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科学の世界を体感するアイデアエキスポ

8月24日~9月1日、ハノーファーで「アイデアエキスポ(IdeenExpo 13)」が開かれました。子どもたちの理科離れが進む中、自然科学や工学技術に興味を持ってもらうことを目的に隔年で開かれているこのエキスポは、今年で4回目。「世界一大きな教室」と銘打って、8万㎡の敷地に各種研究機関や財団、大学、専門学校、高校、NPO、企業など約550の団体が趣向を凝らした展示を行いました。来場者は社会見学の一環として全国各地から訪れた生徒や家族連れなど、過去最高の34万人に上りました。

ドイツでも理科離れは深刻で、特にIT技術者やエンジニアなど専門家の不足が叫ばれています。連邦労働局によると、高齢化による労働者不足で、いずれは毎年2万人の移民が必要になるとか。アイデアエキスポは、生徒たちにとって日頃あまり縁のないバイオや物理、化学、情報工学、工業技術に触れることができ、専門家の話を聞いたり、実際に体験することで大きな刺激を得られる貴重な場となっています。理系分野の職業紹介も行われており、進路選択にも貢献。特に女子生徒に、理系職に興味を持ってもらおうと工夫しているようです。

水アートの前ではしゃぐ子供達
不思議な水の形に興味津々な子どもたち

会場は「エネルギーと資源」「モビリティーと機械」「命と人間」など6つのテーマに分かれ、自ら実験したり、機械が動く様子を見学できるようになっていました。カカオの実から豆を取り出し、すり潰してホットチョコレートを作ったり、薬品や色素を混ぜてオリジナルのマニキュアを作ったり、のこぎりや金槌で工作をしたり、ソーラーパネルに触れて太陽光発電の仕組みを知ったり……。その他、大学生が作った電気自動車など、独創的な展示もたくさんありました。私が最も感心したのは、生徒たちを夢中にさせる工夫が随所に施されていたことです。大学生や高校生が生き生きと取り組んでいる様子を見て、ほかの生徒たちは「自分もやってみたい!」と思うのでしょう。

自作の車に載った大学生
大学生が作った電気自動車

高校生までを対象としたコンテスト「アイデアをつかもう」では、世界を良くする個性的なアイデアを全国の学校から募集。集まった100のアイデアのうち、25が表彰展示されました。食品からバイオプラスチックを作る方法、無駄に放出されている熱エネルギーの利用方法など、どれも本格的な内容で驚きました。

同イベントは、国内で唯一無二。これだけ大規模なのに入場無料。自治体や州、企業がスポンサーとなっているほか、欧州連合(EU)からの補助金も受けており、地域全体で支援しています。

www.ideenexpo.de

田口理穂(たぐち・りほ)
日本で新聞記者を経て1996年よりハノーファー在住。社会学修士。ジャーナリスト、ドイツ語通訳。著書に『市民がつくった電力会社: ドイツ・シェーナウの草の根エネルギー革命』(大月書店)、共著に「お手本の国」のウソ(新潮新書) など。
 
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