最近、晴れの日に外を歩くと、公演や庭先などあちらこちらから煙が立ち昇り、食欲をそそる匂いに誘われる。ドイツの夏の風物詩「グリレン(grillen)」。ことグリレンに関してはちょっとうるさいここドイツでは、鍋奉行ならぬ"グリレン奉行"と化す人々のグリレン好きは相当なものだ。(編集部:高橋萌)
グリレンのいろいろ
「グリレン=火を使った料理」という基本的にはシンプルかつ、原始的な調理方法。しかし、その手法や技術は発展を続け、現在に至る。まずは基本編から入門、グリレンの魅力を知っていこう。
基本編
直火焼き(160~300℃)
赤々と燃える木炭の上に食材を上げて焼く。脂肪分の少ない牛肉のステーキやハンバーグなどに適した方法。外はしっかり、中はジューシーな焼きあがりが特徴。短時間で焼きあがる(~30分)。
応用編
非直火焼き(160~200℃)
木炭から発せられる煙と熱で肉を焼き上げる方法。網の下には肉から出る脂や肉汁を受けるアルミ容器を置く。脂分の多い牛肉や豚肉、鶏肉などに適している。焼き時間は長く、2~5時間ほどかかる。
発展編
燻製(60~90℃)
香りのよい木材やスモークチップを燃やした煙を閉じ込め、肉や魚をその上に吊るし、煙でいぶす調理方法。低温で調理を続けるため、数時間から1日ほどの時間を要する。燻製された食材の保存性の高さが特徴。燻製にする前に塩漬けや乾燥などの一手間が必要。アイデア次第で様々な食材を燻製にできる。


家庭で簡単Marinade(マリネ)
肉や野菜に下味をつけるマリネは、グリレンに欠かせない調理法です。マリネとは、肉などを油漬けすることで、より柔らかくジューシーな味わいにする調理法。お店で調理済みの肉も売っているけれど、自宅で好みのスパイスを効かせてマリネを作ってみませんか。
● スパイスとオイルのマリネ
材料挽きたてのスパイス | 小さじ3~4 |
調理油 | 適量 |
搾りたてのレモン汁 | 適量 |
● ハチミツのマリネ
1. | マリネを材料を混ぜ合わせて作ったら、肉全体が隠れるように浸し、2時間~1日置く。浸す時間が長いほど、スパイスが効いた後味になります。好みで調整してみてください。 ※ マリネに塩を入れないように注意してください。塩を入れることにより、肉の水分が抜けていってしまいます。 |
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2. | 焼く直前に塩などを振り、味を調えて焼きます。 |
つぶしたニンニク | 3個 |
ハチミツ | 大さじ3 |
絞りたてのレモン汁 | 適量 |
マスタード | 大さじ4 |
スパイス(こしょうなどお好みで) | 適量 |
● 子どもも大好き!鳥の手羽焼き
1. | 手羽肉を水で洗い、キッチンペーパーで水気を取る。 |
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2. | オリーブオイルとお好みのミックススパ イス、ハチミツを混ぜたものを手羽肉に塗りつけ、冷蔵庫に入れて味を染み込ませる。 |
3. | 焼く直前、塩・こしょうとお好みでタバスコを振り掛ける。 |
手羽肉 | |
調理油 | 適量 |
塩・こしょう | 適量 |
ミックススパイス (タイムやオレガノ、ローリエなど) |
小さじ1 |
ハチミツ | 適量 |
タバスコ | 適量 |
焼き方
手羽肉を焼くときは、網の下に油を受けるアルミ容器を設置、その周りに木炭を置き、非直火熱で焼きます。 |
● ホクホク美味しい
じゃがいものアルミホイル包み焼き
1. | ベーコンの固い部分や、骨の部分を取り除き、さいの目に細かく切る。 |
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2. | パセリをみじん切りにする。 |
3. | じゃがいもをよく洗う。 |
大きめのじゃがいも |
5個
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パセリ |
適量
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サワークリーム |
200g
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バター |
50g
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ベーコン |
100g
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塩・こしょう |
適量
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作り方
1. | じゃがいもをアルミホイルで包み、40分ほど直火で焼く。 |
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2. | サワークリームと塩・こしょうを混ぜ合わせる。 |
3. | アルミ容器にベーコンを入れ、グリルの上に置き加熱する。 |
4. | じゃがいもに火が通ったらアルミホイルの上の部分だけを切り取り、そこからバターと、②のクリームを注ぎ入れる。 |
5. | ④の上に、焼きベーコンとパセリを乗せ て、出来上がり。 |
ヒント! 健康に良い グリレンのために
- 塩漬け肉、塩漬けのソーセージは避け、新鮮な肉を用意し、塩分の取りすぎを防ぐ。グリレン用の肉は、馴染みの肉屋さんや専門店で鮮度、質ともに納得のいく肉を選ぶことが望ましい。
- グリレンの場合は油を使用しないため、フライパンなどで調理したときと比べ、脂肪分、水分が15~30%カットされる。
- グリレンをするときは、肉の脂や肉汁が炭などの火の上に落ちないように注意する。脂肪分や肉汁が燃えることによって、発がん性物質が少量発生する危険性があるため、脂肪分の多い肉を焼く場合は、アルミ容器を網の下に準備し、非直火でグリレンするようにする。
- 食事が肉に偏らないように、野菜を焼いたり、サラダやフルーツを付け合せにしてバランスを取りましょう。
- 脂身の少ない肉を直火(180~300℃の高温)で短時間で焼き上げることにより、肉汁が逃げず、ジューシーで栄養価の高い肉を味わえる。
グリレンは男の料理?!
ドイツでは、グリレンパーティーの際にお肉を焼くのはもっぱら男性の役割と相場が決まっているとか。女性はサラダや肉の下準備まで終えたら、後はのんびり食事を楽しめるというわけです。普段は女性に料理を任せきりという男性諸君、グリレンのときは主導権を握り、活躍してみてはいかがでしょう?
これは邪道だ!硬派なドイツ人男性流グリレンの極意
- ① アルミホイルで肉を包み焼きするべからず
- ② やけ具合を見るために、肉を切ったり、刺したりするべからず
- ③ 軍手を使うべからず
- ④ 電気グリルを用いることなかれ
※ 上記はあくまで硬派にグリレンを決めたいという本格派の方にのみ当てはまります。
注意! グリレンの場所選びは慎重に
さすがは法律の国ドイツ。グリレンにまつわる揉め事が裁判沙汰になることもあります。
ボン
地方裁判所の判決によると、アパートの住人は暖かい季節には月に一度、バルコニーでグリレンをすることが認められる。ただし、48時間前までに隣人にその旨を通達しなければならない。
シュトゥットガルト
地方裁判所の判決によると、アパートの住人は1年に3回、2時間であれば、バルコニーでグリレンしてもよい。
ノルトライン=ヴェストファーレン/ブランデンブルク州
近隣への騒音・悪臭などによる権利侵害を罰する法律がある。違反した場合は1000ユーロ以下の罰金が課せられる。
つまり、近隣住民の迷惑が及ぶ可能性があるということで、バルコニーはあまりグリレンに適した場所ではないようです。他の人に迷惑をかけず、思う存分楽しめるように、グリレンの場所は慎重に選びましょう。
グリレンにお薦めのレジャーパーク
● Falkplatz und Mauerpark
● Volkspark Friedrichshain
● Fennpfuhlpark
ミュンヘン
● Westpark
● Ostpark
● Hirschgarten
ミュンヘン
● Nordpark Bonames
● Ostpark
● Waldspielpark Heinrich-kraft-Park
● Stadtpark
● Falkensteiner Ufer
● Alsterwiesen
デュッセルドルフ
● Freizeitpark Ulenbergerstraße
● Freizeitpark Heerdt
● Südpark
なお、ライン川沿いの広場(砂利の上)でのグリレンは認められている。
問い合わせ先:0211-8994800(デュッセルドルフ市、公園等管理局)
※上記以外の市にお住まいの方は、お住まいの市のホームページで「Grillplätze」と検索してみてください。
何を持っていく?
いざ、グリレンパーティーを企画。大勢の仲間を誘って、青空の下へ……。と、このときに何かが足りない!なんて、出だしからつまずくことのないよう、しっかり準備して臨みましょう。最低限必要なものリストです。
- グリル
- 木炭など、燃料
- 軍手
- トング
- 着火剤
- 食器
- 調味料
- 調理器具
- 食材(肉、野菜など)
- 飲み物(ビール、ジュース、ミネラル ウォーターなど)
- ロウソク、テーブルランプ
- バケツ(消火する時などに利用)
- ゴミ箱
- 救急セット(火傷やけがの対処)
- 虫除けスプレー
- ドイツニュースダイジェスト (グリレンの際のヒントが満載!グリル に入れて燃やしちゃダメ!!)