将来的にはドイツと日本に拠点を持ち、二国間の懸け橋となるような仕事をすることが北川さんの大きな目標だ。

「日本より身近なものなので、足に悩みがある人にはぜひインソールや整形靴などの選択肢があることを知っていただきたいです。僕たちの技術で、一人でも多くの人の生活をより良いものにできたらいいなと思います」

ドイツが誇るマイスター制度Q&A

Q1.そもそも「マイスター」とは?

マイスターとは、ドイツ語圏の国家資格で日本語の「親方」に当たる。高い技術力と、後継者を育てる教育力や会社を成長させる経営力を兼ね備えた者に与えられる職人最高位の称号で、試験合格者のみが取得できる。

手工業会議所(HWK)管轄の手工業マイスターには、家具や靴、時計などの手工業分野をはじめ、製菓や製パン、ハム・ソーセージなどの食品加工分野、自動車整備士や電気設備工が分類される機械分野などがある。城田さんと北川さんが合格した手工業分野は技能試験のレベルが高く、難関とされる。2021年現在、マイスターのある業種は145種類。

Q2.マイスターになるための条件は?

マイスター学校への入学には、国家資格「ゲゼレ」を取得していることが必須。ゲゼレは日本語の「職人」に当たり、見習い期間を経て、試験に合格したスペシャリストを指す。ただし日本ですでに修行したなど、ゲゼレと同様の経験があると認められた場合は、例外的にマイスター学校への入学が認められることもある。

マイスターの試験科目は、各業種の①専門実技と②専門知識、全業種共通の③経営学・商学・法学と④職業・労働教育学の四つで、各3回まで受験可能。ほとんどの場合は、連邦奨学金(BAföG)を利用して資格取得を目指す。

Q3.マイスター取得後の進路は?

晴れてマイスターになると、進む道は大きく分けて二つある。一つは城田さんのように起業という選択。マイスターのみが開業を認められている業種もあるが、任意でマイスターの資格を取得して開業することもできる。もう一つは、北川さんのように企業に勤務する道。マイスターは管理職など重要なポストに就くことが多く、北川さんは工房長に就任した。企業内に複数のマイスターがいることも珍しくない。

また、日本人でマイスターを取得した場合は、帰国して日本に拠点を置くという選択肢も。ドイツで得た経験を生かして、国内外で日本人マイスターたちが活躍している。

 
  • このエントリーをはてなブックマークに追加


Nippon Express ドイツ・デュッセルドルフのオートジャパン 車のことなら任せて安心 習い事&スクールガイド バナー

デザイン制作
ウェブ制作