各都市の魅力を発見!
16の州からなる
ドイツの多様性・地方性
16の州からなるドイツは連邦制をとっているため、州によって法律や祝日が異なってくる。そのため、各州ごとに個性があるのが特徴の一つだ。日本では主要都市を中心に発達しているが、ドイツでは各地域ごとに文化や食、交通網が発達し、その地に根付いている。そんなドイツの多様性、地域性についてどんな特色があるのか、その魅力を発見してみよう。
(編集部:栗原ちひろ)
各地方の魅力、新発見!
16の州からなるドイツ。その特徴は東西南北それぞれ個性豊か。
そんな各地の基本情報や名物料理、特有の言葉を紹介しよう。

北部に属する州
- 1シュレスヴィヒ=ホルシュタイン州(州都:キール)
Schleswig-Holstein(Kiel) - 2自由ハンザ都市ハンブルク(州都:ハンブルク)
Freie und Hansestadt Hamburg(Hamburg) - 3メクレンブルク= フォアポンメルン州(州都:シュヴェリーン)
Mecklenburg-Vorpommern(Schwerin) - 4ニーダーザクセン州(州都:ハノーファー)
Niedersachsen(Hannover) - 5自由ハンザ都市ブレーメン(州都:ブレーメン)
Freie Hansestadt Bremen(Bremen)
左)ハンブルクのニューシンボル、エルプフィルハーモニー
右)デンマークに近いキールの街並みは、北欧を思わせる
国内で唯一海に面している北部。エルプフィルハーモニーが完成したばかりのハンブルクや、バルト海に面したキール、数多くの淡水湖に囲まれたシュヴェリーン、CeBIT(セビット)やハノーファーメッセなど世界的にも有名な見本市が開催されるハノーファー、ロマンチック街道の終点でグリム童話「ブレーメンの音楽隊」でおなじみのブレーメンが州都となる5つの州からなる。アンゲラ・メルケル首相(ハンブルク)をはじめ、故ヘルムート・シュミット元首相(ハンブルク)、シャネルのデザイナー、カール・ラガーフェルド(ハンブルク)などの出身地。郷土料理には船乗りが生み出した塩漬け肉にニシンの酢漬けや赤ビーツ、ピクルスを添えたラプスカウス(Labskaus)や、ケール煮込みとピンケルソーセージをはじめ、うなぎの燻製やスープ、カレイのムニエルなど魚メインの料理も多い。
ドイツ北部の方言
- Moin(=Guten Morgen, Guten Tag)
おはよう、こんにちは(ハンブルク)
※あいさつ全般で使われる言葉。親しい人にはMoin moinと2回続けていう事も - Schipp(=Schiff)
船(北部) - Klönschnack(=formlose Unterhaltung)
心地良い会話(ハンブルク)
東部に属する州
- 6ベルリン(州都:ベルリン)
Berlin(Berlin) - 7ブランデンブルク州(州都:ポツダム) Brandenburg(Potsdam)
Freie und Hansestadt Hamburg(Hamburg) - 8ザクセン=アンハルト州(州都:マクデブルク)
Sachsen-Anhalt(Magdeburg) - 9ザクセン自由州(州都:ドレスデン)
Freistaat Sachsen(Dresden) - 10テューリンゲン自由州(州都:エアフルト)
Freistaat Thüringen(Erfurt)
左)ドイツの首都、ベルリンのシンボル、ブランデンブルク門
右)エルベ川沿いの情緒溢れる街並みが美しいドレスデン
インターナショナルで、多くのアーティストが暮らす刺激的な街、ベルリンを中心に、ポツダム宣言の地であるポツダム、エルベ川のフィレンツェと呼ばれる美しい古都ドレスデン、宗教改革を行ったマルティン・ルターが通ったエアフルト大学を要するエアフルトが州都となる5つの州からなる東部。画家のゲルハルト・リヒター(ドレスデン)や写真家のアンドレアス・グルスキー(ライプツィヒ)、画家のオットー・ディクス(ゲーラ)など名だたるドイツの芸術家が生まれたのもこの地方。ベルリン発祥のソウルフード、カリーブルスト(Currywurst)をはじめ、ベルリン風仔牛のレバー焼き (Kalbsleber, Berliner Art)、アイスバイン(Eisbein)、アイアーシェッケ(Eierschecke)などの郷土料理がある。
出身者・暮らしている人のコメント
- ドイツの中でもとりわけ起伏に富んだ歴史を歩んできた街だけに、そこに住む人もある種肝が据わっているというのでしょうか。自分が体験したことを、大げさな身振りをしながらではなく、独特のユーモアと皮肉を交えて語るのがベルリーナーらしいなと思います。(ベルリン在住者)
- チェコとの国境に山岳地帯が広がる東部地域では、ザウアーブラーテンなど濃厚な料理が有名。また、山岳地帯の木工芸品には高い技術力があり、そのクリスマス飾りがとても愛らしいです。ルター派信仰の土地で新教特有の祝日があるのもこの地方の特徴。(ドレスデン在住者)
ドイツ東部の方言
- Icke(=Ich)
私(ベルリン)※ドイツ語辞書「DUDEN」に今年から掲載 - kiek'n, Kieka(=gucken)
見る、のぞく(ベルリン) - No(=Ja)
はい(ドレスデン)
※肯定の返事「ヤー」は「ノ」と返ってくる。決して「いいえ」ではないので要注意!
西部に属する州
- 11ノルトライン=ヴェストファーレン州(州都:デュッセルドルフ)
Nordrhein-Westfalen(Düsseldorf) - 12ヘッセン州(州都:ヴィースバーデン)
Hessen(Wiesbaden) - 13ラインラント=プファルツ州(州都:マインツ)
Rheinland-Pfalz(Mainz) - 14ザールラント州(州都:ザールブリュッケン)
Saarland(Saarbrücken)
左)欧州金融機関の中心地であるフランクフルトには高層ビルが立ち並ぶ
右)白ワインの有名な産地であるライン川沿いの地域は、雄大な景色が魅力
欧州のほぼ中心に位置するドイツ西部は、多くの日本人が暮らすデュッセルドルフ、フランクフルトに近接し、豊かなワインの地としても知られるヴィースバーデン、活字印刷技術が生まれたマインツ、世界で初めて登録された産業遺産、フェルクリンゲン製鉄所が近郊にあるザールブリュッケンが州都となる4つの州からなる。作曲家のベートーヴェン(ボン)、グリム童話の生みの親であるグリム兄弟(ハーナウ)、詩人のゲーテ(フランクフルト・アム・マイン)、活版印刷の発明者ヨハネス・グーテンベルク(マインツ)、哲学者で経済学者であったカール・マルクス(トリアー)が生まれたのもこの地。フラムクーヘン(Flammkuchen)、玉ねぎケーキ(Zwiebelkuchen)、グリーンソースじゃがいもとゆで卵添え(Grüne Sauce)などが、この地域の有名な郷土料理。
出身者・暮らしている人のコメント
- フランクフルトは金融の街という硬いイメージを持たれがちですが、美術館や博物館も多く、さまざまなアートが楽しめます。また、ドイツ料理レストランでアプフェルヴァイン(りんご酒)を頼まないと「帰れ!」といわれます(もちろん冗談だと思いますが)。(フランクフルト出身・在住者)
- ケルンの人達は開放的で友好的です。飲み屋に一人で行って、10分後に誰とも会話をしていなかったら、そこはケルンではありません!(ケルン在住者)
ドイツ西部の方言
- Et kütt wie et kütt!(=Es kommt wie es kommt)
なるようになるさ!(ケルン) - Morsche(=Guten Morgen)
おはよう(フランクフルト) - Handkäse mit Musik(=Handkäse)
ハンドケーゼ(フランクフルト)
※チーズと玉ねぎの愛称がマッチして音楽を奏でているようなイメージから
南部に属する州
- 15バーデン=ヴュルテンベルク州(州都:シュトゥットガルト)
Baden-Württemberg(Stuttgart) - 16バイエルン自由州(州都:ミュンヘン)
Freistaat Bayern(München)
左)世界最大のビール祭り、ミュンヘンの「オクトーバーフェスト」
右)シュトゥットガルトの街のシンボルでもある宮殿広場
毎年恒例のビールの祭典「オクトーバーフェスト」の開催地で、サッカーの強豪FCバイエルン・ミュンヘンの本拠地であるミュンヘン、メルセデス・ベンツやポルシェなどの自動車大手の本社が置かれており、世界最大のクリスマスマーケットが行われるシュトゥットガルトが州都の2つの州からなる南部。物理学者で相対性理論を発表したアルベルト・アインシュタイン(ウルム)や、サッカー選手のトーマス・ミュラー(ヴァイルハイム)、建築家のフライ・オットー(シュトゥットガルト)、自動車部品メーカー、ロバート・ボッシュの創設者であり発明家のロバート・ボッシュ(シュトゥットガルト)などがこの地方の出身。白ソーセージ(Weißwurst)やニュルンベルクソーセージ(Nürnberger Bratwurst)、シュバイネハクセ(Schweinshaxe)などの郷土料理がよく知られている。
左)観光名所の一つであるノイシュバンシュタイン城
右)世界一有名なニュルンベルクのクリスマスマーケット
出身者・暮らしている人のコメント
- 郷土愛が強く、この土地に暮らすことに誇りを持っています。プレッツェルの間にバターを挟んだ「バタープレッツェル」が有名。プレッツェルを半分にスライスするのがなかなか難しい、高度な技術を要する料理です。(ミュンヘン近郊在住者)
- 上品で良い人が多いです。ただ、独自の文化が発展していること、自分の暮らしている地域に誇りを持っている人が多いので、ドイツ人でも別の地域から来た人は、最初は馴染むのに苦労するかもしれません。(ミュンヘン出身者)
ドイツ西部の方言
- pfiat di(=Tschüs)
またね(ミュンヘン近郊の町) - Gaudi(=Spaß, Vergnügen)
楽しみ!(ミュンヘン近郊の町) - Semmel(=Brötchen)
丸い小型のパン(ミュンヘン)
ドイツ、方言の多様性
ドイツには東西南北だけでは分けることができない、その地域特有の方言や言葉が存在している。ドイツ語標準語を「Hochdeutsch」と呼び、最も「Hochdeutsch」に近い言葉を話すのがニーダーザクセン州だといわれている。この標準語は、宗教改革者のマルティン・ルターの活動により、1500年代に完成した聖書の翻訳やドイツ語文法書・辞書、主にテレビで使われている舞台ドイツ語などに使用されるようになり、17世紀半ば頃から全国に浸透していったそうだ。
また、それぞれの地方の特徴としては、南部バイエルン州のミュンヘンなど大都市では標準語が使われることが一般的だが、南下するにつれ、訛りは強くなる傾向にある。西部にはケルンやヘッセン、東部ならベルリン、北部なら低ザクセン語などそれぞれ独特な訛りや方言を持っており、ドイツのテレビ番組(特に街頭インタビュー)では、公用語であるにも関わらず字幕が付けられることもしばしば。ドイツではそれぞれ皆が自分が暮らす地域の方言に誇りを持っていることも特徴だ。
ドイツ人が選ぶ最もセクシーなドイツ語方言
- 1位 バイエルンの方言(Bayerisch)
- 2位 オーストリアの方言(Österreichisch)
- 3位 ドイツ北部の方言(Norddeutsch)
- 4位 ケルンの方言(Kölsch)
- 5位 スイスの方言(Schweizerisch)
参照・参考:FriendScout24「Die beliebtesten Dialekte der Deutschen」
多くのドイツ人がバイエルン州の訛りをセクシーだと感じているそう。また14歳~19歳の若者にとっては地域色の強い方言は魅力的に感じない傾向がある
出身者・暮らしている人のコメント