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ドレスデン討論の赤いボックス

先頃、ドレスデン・ノイシュタット地区のハウプト通りの中ほどにあるマルクトハレ(Markthalle)の前に、「ドレスデン討論(Dresdner Debatte)」と書かれた真っ赤なコンテナが突如出現しました。その名の通り、ドレスデン中心部の都市計画について、市民も議論に参加していきましょうという企画です。市の都市計画局が主催するこのコンテナは「ボックス」と呼ばれ、9月中旬から約1カ月間設置されました。

多くの観光客や地元の住民が行き交う場所に突如出現したボックス
多くの観光客や地元の住民が行き交う場所に突如出現したボックス

1945年の爆撃と東独時代を経たドレスデンは、1990年代初頭からようやくかつての姿を取り戻してきましたが、都市計画においては散発的な開発やディベロッパー任せではなく、行政の役割がはっきりしています。ドイツと日本は共に大規模な爆撃を受けた敗戦国ですが、戦後の都市計画に関する両国の行政主導権の有無には大きな違いがありました。ドレスデンでは2006年の市生誕800周年を機に都市計画シンポジウムが初開催され、07年には新たな構想が市民に示されました。

「ドレスデン討論」はその一貫であり、今年の対象地区はアウグスト強王の黄金の騎馬像からアルベルト広場にまで広がる「内側の新市街(InnereNeustadt)」でした。ボックスの中には、東独時代のプラッテンバウと呼ばれるプレハブ住宅を一部撤去して分断されていた道を開通させることについての是非、歩行者と自転車が行き交う幅広いハウプト通りの利用ルール、現在では専ら交通に利用されている広場の活性化など、課題ごとに現在の写真と変更後のイメージ写真、平面図を載せたパンフレットが準備されており、その意気込みには驚きました。オンラインでも意見を募り、寄せられた意見はかなりの数に上ったそうです。

ボックスの内部。これまでの歩みや今後の計画などが整然と掲示されています 
ボックスの内部。
これまでの歩みや今後の計画などが整然と掲示されています

ボックスの前には新市街の地図のボードが置かれ、「居心地が良い場所」には緑のピン、「快適とは感じられない場所」には赤いピンを刺すことによって、居心地指数の地図を市民たち自身が作り上げるようになっていました。私も買い物帰りに寄ってピンを刺してみましたが、それだけで十分議論に参加した気分になれます。教会前の石畳と緑が美しい広場は緑のピンだらけ、大きな交差点の一角は赤いピンだらけ。私1人ではなく、ほかの市民も同様に感じていたことは、大きな発見でした。

ボックスの案内書には「何が好きですか? 何が気に入りませんか?」と記載されていますが、都市計画はこの「好き」「嫌い」という直感から始まるべきなのかもしれません。

福田陽子さん福田陽子
横浜出身。2005年からドレスデン在住。ドイツ人建築家の夫と娘と4人暮らしの建築ジャーナリスト。好奇心が向くままブログ「monster studio」公開中。
http://yoyodiary.blog.shinobi.jp/
 
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