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エルベ川の橋が開通

8月24日、ドレスデン市内を流れるエルベ川に架かるヴァルトシュレスヒェン橋(Waldschlößchenbrücke)の開通式が行われました。この橋がある場所を含むドレスデン・エルベ渓谷は、2004年にユネスコの世界文化遺産に登録されましたが、渋滞緩和を目的としたこの橋の建設計画が発表されるや否や、「景観を損ねる」という理由で登録抹消の騒ぎとなりました。

ドレスデン市内中心部には、アウグスト橋(Augustusbrücke)、そのすぐ東にカローラ橋(Carolabrücke)とアルバート橋(Albertbrücke)があり、その次の「青い奇跡」ことロシュヴィッツ橋(Loschwitzer Brücke)までの4km強の間には橋がありませんでした。そこで、ヴァルトシュレスヒェン橋がアルバート橋とロシュヴィッツ橋の間に建設されたのです。それ以前は既存の橋が慢性的に渋滞しており、アウグスト橋はイベント開催などによる通行止めが多いため、日常の交通経路としては頼みにはならず、1893年に落成した鉄骨造のロシュヴィッツ橋は、16トンという重量制限を設けて維持管理が行われている現役の橋とは言え、今後30年以上耐えられるかどうかという程のご老体。これらの事情から、世界遺産の登録抹消という現実を突き付けられても、ヴァルトシュレスヒェン橋が建設されるに至ったことは、理解に難くありません。

ヴァルトシュレスヒェン橋
大勢の人でごった返すヴァルトシュレスヒェン橋

近年、文化財や自然の保護に対する意識が高まり、そのための制度が整えられつつありますが、人々の生活がこれらの保護を理由に我慢の限界を著しく超えるものであってはなりません。さらに、新しいものへの不安から来る拒絶反応は、どうしても付きまといます。巨大な鉄の塊であるエッフェル塔が出来た当時、文化人を含め、市民の拒絶反応は凄まじかったそうですが、現在ではエッフェル塔のないパリは想像できません。さて、ヴァルトシュレスヒェン橋は景観を損ねているでしょうか。

遠くからは、弧を描く1本の線とアーチだけに見えます。構造と構法の粋を集めた結果、細く美しい橋に仕上がっています。彫刻が施された石や煉瓦造の橋も美しいですが、鉄を利用することで細く薄くなっていった近代以降の橋にも、別の魅力があります。

エルベ川沿い
エルベ川沿いの遊歩道からみた橋の全景

開通式では、集まった約6万5000人が見守る中、ザクセン州のティリッヒ首相とモルロック財相がテープカットを実施。その後の2日間で19万人が橋を歩いて渡りました。私も家族を連れて渡ってみましたが、反対の声よりも文字通り両岸を結ぶ架け橋の完成を喜ぶ祝賀ムードが強いと感じました。50年後、この橋への評価はどうなっているでしょうか。

福田陽子さん福田陽子
横浜出身。2005年からドレスデン在住。ドイツ人建築家の夫と娘と4人暮らしの建築ジャーナリスト。好奇心が向くままブログ「monster studio」公開中。
http://yoyodiary.blog.shinobi.jp/

 

 

 
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