ジャパンダイジェスト

ドイツで初めての妊娠&出産
産前産後の
準備リスト

言葉も習慣も違う国で、自分が生きていくだけでも戸惑いの連続なのに、
新たな命を授かり、産み育てることの不安はそれ以上だ。
妊娠・出産のプロセスは人類共通のものだけど、
それに伴う仕組みや制度、環境は、日本とドイツで大きく異なる。
まだ見ぬ我が子に会うため、1コマ1コマゆっくり進んでいこう!

情報協力:フランクフルト医療通訳・赤池美香さん、デュッセルドルフ助産師・高野彩織さん
取材・文:高橋 萌

妊娠初期(1~12週)

妊娠の判定!

妊娠検査薬(Schwangerschaftstest)で陽性反応が出たら、産婦人科医院(Gynäkologie, Frauenarzt)で診察を受けます。赤ちゃんの心拍が確認され、正常な妊娠と判定されると手渡されるのが母親手帳。妊娠したという実感が湧く瞬間です!

母親手帳
母親手帳(Mutterpass)
日本の母子手帳との一番の違いは、母親の妊娠の経過を記録するカルテの役割を果たすこと。医師が記録するもので、母親が記入する欄はありません。これさえあれば、緊急時にどこの病院でも受け入れてもらえます。肌身離さず携帯を。

妊婦検診(Schwangerschafts-Vorsorge)

通常、31週までは月1回、32週からは2週間に1回、出産予定日を過ぎると2日に1回の妊婦検診が行われます。週数 (Schwangerschaftswoche=SSW)の数え方が日本とドイツでは違い、0週目から始まる日本と、1週目から始まるドイツとの間には1週間のずれがあります。

助産師(Hebamme)を探す

ドイツでは、ヘバメと呼ばれる助産師が、お産の際に大きな役割を果たします。病院を退院した後に予期せぬトラブルやストレスを抱えることが多いので、産後の一定期間、自宅に来てくれるヘバメの存在 が心強い!ドイツでは昨今、ヘバメ不足が深刻化しているので、出産する病院を探すより先に、ヘバメ探しを始めましょう。病院や www.kidsgo.de などの両親向けポータルサイトにある「Hebammenliste (ヘバメのリスト)」をご参考に。

つわりと食事制限

妊娠初期のハイライトともいえるのが、つわりとの闘い。これは世界共通の認識。食事制限の項目もほぼ一緒で、特に寄生虫「トキソプラズマ」の感染予防のため、肉も魚もチーズも「生もの」はNG。乳製品は「pasteurisierte Milch」という加熱殺菌された牛乳を使用したものを選びましょう。ちなみに、日本では厳格な指導があるという体重制限の話は、最終的に10kg以上増えた筆者に対しても一度もありませんでした!

出産費用は?
ドイツでは、出産までに最低限必要とされる費用はすべて公的疾病保険でカバーされます。有料となるのは、胎児の染色体異常のスクリーニング検査や規定以上の超音波検診など、追加で行う検査や、入院の際に個室または家族部屋を選んだ際の入院費、規定以上の産前産後のケア(ヨガや鍼治療など)を受けた場合などです。
ドイツで不妊治療
ドイツの公的疾病保険に入っている場合、法的に結婚している25歳以上の男女(女性は40歳、男性は50歳まで)は、高度不妊治療(人工授精、体外受精、顕微授精)においても保険適応を受けられます(一部自己負担)。不妊治療は高額なイメージがありますが、個々のケースでかなり差があるそう。「不妊」の文字が頭をよぎったら、まずはいち早く受診することが可能性を広げます。

妊娠中期(13~28週)

出産する病院を選ぶ

ドイツでは、妊婦検診を産婦人科医院で行い、分娩は病院で行うという分業制が一般的。そのため、どこの病院で産むかは、希望するバースプランやリスク、自宅からの距離なども考慮に入れて選びます。どの病院でも、分娩室の見学会(kreißsaalführung)を行っています。病院に出産 の予約申し込みをするのは、出産予定日の1カ月前からという病院が多い。

出産準備講座(Geburtsvorbereitungskurs)

妊娠から出産、赤ちゃんの世話の仕方など、妊婦やパートナーを参加対象に各病院や助産師が開催する講座。コースの開催期間にもよりますが、参加人数が限られているので妊娠10~20週の間に申し込んでおきましょう。

保育園や幼稚園を探し始める

職場復帰を予定している場合は、産まれる前から子どもの預け先を探し始めます。ドイツでも待機児童の問題があり、両親が共働きだとしても、公立の保育園に優先的に入園できるかどうかは運(とコネ?)次第。申し込み方法は、青年局 (Jugendamt)に問い合わせましょう。

赤ちゃんを迎える準備

ベビーカーベビーベッドやベビーカー、おむつ台など、準備するべきものはたくさんあります。そして、生後すぐに出生届を出すドイツでは、赤ちゃんの名前も前もって考えておくと良いでしょう。ドイツでは、名付けに関して戸籍役場(Standesamt)が子どもの不利益にならないようにと目を光らせているため、キラキラネームが流行ることはなさそうです。

病院の種類
●病院(Krankenhaus)
病院の規模、小児科の有無、自然分娩や母乳育児への積極性などがポイント
●助産院(Geburtshaus)
リスクの高い出産には適さない。薬剤を使わず、自然なお産をサポート
●その他、自宅出産(Hausgeburt)や産前の検診を担当した医師や助産師が付き添う出産(Beleggeburt)もある

妊娠後期(29~40週)

入院バッグ(Kliniktasche)の準備

妊娠後期に入ったら、入院バッグを準備。日本の入院バッグとほとんど同じですが、入院中の赤ちゃんの衣服やおむつ、その他のケア用品、母親用の母乳パッド、産褥(さんじょく)ナプキンと使い捨てパンツなどは病院に揃っています。

母親手当(Mutterschaftsgeld)の申請

働く女性は、出産予定日の6週間前から8週間後まで母親手当の受給権があり、手取り給与額が満額保障されます。疾病保険組合から1日13ユーロ、それ以外は会社から支払われます。出産予定日の7週間前を切ったら、「die Bescheinigung über den mutmaßlichen Entbindungstermin」という出産予定日を証明する書類を産婦人科から発行してもらい、申請書類と併せて疾病保険組合(プライベート保険の場合は Bundesversicherungsamt へ)に提出。

産後の申請書類の準備

産後は想像以上に机に向かう時間がありません。両親手当(Elterngeld)や子ども手当(Kindergeld)など、産後すぐに申請しなければならない各種申請用紙は、埋められる限り記入しておきます。

失業中や専業主婦の場合は?
● 母親手当:失業中の女性も受給でき、金額は失業手当と同額。専業主婦は受給権がない。
● 両親手当:失業中でも専業主婦でも、月額300ユーロは受給権がある場合が多い。
● 子ども手当:失業中でも専業主婦でも、受給権あり。第1子は月額188ユーロ

ドイツでの出生届の準備

ドイツで出産する場合、日本人夫婦の子どもでも、まずドイツで出生届を提出します。必要書類の中に、「婚姻証明(Heiratsurkunde)」がありますが、これは日本にはない書類です。まずは日本から戸籍謄本の原本(3カ月有効)を取り寄せ、これを根拠に大使館や領事館でドイツ語の婚姻証明を作成してもらいます。出産予定日の1カ月前までに戸籍謄本を取り寄せ、準備しておくと良いでしょう。婚姻関係にないパートナーの場合は、父親による認知(Vaterschaftsanerkennung)と親権宣言(Sorgeerklärung)が必要になります。

おまもり
日本から送ってもらいたい出産アイテム
● 安産のお守り ● 骨盤ベルト ● ペットボトルストロー

入院

出産の兆候を感じたら病院へ

規則的な陣痛、破水、出血など、出産の兆候や不安な症状がみられたら、入院バッグを持って病院へ。緊急の場合以外、一般的に問い合わせ先は分娩室。病院によっては直接、分娩室に来るよう指示。

出産のスタイル

ドイツの病院・産院では、好きな姿勢で産めるフリースタイルの自然出産(Natürliche Geburt)が一般的です。水中分娩(Wassergeburt)を希望する場合、対応していない病院もあるので注意。覚えておきたい単語は、吸引分娩(Saugglockengeburt)や帝王切開(Kaiserschnitt)、誘発分娩(Geburtseinleitung)。

無痛分娩という選択

ドイツでは無痛分娩(硬膜外麻酔=PDA)も保険でカバーされます。お産当日、どうしても陣痛に耐えられないという場合に、病院での出産であれば対応可能。分娩予約の際などに、PDAについての書類をもらっておきましょう。PDAを強く希望する場合は、入院後早めにそのことを助産師らに伝えます。ただし、お産の経過によってはPDAを受けられないこともあります。

出産おめでとう!

出産!!

カンガルーケア(Bonding)

ついに出産のときを迎えたら、へその緒がついた状態ですぐに母親の胸の上に。多くの病院で、カンガルーケアの母子に与えるメリットが重視されています。後産で胎盤が出たら見せてくれ、会陰は溶ける糸で縫合。

へその緒はどうする?

日本では、へその緒を桐の箱に入れて大事に保管しますが、ドイツではそういった習慣はありません。立会い出産した父親が切ることが多いので、長めに切ったり、前もって「へその緒を10cmください」と伝え、病院側に日本の習慣について説明しておくと良いでしょう。同じように、産湯の習慣もないので、日本の風習に則ったバースプランを実現したい場合は、しっかり相談しておきましょう。

母子同室

産後はすぐに母子同室となり、さっそく赤ちゃんの世話が始まります。短い入院期間中、病院の対応はあっさりしたもの。助けが必要な場面、困ったときは、積極的に看護師に声を掛けましょう。病院の夕食は、黒パンとハム&チーズという粗食で、お祝い膳が出る日本の病院とは違います。母乳を出すにも栄養が必要なので、筆者はおにぎりなどの差し入れを家族や友人にお願いしました。

入院中の写真撮影

プロのカメラマンが赤ちゃんの写真を撮りに来ることがあります。後日、印刷の注文をするシステムが多いようです。地域の新聞社が撮影に来ることも。

出生届は入院中に

出生届は、入院中に病院へ提出するか、7日以内に戸籍役場に提出します。病院からもらった出生届 の用紙に記入し、日本人夫婦の場合、婚姻証明、両親のパスポートと滞在許可証を持って届け出ます(市によっては、日本の戸籍謄本のドイツ語訳も)。出生証明書(Geburtsurkunde)は、ドイツ語版1通、インターナショナル版は3~6通必要となります。

退院へ

ドイツの入院期間は短く、自然分娩で2~3日、帝王切開で4日(体調によって延長可能)。赤ちゃんが2回目の新生児検診(U2)を受け、母子共に問題がなければ退院です。子育てのしおり、子ども手帳 (Kinder-Untersuchungsheft)、母子手帳、日照時間が少ないドイツで処方される赤ちゃん用のビタミンD(処方せんの場合も)などを持って帰宅します。

ベビーベッド

退院後

ヘバメによる自宅訪問ケア

入院中に、退院後の自宅訪問の日取りをヘバメと決めておきます。ヘバメによる自宅でのケアは、産後最長8週間、36回まで公的保険でカバーされます。赤ちゃんの発育の様子、産後の傷、授乳指導や沐浴指導、そして何より育児の不安や悩みを打ち明けられる相談相手として、精神面の支えになってくれます。

日本の出生届

ドイツの出生証明書が手元に届いたら、日本への出生届を産後3カ月以内に行います。出生証明書2通、パスポート、出生情報(出生日時、病院の住所)、戸籍謄本の写しを持って大使館または領事館へ行き、出生届2通と出生証明書の和訳文1通を記入して提出。

母親手当、産後の申請

産後8週間分の母親手当を受給するための手続きは、まず出生証明書の中にある「Geburtsbescheinigung für Mutterschaftshilfe」という書類を送り、後から送られてくる申請書類に記入して、それを返送します。

両親手当と育児休暇の申請

産後3年以内に取得できる育児休暇(Elternzeit)は、開始の8週間前までに、職場に書面で申請します。父親が取得する場合も同じです。両親手当は、出生証明書と申請書類や所得証明などを管轄の課に提出。

子ども手当の申請

子どもが生まれた月から18歳(学生の場合25歳)まで支給されます。子ども手当の申請にも出生証明書が必要。こちらは申請書と必要書類を労働局の家族公庫(Famili enkasse)に提出。

子どもの保険の契約

生まれた瞬間から健康保険が適用され、法定健康保険では、子どもは無料で家族加入ができます。保険カードが1カ月検診に間に合わなくても、後から自己負担分を請求できます。

パスポートパスポート、ビザの申請

日本の出生届が受理され、戸籍に反映されたことを本籍地の役場に確認後、最新の戸籍謄本を取り寄せて子どものパスポートを申請。パスポートができる時期を見計らって、外国人局でビザの申請手続きも進めます。

産後のコースの申し込み

産後8~10週後からの参加が勧められている産 褥体操(Rückbildungsgymnastik)や、ベビーマッサージのコースに参加するのも良いでしょう。近くに親や親戚、頼れる人がいない状況は不安なものです。同じ境遇の新米ママが集まるコースは、楽しい情報交換の場に。

1カ月検診と産後検診

子どもの1カ月検診(U3)は、退院後すぐに小児科医に予約。産後、疲弊した身体のまま突入した育児生活は自信を持てるようなものではなく、検診後に小児科医から「特に問題ないですよ」という言葉を聞いたとき、心底ほっとしたことを覚えています。また、ドイツの産後検診は産後6週間後。出産前に通っていた産婦人科に行き、改めて出産の報告をして、妊娠・出産生活は一区切り。

 
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