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シゲ・フジシロさんのビーズアート展

広島出身のアーティスト、シゲ・フジシロさんが、昨年12月、個展「失われたパラダイス(Das verlorene Paradies)」をハノーファーで開きました。優れた工芸品として、広島市が「ザ・広島ブランド」に認定しているトーホー社のグラスビーズと、ごく普通の安全ピンで独特の世界を表現し、1カ月の開催期間中に多くの人が訪れました。

展示スペースには、バスケットゴールの網が流れ落ちる水に変化した「Where is my paradise?」や、サルが破ったであろう檻、虹色の網を持つテニスラケット、宙を舞う蝶など、不思議な作品が並びました。孔雀やサルの剥製もあり、作品と併せて物語を感じさせる設定となっていました。

虹色の流線を描くテニスラケット
虹色の流線を描くテニスラケット

今回のテーマは境界線。シゲ・フジシロさんは、「境界線といっても自分自身と第三者、内と外、内部と外部など様々なものがある。作家本人が制作中に、アトリエから窓越しに見る屋外の世界との境界もそう。それは精神的なものかもしれないし、実際に目にできるものかもしれません」と話し、1年以上かけて制作。個展はハノーファー市文化局の支援を受けて実現しました。会場となったアートスペース「コネクトア(konnektor)」は、ハノーファー専科大学の卒業生3人が運営しており、交換留学生の展示会場としても利用されています。

ハノーファーと広島は姉妹都市で、シゲ・フジシロさんは2000年に広島市立大学より交換留学生として1年滞在したのをきっかけに、ハノーファーに縁ができました。2005年に市立大学を卒業後、ドイツと広島を行き来していましたが、2009年より正式にハノーファーに拠点を移しました。年間10ほどの展覧会に参加しており、ドイツを中心に最近はポーランドや広島でも作品を発表しています。2014 年には、現代ガラスアートの賞である、コーブルクガラス賞(Coburger Glaspreis 2014)を受賞しました。現在、バイエルン州コーブルクのモダンガラスヨーロッパミュージアムで2016年4月3日まで開かれている「SCHEIN & SEIN」展にも出展しています。

シゲ・フジシロさんと作品
シゲ・フジシロさんと作品

ハノーファーで、アーティストがアトリエを一般解放する「アトリエ散歩(Atelierspaziergang)」にも毎年参加しており、2015年は姉妹都市・広島の紹介も兼ねて、広島から芸術を学びに来ている留学生の作品も紹介しました。アトリエ散歩には、2016年5月にも参加する予定です。

また、フジシロさんの「ショッピングバッグプロジェクト」(公式サイトで作品の写真を見ることができます)では、ビーズを使って、ディスカウントスーパーや高級ブランドなどの買い物袋を制作し、ブランドやロゴの意義を問いかけました。物事の本質を探る心が作品作りに反映され、見る人をひきつけています。機会があれば、作品を実際に見て、美しさや繊細さを感じてください。

シゲ・フジシロさんの公式サイト(ドイツ語)
shige-fujishiro.blogspot.de

モダンガラスヨーロッパミュージアム
www.kunstsammlungen-coburg.de/europaeisches-glasmuseum.php

田口理穂(たぐち・りほ)
日本で新聞記者を経て1996年よりハノーファー在住。社会学修士。ジャーナリスト、裁判所認定ドイツ語通訳・翻訳士。著書に『市民がつくった電力会社: ドイツ・シェーナウの草の根エネルギー革命』(大月書店)、共著に「お手本の国」のウソ(新潮新書) など。
 
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