From Staff 特別編
月刊化を迎えて
編集部座談会
1994年のドイツニュースダイジェスト創刊から32年。月刊化という大きな節目を迎えるに当たり、編集部の沖島、土井、岡島の3人があらためてこれまでの道のりを振り返ると共に、これからのドイツニュースダイジェストについて語り合いました。 (文:ドイツニュースダイジェスト編集部)
沖島
2011年にフランスニュースダイジェスト入社。ドイツニュースダイジェスト編集長。
土井
ベルリンに恋して渡独。2018年からドイツニュースダイジェスト編集部員。
岡島
2019年からドイツニュースダイジェスト編集部員。現在はライプツィヒ在住。
それぞれのニュースダイジェストとの出会い
沖島:私はもともとドイツでジャーナリズムを勉強していましたが、家族の都合でフランスに移りました。そこでフランスニュースダイジェストを知り、2010年からライターとして関わり始め、2011年1月に正式に入社。その後、2014年にフランス版を休刊することになり、ドイツニュースダイジェストに異動しました。
これまでの仕事で特に印象に残っているのは、2012年に姉妹誌であるドイツ語フリーペーパー「JAPANDIGEST」の定期発行を始めたとき。当時、社員の中でも「本当にできるのか」と議論になりました。JAPANDIGESTのウェブサイトを開設するタイミングで初めてドイツ人スタッフを雇ったのも大きな出来事でした。これまで日本人が作っていた雑誌に、ドイツ人の視点が加わったことで、ドイツニュースダイジェスト・JAPANDIGEST両方の幅が広がったと思います。
土井:私は2018年6月にドイツニュースダイジェストに入社しました。実は日本で大学生をしていたころ、授業でニュースダイジェストの記事が紹介されていたことがありました。当時は気づいていませんでしたが、それが最初の接点でした。
その後、学生時代に訪れたベルリンに住んでみたいと思い、日本でライフスタイル誌の編集者として経験を積んだ後、2016年10月にベルリンで暮らし始めました。2018年3月に当時の社員の方と出会い、その数週間後にはニュースダイジェストの拠点であるデュッセルドルフに面接のため足を運んでいたという感じです。ベルリンは今も大好きですが、気づけばデュッセルドルフ生活の方が長くなりました。今では、ニュースダイジェストは私のドイツ生活になくてはならない存在です。
編集部の日常①
Eスクーターがドイツで解禁された2019年夏、1105号特集「EスクーターのABC」の取材のため試乗!(岡島)
岡島:私はもともとベルリンの大学院で芸術学を学んでいましたが、ちょうどその頃は、ベルリンの家賃高騰で住む場所を見つけるのが難しくなってきていて、この先どうしようかなと考えていました。そんななか、先輩編集者である土井さんと出会って初めてデュッセルドルフに行き、2019年8月から編集者としてドイツニュースダイジェストで働いています。
もともとデュッセルドルフに住んでいましたが、再び学業のためにライプツィヒに引っ越すことに。リモートで働くようになったのですが、これまであまり取り上げられなかったドイツ東部地域の取材も積極的に行うようになりました。2024年には妊娠・出産を経験しましたが、編集部お二人のバックアップもあり、子育てしながら変わらず誌面作りを楽しませてもらっています。
編集部の日常②
出産後の岡島を訪ねてライプツィヒへ!(沖島・土井)
思い出に残る号、記事、人
岡島:ニュースダイジェストは創刊からしばらく週刊新聞で、2012年〜昨年12月までは隔週(年に24回)で発行していました。単純計算だと、私は約150冊、土井さんは約180冊、沖島さんは約360冊の編集に関わったことになります。その中で特に思い出に残る号はありますか?
沖島 土井 ……(ありすぎて考え中)。
岡島:では、私から話してみます(笑)。入社1年目を振り返ってみると、とにかく土井さんとがむしゃらに特集を作っていて、純粋に楽しかった記憶があります。例えば5ページの特集があったとして、私が1ページ目と4〜5ページを担当し、土井さんが2〜3ページを担当する。それでお互いの原稿を突き合わせてみると、何だかお互いの原稿が響き合っていてうれしくなる。1108号・1109号「ベルリンの壁崩壊30周年記念特集」や、1114号「ベートーヴェン生誕250周年記念」などが記憶に残っています。
読み返してみると、もう少しこうできたのになとか、肩の力が入っているな、というものもあるんですが、同時にすごく熱量を感じる。今はむしろ経験を積んで質は上がっていると思うので、月刊化をしていく上でも、あらためて純粋なものづくりの楽しさを大切にしていきたいなと思う今日このごろです。
編集部の日常③
1182号特集「ザイフェンの木工おもちゃに会いにいく」では、くるみ割り人形の生産地であるドイツ東部の村ザイフェンで職人さんたちを取材(岡島)
土井:岡島さんがそう思ってくれていることを、知らなかったわけではないですが、単純にすごくうれしいです。当時は、私も先輩としていろいろ教えなきゃと思っていたんですが、いつの間にか自分も一緒に楽しくなっていました。連載「ドイツの逸品」でドレスデナー・シュトレンを紹介する記事を入社したての岡島さんに書いてもらったとき、「バターがたっぷり」という表現が3回くらい出てきていて、「この人本当にバターが好きなんだな」と思って。それを私が指摘して、二人でゲラゲラ笑いましたね。
岡島:土井さん、そのエピソード何回も言ってきますよね(笑)。
土井: はい、何回でも言います(笑)。さて、最近だと、1248号「都市ガイドシリーズ⑮ロストックの魅力再発見!」を制作するのが本当に楽しかったです。この都市ガイドシリーズは2022年から続けていますが、2025年からはドイツ政府観光局にご支援いただき、現地での取材をもとに制作させてもらっています。ダース半島を自転車でめぐる取材は体力的にも大変でしたが、今の自分だから作れる記事になったと思います。
岡島さんの「バターがたっぷり」もそうですし、ロストックの取材もそうですが、記事の中に人柄が出ることや、実際にその場に行って見たこと・感じたことをまとめるというのは、これからの時代にもっと大切にしていきたいと感じました。
編集部の日常④
1248号特集「ロストックの魅力再発見!」の取材のため訪れたダース半島のビーチ(土井)
沖島: 連載でいうと、中村真人さんの「ベルリン発掘の散歩術」は、読むと本当にその場に行った気分になれますよね。私は特に、1121号掲載の「マレーネ・ディートリヒの美に酔って」が好きです。熱狂的なディートリヒのファンである高橋さん(掲載当時87歳)が、人生をかけて追い求めたディートリヒへの愛が伝わってくる、大変印象的な記事でした。
土井:ニュースダイジェストの良さは、編集者・ライターさん・読者の距離の近さにもありますね。読者が友人であり、知り合いであり、同じ悩みを共有する仲間でもある。知り合いから、誌面で紹介した内容について「実際にあそこに行ったよ」とか「これを買ってみたよ」と言われることも多々あります。あるいは連載「Dr.馬場の診察室」では、以前私が馬場先生とのやりとりの中で坐骨神経痛に悩んでいるとお話したことがあったのですが、それをテーマにしてくださったことがあります(笑)。
編集部の日常⑤
毎年5 月にデュッセルドルフで開催される「日本デー」は、ニュースダイジェストにとっても読者と直接会える貴重な機会です(土井)
岡島:ほかにも、1218号「ドイツの小学校入学準備ガイド」や1226号「ドイツで初めての妊娠・出産」などは読者へのアンケートをもとに制作していますが、現地生活者ならではの喜びや苦労、葛藤がにじんでいて、いつも回答を読むだけで泣きそうになります。
AI時代のニュースダイジェストの役割とは
沖島:実際に現地生活者として、自分が疑問に思ったことをすぐ企画にできたり、同じくドイツに住む日本人と悩みを共有したりできるというのは、編集者としてとても恵まれた環境ですね。特に最近では、SNSやAIの登場によって情報が溢れかえっているので、ネットで拾えるニュースではなく、実際にコミュニティにとって役立つ生活情報や体験談がうちの強みになると思います。
岡島:本当にそうですね。というのも、本号の特集「欧州で暮らす私たちとメディアの距離感」は、読者の方々に情報との向き合い方のヒントをお届けすることが主な企画意図でしたが、裏テーマには「私たち編集部がこれからすべき仕事は何か」ということがありました。AIに頼めばすぐにそれらしい記事を書いてもらえるようになり、果たして編集者の仕事はなくなってしまうのか? メディアの未来はどうなるのか? という、作り手として抱える不安や葛藤に向き合う時間にもなりました。
沖島:1257号の特集「欧州で暮らす私たちとメディアの距離感」での村井明日香さんへのインタビューには、英独編集部全員で参加させてもらいましたね。村井さんは英国滞在中に英国ニュースダイジェストを読んでくださっていたこともあり、インタビューの後半では、自分たちの制作者としての悩みや疑問を共有させていただき、ご意見をいただくなどとても勉強になりました。そのなかであらためて「意志を持った編集」ということの重要性を感じました。
編集部の日常⑥
1209号特集「パリオリンピック 2024」の発行後、現地で観戦もしました!(沖島)
土井:それはもちろん、誌面の編集だけに限りません。例えば最近、インスタグラム(@pickup_doitsu)の投稿に力を入れていますが、そのなかでドイツのニュースにまつわる投稿へのフォロワーさんたちの反応がいいことに気づきました。
沖島:そもそも名前が「ドイツニュースダイジェスト」ですしね。読者の方々が私たちの「ニュース」の部分に信頼を置いてくださっているのは、創刊当時から変わらないのかもしれません。
土井:私たちはドイツ生活のキラキラした側面ばかりを見せる必要はなくて、自分たちの目線でキュレーションしたドイツ語のニュースをしっかりとした日本語で届ける。それは創刊当時からの使命であり、32年間受け継いできたものです。AIの台頭に不安になる部分もあるけど、私たちにできることはまだまだあると思います。
岡島:AIとの差別化ということでいえば、あらためて「一次情報の価値」を大切にしていきたいと思います。例えば連載「私の街のレポーター」で各地のレポーターさんが書いてくださる記事の中は、日本語で検索しても出てこないような情報だらけなんです。
レポーターさんにはいつも、「ネット上には『ドイツのおすすめ○選』といった記事が山ほどあるから、それよりも、ご自身が実際にその場にいて何をどう感じたのか、どういう感情がそこで生まれたのか、ということを知りたい」とお伝えしています。さまざまな背景や個性を持った方々がレポーターを務めてくださっていて、一読者としても大好きなコーナーです。ほかでは得られないローカルでパーソナルな声もしっかり取り上げていきたいです。
「全ては知ることから始まる」
岡島:月刊化するに当たり、どうしても「速報性」という意味ではネットには叶いません。SNSやウェブサイトを使ってそこを補いつつも、誌面ではより深く読み込める記事をもっと作っていきたいですね。ページ数もこれまでより増えるので、一つの号のなかで複数の視点から特集を組むことができるようになり、よりドイツを立体的に感じていただけたらうれしいです。
土井:あとは、読者の声をもっと知りたいです。私たちは三人とも文化や芸術が好きだったり、一緒に誌面を作るなかで似てきている部分もあると思うので、もっとこういう切り口がある、こういう情報を知りたい、というような声を聞きたい。先ほども言ったように、ライターさんや読者の皆さんとの距離がとても近いので、インスタライブや読者会などのよりインタラクティブな機会を増やしたいですね。そうした出会いのなかで、ゲスト的に読者の方に記事を執筆いただいたりするのも面白いかもしれません。
沖島:編集部では、月刊化に当たって私たちが目指す方向性を言葉にする作業を進めてきました。そのなかで読者に届けたいメッセージの一つは「全ては知ることから始まる」ということ。まずはニュースダイジェストを通して、ドイツのニュースや文化、社会、政治、経済、生活を知る。そして、知ったことで実際に行動してみたり、ドイツをより深く理解できたり、生活がより豊かになったり。そういう「知ることの先」まで一緒に届けられる誌面作りを目指したいと思っています。
編集部一同 これからのドイツニュースダイジェストに、どうぞご期待ください!
●編集部からのお知らせ●
月刊化第一号の発行を記念して、1月 14日(水)21時(ドイツ時間)
からインスタライブを開催予定です。ぜひご参加ください! https://www.instagram.com/pickup_doitsu



インベスト・イン・ババリア
スケッチブック






