まもなく迎える新緑の初夏。教会の傍を通りかかれば、永遠の愛を誓い合う花嫁・花婿の姿を見かける機会も増えるだろう。そこで浮かぶのが、「ドイツでの結婚式ってどんなもの?」という素朴な疑問。今号では、ずばりドイツでドイツ人のパートナーと結婚する予定の人、あるいは「ドイツで結婚式を挙げたい!」と夢見る人たちのために、ドイツの結婚式の基本情報をお届けしよう。(編集部:林 康子)
ドイツで「結婚式」と言えば、戸籍役場でのものと、教会で行われるものの2通りある。戸籍役場での挙式によって法的な婚姻関係が成立するようになったのは、フランス革命の影響で政教分離の概念が発展した後の19世紀後半から。それまでは、教会での結婚式によって正式な婚姻が認められていた。したがってこの国では今なお、戸籍役場での挙式の後(同日もしくは別の日)に教会で結婚式を挙げるケースが多いのだ。
戸籍役場での結婚式
Standesamtliche Trauung
戸籍役場(Standesamt)のみで結婚式を挙げるにせよ、教会とダブルで結婚式を挙げるにせよ、結婚をすると決めたら、まずは戸籍役場に申請する必要がある。それは、ドイツで1998年7月1日から適用されている法規定「書面婚姻申請(Schriftliche Anmeldung zur Eheschließung)」に定められているもので、戸籍役場での希望挙式予定日の6カ月前から、当事者のどちらか一方が居住する戸籍役場、もしくは国内のいずれかの役場を選んで必要書類を提出するという仕組みだ。
結婚式当日、当事者の2人は戸籍役場に出向き、担当係官(Standesbeamte)の前で「この2人が婚姻関係を結ぶ」という内容が書かれた書面「婚姻証明書(Heiratsurkunde)」に署名する。役場の一室で行われる20分程度の儀式であるため、ごく近い親族のみを招くケースが多い。日本からの親族が出席する場合には、係官の式辞の内容が理解できるよう、通訳を付けることも大事なポイントだ。
結婚する2人が、ともにドイツ国籍で初婚なら手続きは簡単だが、国籍がドイツ以外の場合、様々な書類の提出を求められる(場合によっては下記以外のものも)ので、あらかじめ当該の戸籍役場に必要書類について問い合わせよう。
戸籍役場への婚姻申請の費用は連邦一律で、両者ともにドイツ国籍の場合は33ユーロ、一方が外国籍の場合は55ユーロ、また居住地以外の戸籍役場で挙式する場合はこのおよそ倍の手数料が掛かる。また式後、新しい家族として作成する「家族籍本(Familienstammbuch)」に婚姻証明書のコピーを貼り付けたい場合は、別途費用が掛かる。婚姻後90日以内に在独日本大使館・総領事館に婚姻証明書、戸籍謄本を提出し、日本の本籍地の役所に連絡してもらう。同手続きについては、日本大使館・総領事館に問い合わせよう。
教会での挙式
Kirchliche Trauung
カトリック教会では婚姻は神の恩寵を表現する儀式、サクラメント(秘跡)の1つと理解されており、戸籍役場での結婚式の後、教会で挙式をして初めて婚姻が認められる。結婚を誓ったカップルは、婚姻の非解消、子どもをもうけることの承諾、子孫の育成など、カトリック教会の基本信念を受け入れることになる。一方、プロテスタント教会における結婚式は婚姻の非解消を誓うことを除き、カトリック教会より世俗的な祝祭の意味合いが強い。
当事者の一方がカトリック教徒、もう一方がプロテスタント教徒の場合、混合形式の「全キリスト教の結婚式(Ökumenische Trauung)」を挙げることが可能。カトリックの教会を選んだ場合はプロテスタントの牧師の下でカトリック様式にて、プロテスタントの教会ではカトリックの司祭の下でプロテスタント様式で執り行われる。
また、一方はカトリックだが、相手が無宗派の場合、カトリック様式の結婚式を行うためには司祭に特免(Dispens)を請い、その際にカトリックの基本信念に沿った婚姻関係を築くことを誓約する必要がある。
教会の結婚式では、式の前に“Traugespräch”と呼ばれる講義の時間が持たれる。これは司祭/牧師が結婚を控えた夫婦に対し、教会における結婚の意味、教会での結婚式の目的、式当日の進行スケジュールについて説明をするというもの。そして当日はまず、司祭/牧師に先導されて夫婦が祭壇の前に進み出る。その後、カトリックとプロテスタントで順番は多少異なるものの、司祭/牧師による説教、挙式、祝福の祈り、合唱などが行われる。プロテスタント教会では、歌や教会の装飾などの1部を花嫁・花婿自身が決めることができる。
ドイツ人パートナーとドイツで婚姻関係を結ぶ場合
- 身分証明書 (Personalausweis)
- 出生証明書 (Geburtsurkunde)
- 戸籍抄本 (Auszüge aus dem Familienbuch der Eltern)
- 住民登録証明書 (Aufenthaltsbescheinigung des zuständigen Einwohnermeldeamtes)
- パスポート
- 戸籍謄本(ドイツの出生証明書に相当)
- 婚姻要件具備証明書(婚姻資格証明書。地方法務局、本籍地の市・区役所や市町村役場で発行される。証明書には結婚相手の名前を記載してもらう)
- 住民登録証明書(ドイツ在住の場合。日本在住の場合は日本の住民票)
- 上記書類のアポスティーユ(公印確認申請書/Apostille。認証翻訳取得前に日本の外務省にて申請。これにより駐日外国領事による認証がなくても、同領事の認証があるものと同等のものとして、提出先国(地域)で使用できる)
- 上記日本語書類の認証翻訳(在日ドイツ大使館・総領事館指定の翻訳者によるもの)
ドイツ人のパートナーとの結婚後、ドイツで生活を始めるにあたり、まず把握しておきたいのが滞在許可。また新しく家庭を築くのだから、当然名前をどうするかも検討しなければならない。姓については、戸籍役場にて婚姻申請の際に希望を申し出ることになる。
ドイツ人との婚姻後の滞在条件
婚姻後は3年間の滞在許可が付与され、その後、国外追放理由がなければ無期限の滞在許可が下りる。労働許可は滞在許可の付与と同時に申請が可能となり、無期限の滞在許可が与えられれば、別途労働許可を得なくても労働の自由が与えられる。なお、国籍はドイツ人の配偶者になっても変わらないが、帰化の申請には婚姻後最低3年が必要。その後、帰化手続きを経てドイツ国籍を取得することになる。帰化した場合、日本国籍はなくなる。
姓の選択
ドイツの法律では、①婚姻後にどちらか一方の配偶者の姓を名乗る、②どちらか一方がダブルネームを名乗る、③それぞれ婚姻前の姓を継承するという3パターンから選択できるが、双方がダブルネームを名乗ることはできないようになっている。③の別姓を選択した場合、婚姻後の5年間は共通の姓に変更することができる。なお、子どもの姓にダブルネームは使用できず、どちらかを選択する必要がある。
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ドイツには結婚式の前夜、古い生活に別れを告げ、新たな人生の門出を友人たちと盛大に祝う風習がある。ただ、翌日の挙式に寝不足の2日酔いで出席なんてことにならないよう、何日か前に行うカップルが多いようだ。
ポルターアーベント
Polterabend
結婚式前夜、2人を祝福するために友人・知人が花嫁宅に集まって玄関のドアに陶器の食器をぶつけ、その破片を2人が協力して片付けるという行事。これから結婚生活を始める2人の初めての共同作業が粉々になった食器の「後片付け」とは、なんとも荒々しい祝福方法だが、食器の割れる音が悪霊を追い払い、幸運を運ぶとの言い伝えもあるそうだ。ポルターアーベント用の食器は、古物を扱う陶器店やデパートの陶器売り場などで販売されている。
独身最後のパーティー
Junggesellenabschied
ドイツでは週末の夜、同じ格好をして街を練り歩く数人の集団を見かけることがある。そう、これが独身最後のパーティーだ。米国では「バチェラーパーティー」、英国では「スタッグナイト(男性)」「ヘンズナイト(女性)」と呼ばれ、パートナー抜きで、親しい友達同士で遠慮なく羽目を外して大騒ぎできる最後のチャンス。花嫁・花婿の友人たちが企画し、ディナーの後、街の居酒屋やディスコをはしごする。
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夢に描いた2人の幸せな新婚生活に、悪霊や悪運が忍び込んでしまってはたまらない。そのため、花嫁・花婿が教会に入る際は右足から、花嫁は自宅から式場に向かうときに後ろを振り返ってはだめ、教会から2人が出る時にその間に誰か別の人が入ってはだめなど、古くから様々な縁起担ぎの風習や言い伝えがある。迷信だと侮ることなかれ。実際に試してみたら、本当に2人に永遠の幸運が訪れるかもしれない。
ヴァージンロードの花びら
花嫁・花婿が挙式を終えて教会から出る際、小さな男の子と女の子が花びらを撒きながら彼らを先導するのは、豊饒(ほうじょう)と幸福の象徴とされている。
2人で障害を乗り越える
2人でノコギリを使って太い木の枝や幹を切り落としたり、巨大な布に描かれたハートの型をはさみで切ってくり抜いたり……。これらの共同作業には、2人が新生活で困難を乗り越えられるようにという意味が込められている。
新居に入るときは……
結婚式の後、初めて2人の新居に入る際に花婿が花嫁を抱えて敷居をまたぐのは、敷居の下で花嫁の幸せを妬みながら待ち構えている悪霊に触れないようにするため。また、新居に用意されている水と塩のかかったパンを2人で分け合い、花嫁が空のグラスを左肩越しに後方へ投げて割る行為は、幸運をもたらすと言われる。
結婚式後のドライブ
式後、晴れて夫婦になった2人はライスシャワーで祝福を受け、豪華な飾りの施された車に乗って市内を周遊。このとき、クラクションを鳴らしながら走るのは昔の礼砲の名残とされている。車の後部バンパーに紐で空き缶を括りつけ、カラカラと音を立てながら走るのも、悪霊払いのためだそう。
式場予約や招待状作りに始まり、披露宴会場のデコレーションなど細部にまで神経を使う結婚式の準備。ただでさえ大忙しなのに、それが日本とは勝手が違うドイツでとなったら、そのストレスは計り知れない。ここでは、ドイツで結婚を準備するにあたって知っておくと便利な情報をご紹介。
指輪
始まりと終わりがない、永遠を意味するリングのように、2人の結婚生活も決して終わることがないようにとの願いが込められている結婚指輪。使われる素材もプラチナやダイヤモンドなど高貴なものが多く、その希少性や耐久性が真実の愛を反映するとも言われている。ドイツでは近年、ホワイトゴールドやレッドゴールド、イエローゴールドなど、金、銀、パラジウム、銅などの素材を掛け合わせたビコロール(2色)の指輪が人気とか。ちなみに、ドイツでは右指の薬指に着けるのが通例となっている。
ウェディングドレス
今も昔も、純白のドレスは花嫁になる女性の憧れの存在。現在では、場所や祝い方、季節などの要素を考慮し、シンプルなものから豪華に飾られたものまで様々なモデルが登場している。選ぶ基準は、丸1日着ても窮屈さを感じず着崩れしないこと、ダンスを予定している場合はそれに適していることなど。ウェディング衣装専門店で相談してみるというのも1つの手だ。戸籍役場の結婚式のみという場合には、女性はシンプルなワンピースやパンツスーツ、男性はスーツやジャケットという控えめな格好でもOK。
プレゼント
招待客にとって1番頭を悩ませるのがプレゼント。そこでドイツでは、招待状を出す際に希望のプレゼントを伝える習慣がある。主催の2人が欲しいプレゼントのリストを作成し、それをどのゲストからもらいたいかを決めて招待状に同封する。また、デパートや専門店で「プレゼント・テーブル(Geschenktisch)」を設置して欲しいものを並べ、ゲストはその店に行って結婚する2人の名前が書かれたテーブルからどれかを選んで贈るという方法もある。こうすれば、同じプレゼントを複数もらう可能性もなくなる。
記念写真
プロに頼む金銭的余裕がなければ、参加予定の家族や親しい友人の1人に専属のカメラマン役をお願いしよう。また、あらかじめ撮影ポイントを想定しておくことが大切。戸籍役場の婚姻室や婚姻契約書にサインをする姿、その後のキスシーン、ゲストが祝福する様子、司祭/牧師、出席者全員の集合写真の場所、披露宴の様子など後々振り返って式を思い起こせるようなショットを考えよう。なお、教会内ではフラッシュ撮影が可能かどうかを教会に確認しておくことを忘れずに。
ウェディング・プランナー
結婚式は誰もが知っているセレモニーだけど、実際に自分が主役となると何から始めたら良いのか分からないという人は多いだろう。そこで心強い味方となってくれるのがウェディング・プランナーだ。予算から戸籍役場や教会での挙式、ウェディングケーキ、披露宴のセッティングまで、すべてを取り仕切ってくれる。インターネットで“Fest- und Hochzeitsservice”などの単語を検索してみよう。結婚式のイロハを知り尽くしているので、安心してスムーズな進行を任せられる。
結婚式の費用
ウェディングドレスを購入するのか、レンタルにするのか、披露宴には何人のゲストを呼ぶのかなどによって婚礼費用はまちまちだが、例えば約60人のゲストを呼ぶ場合、ドイツでは平均1万~1万5000ユーロの総費用が掛かると言われている。仮に見積もりを出してみたいなら、挙式、披露宴、衣装、ヘアメイクなど、必要コストを入力して総費用を計算できるウェブサイトを利用してみよう。
www.unsertag.de/tipps/kosten.html www.ellviva.de/Liebe/Hochzeitskosten.html
結婚式の見本市 Hochzeitsmesse
最新の結婚式事情を知りたいならここ。国内6都市*で年1回行われる結婚式の見本市「Trau Dich!」では、ウェディングドレスから結婚指輪、アクセサリー・メーカー、レストラン、旅行会社、婚姻関係の専門弁護士、戸籍役場までウェディング業界のありとあらゆる関係者が集まる。
さらに、期間中はウェディングドレスショーやメイクアップショー、結婚式用音楽のライブ演奏、ダンスの講座、婚姻に関わる法律講座など多彩なプログラムが用意されている。ここを訪れるだけで結婚式の計画はバッチリ!
www.traudich.de
*ハンブルク、ケルンでは11月6日(土)~7日(日)、ミュンヘンでは11月13日(土)~14日(日)に開催予定。(シュトットガルト、デュッセルドルフ、フランクフルトでの次回開催は2011年1月)
年月を重ねれば重ねるほどに深みが出てくる夫婦の“味“。それは、2人で人生の苦楽を共にするからこそ醸し出されるものと言えよう。結婚生活の節目を祝うことで、またその絆を確かめ合うこともできる。ドイツではどんな結婚記念日が祝われるのだろうか。
1年目:紙 / 木綿の結婚式
Papier- oder Baumwollenhochzeit
まだまだ新婚の夫婦に木綿のハンカチのような実用的なものを贈る。
3年目:皮の結婚式
Lederhochzeit
夫婦仲が引っ張ってもちぎれないくらい頑丈なものになったら、皮製のアクセサリーを贈る。
5年目:木の結婚式
Holzhochzeit
夫婦仲が安定し、永続的なものだと思えるようになったら、木製のプレゼントを贈る。
7年目:銅婚式
Kupferhochzeit
夫婦仲が安定し、永続的なものだと思えるようになったら、木製のプレゼントを贈る。
15年目:スミレ・ガラス・水晶の結婚式
Veilchen-, Glas- oder Kristallhochzeit
男女の関係は透明、明白でなければならない。それまでの結婚生活の中で割ってしまったガラスの食器などを贈る。
20年目:陶器/いばらの結婚式
Porzellan- oder Dornenhochzeit
光り輝いていると同時に、敏感で傷付きやすくなっている夫婦。新しい食器を使うとき。
25年目:銀婚式
Silberne Hochzeit
四半世紀が経った結婚生活。その価値が改めて証明されるとき。
30年目:真珠の結婚式
Perlenhochzeit
夫婦として過ごす1年1年は、まるで真珠が1つ1つ紡がれてネックレスになるようなもの。夫が妻に新しい真珠のネックレスを贈っても良い頃合い。
35年目:麻の結婚式
Leinenhochzeit
丈夫な麻のように強固になった夫婦の絆。でも消耗して痛んでいる部分も。クローゼットを新しい洋服で満たすとき。
40年目:ルビーの結婚式
Rubinhochzeit
愛の炎は今だ燃え続けている。結婚指輪を愛と炎の象徴であるルビーで飾ると良いとき。
50年目:金婚式
Goldene Hochzeit
金のように長く持ちこたえてきた夫婦。その絆は不動で貴重なものであることが証明された。ここで新しい結婚指輪に変える夫婦もいる。













