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パッシブハウス―エコを推進するハノーファー市

ハノーファー市には、市庁舎や学校、幼稚園、図書館、公民館をはじめとした公共施設が約600ほどあります。市は2007年、新設する公共施設は原則として、すべてパッシブハウスにするという条例を定めました。パッシブハウスとは、太陽や空気中の熱をPassiv(受け身)に利用し、暖房エネルギーの消費を抑える建物のことで、省エネルギーのエコハウスです。

ハノーファー
外観は普通の幼稚園

市は気候保護を目標に様々な施策を実行しており、これもその1つ。2013年に開設した8つの幼稚園は、すべてパッシブハウスでした。消防署など、車庫や倉庫などを併設する建物でも、事務所部分に取り入れるなど、できる範囲で実施されています。壁や天井を断熱し、窓は3重ガラス、再生可能エネルギーをはじめ、コジェネレーション(電力と熱を生産し供給するシステム)や地域暖房(特定の地域に、配管を通じて熱供給するシステム)も推進しています。パッシブハウス仕様だと最大8割まで暖房費を節約できるとあって、既存の建物でも改装が実に開設した8つの幼稚園は、すべてパッシブハウスでした。消防署など、車庫や倉庫などを併設する建物でも、事務所部分に取り入れるなど、できる範囲で実施されています。壁や天井を断熱し、窓は3重ガラス、再生可能エネルギーをはじめ、コジェネレーション(電力と熱を生産し供給するシステム)や地域暖房(特定の地域に、配管を通じて熱供給するシステム)も推進しています。パッシブハウス仕様だと最大8割まで暖房費を節約できるとあって、既存の建物でも改装が実施されており、すでに52ある小学校のうち25校が工事を済ませました。

ハノーファー
廊下の壁の上部には換気用の穴が開いている

2009年に完成した市内で2園目のパッシブハウス、リックリンゲン幼稚園を見学しました。3歳以下のクラスが2つ、3~6歳の混合クラスが2つ、小学生用の学童保育(園の建物の1室を利用)が1つあり、延べ100人の子どもたちが利用しています。

幼稚園は、約1100㎡の敷地内に建つ床面積640㎡の2階建てで、建物は西と南方向に棟が続くL字型、南側には大きな窓があります。窓はもちろん3重ガラスです。壁の厚さは40cm、天井は28 cm、床は40cmで、気密性が高くなっています。空気交換器により、熱の約9割を保持したまま、新しい空気に入れ替えることができます。夏は窓の外側に設置された遮光ブラインドを下ろし、中庭には日除けを張ります。それによって外の暑い空気や熱が建物内に入らず、室内は涼しく保たれます。

園長先生の話によると、開園当初、パッシブハウスに慣れるのには、少し時間がかかったそうです。パッシブハウスは太陽や人体、電気器具などからの熱を最大限に利用することで、暖房エネルギーの消費を抑えられるのですが、夜と週末は一般住宅と違い、幼稚園には誰もいません。真冬日が続くと、月曜日の朝は冷え切っています。空調設備は暖房を併設していますが、暖かくなるまでに時間がかかるため、温水によるセントラルヒーティング設備を後付けしました。その反面、「室内の空気はきれいだし、窓が大きくて外がよく見えるので、子どもたちは喜んでいる」とのこと。これがハノーファー市のスタンダードになりました。

田口理穂(たぐち・りほ)
日本で新聞記者を経て1996年よりハノーファー在住。社会学修士。ジャーナリスト、裁判所認定ドイツ語通訳・翻訳士。著書に『市民がつくった電力会社: ドイツ・シェーナウの草の根エネルギー革命』(大月書店)、共著に「お手本の国」のウソ(新潮新書) など。
 
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