Jal2024Feb

日本との違いをしっかり解説!ドイツの歯科事情&オーラルケア

「そもそも歯医者さんに行くのが苦手」、「ドイツではすぐに歯を抜かれると聞くから不安」など、ドイツで歯科クリニックに行くのはちょっと勇気がいるものです。でも定期検診や毎日のケアを怠れば、虫歯や歯周病になってしまう可能性も……。本特集では、ドイツの歯科事情について、ドイツ在住歯科医の宮川順充先生に詳しく教えていただきました。歯の健康を保つヒントのほか、日本語で安心して通える歯科クリニックもご紹介します。(文:ドイツニュースダイジェスト編集部)

参考:本誌1005号特集「ドイツで始める正しいオーラルケア」、本誌1076号特集「ドイツの病院・医療ガイド」、本誌コラム「ドイツの歯科事情」(2015 ~ 2019年連載)

ドイツの歯科事情&オーラルケア

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ドイツの歯科クリニックに行くためのQ&A

ドイツで歯医者に通う前に、そもそも日本とどのように違うのか、どんな治療の選択肢があるのかなど、Q&A形式で解説します。

お話を聞いた人

宮川 順充先生

1995年に歯科医師の資格を取得した後、2003年から2007年までオーストリアのウィーンで勤務。2009年よりシュトゥットガルトのランドハウス歯科医院に勤務、2014年に同医院の共同経営者となる。日本人と欧州人の特徴を考慮した治療を行っている。
www.landhausstrasse.com

Q1. ドイツの歯科医療は日本とどう違う?

ドイツは保険診療と自由診療の「混合診療」

ドイツの歯科医療制度は、保険診療では足りない分を自由診療で賄う「混合診療」が基本です。保険診療費はドイツ全国一律ですが、そこに加算される自由診療費はその医療機関の裁量(技術や地域性など)によって左右されます。一般的に旧東ドイツ地域のほうが歯科医療費が低い傾向にあり、治療のためにわざわざ遠方まで足を運ぶ人も。しかし、「それでも高すぎて払えない!」という場合は、国境を越えて貨幣価値や物価の低い外国で治療を受ける人も少なくありません。なお、日本では保険診療と自由診療は完全に別々に行われています。

ドイツは保険診療と自由診療の「混合診療」

治療費の支払いは振込が一般的

日本では、治療が終わるとすぐに受付で治療費を支払うことがほとんど。一方ドイツの場合は、歯科治療費は高額になることが多く、現金でのやり取りによる紛失や盗難などのリスク回避、保険や税務関係の事情から、銀行振込が一般的になっています。ただし、小額の治療費やデンタルケア用品の購入程度であれば、クリニックで直接支払うこともあります。

自由診療では見積書がある⁉

基本的に自由診療については見積書が発行されます。日本の歯科医院で自由診療の治療(セラミッククラウンやインプラントなど)を受ける際は、ほとんどの場合は簡単な資料か口頭で金額を伝えられ、治療終了時に治療費を払って領収書をもらいます。一方ドイツでは、自由診療において治療内容や使用される材料、またそれぞれの項目についての価格を医療法の指針に沿って、明確に表記することが義務付けられています。ドイツの歯科クリニックで自由診療を受けると、見積書にサインを求められるため、特に初めて治療を受ける方は驚くかもしれません。

Q2. 治療費は保険でどこまでカバーされる?

原則的に痛みや生活に不都合がある場合

ドイツでは、痛みがあったり、生活する上で何か不都合があったりする場合は、公的健康保険であってもカバーされます。例えば、詰め物が取れてしまった場合、歯に穴が空いている状態となり、食事に支障を来すため、その応急処置として保険治療を行うという考え方です。ほかにも、検診、親知らずの抜歯、歯ぎしり用のマウスピースの作成などにも保険が適用されます。プライベート保険の場合は、プランによって適用範囲もさまざまなので、契約内容を確認してみてください。

海外滞在保険は緊急時のみ

ワーキングホリデーや語学留学などの場合は、一般的な公的健康保険やプライベート保険とは異なる海外滞在保険(海外旅行保険の長期バージョン)に加入していることが多いでしょう。海外滞在保険の場合は、夜眠れないほどの歯痛があったり、歯が欠けて食事ができなくなったり、緊急処置を要する症状でない限りは、歯科治療費はカバーされません。

デジタル化に伴って適用範囲も拡大

昨今のデジタル化に伴い、ドイツの保険システムも徐々にデジタル移行が進められており、保険の適用範囲も少しずつ拡大されています。例えば、従来は矯正の型取りにはピンク色のアルジネート印象材が使用されてきましたが、嘔吐反射などがあって型取りが難しい場合は、口腔を3Dスキャンするという選択肢があります。以前は保険診療では3Dスキャンができなかったのが、2023年7月から追加料金を支払うことで選択可能になりました。

3Dスキャンで映し出された口腔内3Dスキャンで映し出された口腔内

保険申請はアプリから可能

混合診療の治療費に関しては、最初に全額を自費で支払い、保険会社に申請して返金される仕組みになっています。一般的にそれぞれの保険会社には専用のアプリがあり、アカウントを登録し、請求書をアップロードすることで簡単に手続きが完了します。

Q3. 日本人の歯と欧州人の歯に違いはある?

日本人の歯並びはガタガタでもこもこ

一般的に日本人と欧州人では、歯並びや歯の形に大きな違いがあります。日本人の歯は、 乱杭歯 らんぐいば や八重歯をはじめ、歯並びがガタガタしていたり、表面がもこもこしてくぼみがあったりするのが特徴です。一方で、欧州人はあごの骨が大きいため、歯がしっかりと並び、表面はつるんとしています。日本人の場合、特に前歯の窪みから虫歯が発生する確率が高い傾向にあるため、念入りなケアが必要です。

日本人の矯正に慣れていない歯科医も

ドイツの歯科医が日本人やアジア人の歯に慣れていないということもしばしば。特に矯正治療では、欧州人とは異なる治療計画が必要です。そのため日本人の歯に慣れていないと、間引きのためにすぐに抜歯する傾向にあります。もし不安がある場合は、日本人歯科医や日本の患者さんが多いクリニックでセカンドオピニオンを受けることをおすすめします。遠方で難しい場合は、一時帰国時に日本の矯正歯科医に相談することも一案です。

Q4. 理想的な歯科検診の頻度は?

年2回の検診とクリーニングを!

定期的な口腔内検診とクリーニングを行うことが、歯科疾患を予防する最善の方法。どんなに丁寧に磨いていても取りきれないようなプラーク(歯垢)や歯石は、プロの手で除去してもらう必要があります。そのため検診とクリーニングは、それぞれ年2回受けることが理想的です。またクリーニングの際は、歯科衛生士が歯の磨き方などについても指導してくれます。

加入している保険によってはクリーニング費用がカバーされる。公的保険のTKの場合、年最大40ユーロが支給される加入している保険によってはクリーニング費用がカバーされる。公的保険のTKの場合、年最大40ユーロが支給される

Q5. よくあるトラブルについて知りたい!

詰め物(Zahnfüllung)やクラウン(Jacketkrone)の離脱

在独邦人が歯科クリニックに来る一番の理由は、詰め物(インレーなど)やクラウンの離脱です。離脱した際に、表に出た歯がきれいな場合は、外れたインレーやクラウンをクリニックに持っていくと、そのまま接着してくれます。ただし、インレーやクラウンが隣の歯と接触している場合は、外れてからすぐに診察を受ける必要があります。というのも、1~2週間もたつと、歯と歯が寄ってきて形が合わなくなってしまうのです。インレーやクラウンで隠れていた部分が虫歯になっていることもあるため、外れたら速やかにクリニックに行きましょう。

詰め物(Zahnfüllung)やクラウン(Jacketkrone)の離脱

虫歯(Karies)

初期の虫歯の場合は、少し削ってコンポジットレジン(樹脂)で詰め物をします。もう少し大きな虫歯であれば、セラミックやジルコニアなどの金属(日本の銀歯に使用されるパラジウムはドイツでは使用禁止)を用います。セラミックや金属は保険が利かず、価格はピンキリです。虫歯が深くなれば、さらに高額な費用がかかる根管治療(後述)が必要になります。また、インレーやクラウンの接着面の隙間などから細菌が入ると、外側から虫歯を発見できなかったり、金属製の場合はエックス線で撮影しても中が見えないため、痛みが出るまで虫歯と分からなかったりすることも。

歯周病(Parodontitis)

進行した歯周病になると通常のクリーニングだけでは不十分なため、局所麻酔を行った上で、歯周ポケット(歯と歯茎の隙間)の奥深くまで入り込んだ細菌を除去するディープスケーリングを行います。歯科医に歯周病と診断された場合は、公的保険でもディープスケーリングの費用がカバーされます。また、歯周病は遺伝性もあるため、家族に歯周病の方がいる場合は特に注意が必要です。

根管治療(Wurzelkanalbehandlung)

虫歯が進行して感染範囲が広がると、神経を抜かなければならない可能性が高くなります。根管治療に必要な通院回数は2~3回(感染が深い場合には3~4回)、治療に必要な時間は前歯で約1.5時間、奥歯では3~5時間ほどかかります。基本的に自由診療で、ドイツの歯科医院では一般的に前歯で500~1000ユーロ、奥歯で1200~2000ユーロの治療費を設定しているところが多いようです(歯冠部の治療費は含まない)。

親知らず(Weisheitszähne)

特に痛みがなくても、親知らずは虫歯や歯周病などの問題を起こしやすいため、後々のことを考えて抜歯を勧められることが多いです。ドイツでは一度に全部の親知らずを抜くことがほとんどですが、一度に数本の抜歯は精神的・体力的にも負担が大きいという方には、全身麻酔(正確には静脈内鎮静法。麻酔中も意識があり、気持ち良く酔ったような感覚になる)を行います。親知らずの抜歯後に頬が腫れることがあり、翌日は仕事どころではなくなるケースも。抜歯直後に病欠を取る人も少なくありません。

歯ぎしり(Zähneknirschen)

慢性的なストレスを抱えている人は夜間の歯ぎしり(ブラキシズム)が強い傾向にあるため、顎が痛くなったり、歯が染みたりするなどの症状が現れやすくなります。また、ブラキシズムによってインレーやクラウンが外れてしまうことも。ブラキシズムの対応策としては、「歯ぎしり用マウスピース」(Knirscherschiene)の使用が選択肢の一つです。保険が適用されますが、さらに自費で費用を追加することでより自分に合ったマウスピースを作ることができます。

Q6. ドイツの矯正治療について教えて!

18歳未満であれば保険が適用される

18歳の誕生日前日までに矯正治療(Kieferorthopädie)をスタートできれば、保険が適用されますが、全ての人でカバーされるわけではありません。ドイツにはKIGといわれる歯科矯正用の不正 咬合 こうごう (悪いかみ合わせ)の判断基準があり、歯のガタガタや出っ歯、受け口などに対してカテゴリ別に1~5のポイントを付けていきます(1が最高)。あくまで目安ですが、このポイントでおおよそ3~4より悪いポイントが付くと、保険がきくという仕組みです(カテゴリによって基準が異なる)。ただし、保険の金額だけでは全ての治療費を賄えないため、足が出た分を自費で払う混合診療が一般的になっています。

18歳未満であれば保険が適用される

治療する場合は十分な期間を設けて

一般的に矯正治療の期間は、1年半~2年と長くなります。例えば、ドイツで治療をスタートさせて日本に本帰国してからも治療の継続は可能です。しかしブラケット装置が日本にないメーカーのものであれば、別のものに付け替える必要があり、費用がかさむ上、治療期間が長くなることも想定されます。また、同じ歯科医が最初から最後まで対応した方が、元の状態や経過を見ながらより良い治療ができる傾向に。特に駐在などでドイツ滞在期間が限られる場合は、本帰国してから治療を開始するのが望ましいでしょう。

Q7. ブリッジインプラント、どちらがいい?

ドイツではインプラントが年々増加

抜歯するなどして歯がなくなった場合、ブリッジとインプラントが選択肢になります。例えばブリッジの場合は、歯が生えていた場所の両隣の歯を削り、その2本に渡す形でかぶせ物をします。この方法は安価で済みますが、両隣の健康な歯を削る必要があり、本来は3本の歯で支えていたところを2本のみで支えるため、両隣の歯の寿命が短くなる傾向にあります。インプラントは費用はかかりますが、成功率は90%超といわれるほど確実性の高い治療方法です。重要なのは、かみ合わせを上手に調整することで、これは担当する歯科医の腕にかかっています。インプラントはスウェーデン発祥で、ドイツでは年々インプラントを入れる人が増えており、日本よりも身近な選択肢といえるでしょう。

ブリッジブリッジ

インプラントインプラント

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毎日のオーラルケアでしっかり予防歯科を!

歯科治療費が高額なドイツでは、自身の健康を守ることに加えて将来的な出費を抑えるためにも、予防歯科をしっかり行うことが大切にされています。毎日実践できるオーラルケアのポイントを伝授していただきました!

POINT 1デンタルフロスを使う!

デンタルフロスは、日本では「糸ようじ」という名称でなじみがあるかもしれません。夜寝る前の歯磨きタイムに全ての歯と歯の間をデンタルフロスで清掃するだけで、虫歯と歯周病のリスクを大きく下げることができます。痛みや出血を伴うことがありますが、これは細菌感染によって歯肉が炎症を引き起こしているから。毎日正しく使用すれば、2週間後には細菌数が劇的に減少するため、痛みや出血はほとんどなくなります。歯科衛生士さんに使用方法を教えてもらうとより効果的です。個人的なおすすめは、dmブランドの「DONTODENT Zahnseide Sensitiv Floss」。いろいろな製品を試してみた結果、これが一番使い心地が良く清掃性が高い上に値段もお手頃です。

デンタルフロスを使う

POINT 2電動歯ブラシは磨き方に注意

電動歯ブラシのヘッドには横長タイプと丸タイプがありますが、歯並びがガタガタしている人は丸タイプだとより細やかに磨くことができます。電動歯ブラシで大事なことは、その使い方。間違った使い方の典型例は、普通の歯ブラシのように磨いてしまうことです。普通の歯ブラシは、シャカシャカと手を動かすことで毛に引っ掛かった汚れをはじく仕組みですが、電動歯ブラシはヘッドが振動することによって汚れを落とします。つまり、手を動かさずに歯に2~3秒当てるだけで良いのです。電動歯ブラシの二大ブランドにはOral-BSonicareがあり、スイスのメーカーによるHydrosonicもその性能の良さから利用者が増えています。

POINT 3歯磨き粉は特別なものでなくてOK

歯磨き粉には、「虫歯予防」や「ホワイトニング」など異なった用途が表示されているので、どれを買えば良いのか迷ってしまうのも当然です。個人的な見解ですが、誤解を恐れずに言うと、どれもそれほど変わりません。日常的に使用する歯磨き粉は特別なものでなくても十分。日頃の歯ブラシとデンタルフロスの使用が何よりも重要です。ちなみに、外出先などで歯磨きの代わりにデンタルリンスを使う方もいますが、実はデンタルリンス単体では口がすっきりとするだけで、実際の口腔内ではそれほど殺菌効果は期待できません。デンタルリンスは、必ず歯磨きをした後に使うようにしましょう。

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