Hanacell

ニーダーザクセン州50人のアーティスト展

現在、ハノーファー市内の4つの美術館にてアート展「Vom Hier und Jetzt(今ここから)」が開かれています。これは、ニーダーザクセン州在住のアーティスト50人によるもので、地元に根付いた展覧会でありながら、世界のモダンアートの片鱗を垣間見ることができます。

4つの会場では、応募によって集まった1000点もの作品の中から選ばれた約100点を展示。写真や絵画、オブジェ、コンピューターグラフィックなど大掛かりなものから小さな作品まで、バラエティーに富んでいます。素人目には、これが芸術? と思われるようなものが選ばれていますが、それがまた芸術の面白いところなのでしょう。

同展には、広島出身でハノーファー在住の日本人アーティスト、シゲフジシロさんも参加しています。交換留学を機に渡独したという彼は今回、「ショッピングバッグ・プロジェクト」と称してビーズと安全ピンで作った10点ほどのバッグを出展。宝石のティファニー、家具のイケア、スーパーのアルディなどの見慣れた買い物袋を、広島のガラスビーズ製造・販売会社トーホー製のビーズで再現しています。「私は、買い物袋(ショッピングバッグ)は購入したものを持ち運ぶだけでなく、ロゴが付加価値を与え、持つ人の内面を映し出すものと考えています。同じ素材で作られた買い物袋は付加価値の同一化を意味し、買い物袋を唯一無二の物へと変化させます」とシゲフジシロさんは語ります。また、その袋をさりげなく手にした写真も展示されています(会場はGalerie vom Zufall und vom Glück)。

ビーズで作られたIKEAのバッグ
シゲフジシロさんがビーズで作ったイケアのバッグ

ほかにも、イラク戦争の写真や映像を個人的に集め、そこから戦争について考察するビルギット・ハインや、ドビュッシーのピアノの楽譜を独自にアレンジしたカトリン・べートラムの作品などが、観る人に独特の感性で訴えかけてきます。また、自転車の横に数百個もの箱を積んだ作品や、ひだをテーマにしたオブジェもあります。50人の作家による作品は、どれも個性的。多様な表現の中に、自分好みのスタイルを見付けるのも楽しいかもしれません。私はアートに関して素人ですが、作者が作品に込める意味や情熱が感じられ、目を奪われました。カタログにはいろいろ解釈が付いていますが、アートにそもそも解釈が必要なのか、観客それぞれが自分なりの感性で受け止めれば、それで十分なのではないかと思いました。

ハンドグライダーのような赤い大きなオブジェ
ひだが印象的なオブジェ

会場:Künstlerhaus、Nord/LB art gallery、Galerie vom Zufall und vom Glück、
Städtische Galerie Kubus。
期間:8月25日(日)まで
入場料:全館共通で6ユーロ(割引4ユーロ)
www.kunstverein-hannover.de

田口理穂(たぐち・りほ)
日本で新聞記者を経て1996年よりハノーファー在住。社会学修士。ジャーナリスト、ドイツ語通訳。著書に『市民がつくった電力会社: ドイツ・シェーナウの草の根エネルギー革命』(大月書店)、共著に「お手本の国」のウソ(新潮新書) など。
 
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