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市民の足、ウーストラ社 125周年を迎えて

地域公共交通網のウーストラ社が今年125周年を迎えました。1892年6月22日に「路面電車ハノーファー株式会社」として設立され、バスや路面電車を運行しています。1970年に公共化され、現在は年間のべ1億7000万人以上が利用する大事な市民の足となっています。今年は1年を通じてさまざまなイベントを開き、存在感をアピールしています。

ハノーファーはもともと路面電車とバス路線が充実していましたが、2000年の世界万国博覧会開催をきっかけに一層整備が進みました。現在は路面電車の路線が12あり、街中心部は地下に敷設されているためUバーンと称され、郊外で地上に出ます。バス路線は38 あり、路面電車の駅を補足する形で運行されています。停留所は路面電車、バスと合わせて872に上り、路線の長さは総計700キロを誇ります。

ウーストラ社125周年をテーマにしたGOPでのショー
ウーストラ社125周年をテーマにしたGOPでのショー

ハノーファー市はマイカーを減らし、自転車や交通公共網の利用を促進しています。ウーストラは自治体所有のためハノーファー市の気候保護政策が、ウーストラの企業コンセプトにも反映され、「持続可能」「イノベーション」など5つのモットーに基づいて運営されています。社屋や車両整備場の屋根に太陽光発電装置を設置したり、路面電車はブレーキをかける際、エネルギーを取り込んで走行に利用するなど包括的な対策がなされています。ハイブリッドバスは60台以上走り、昨年から電気バスも3台導入。電気自動車は市街地を囲んでリング状に走るバス路線100と200で使われており、静かで快適です。

ウーストラは基本的に独立採算で運営されていますが、赤字分はハノーファー市が補填しています。しかし生活インフラとしての位置付けなので、それで良いのです。利潤を追求する民間企業とは違い、市民の利便性を第一に考えています。気候保護や環境に配慮し、職業訓練生を多数受け入れるなど、社会的責任を果たしています。25カ国からの2000 人以上の従業員が働いており、地元の雇用主としても重要な役割を担っています。

125周年と
書かれた電気バス
125周年と書かれた電気バス

またアクロバットコメディーショーGOPで、ウーストラ125周年をテーマにしたショー「メトロポリタン」が上演されています。舞台に路面電車の車内が再現され、背景には実際と同じ車窓の風景が見られます。失恋や友情などストーリー性がある展開の中で、迫力あるアクロバットが繰り広げられ、2時間あっという間でした。ちなみにショーの入場券で路面電車にも乗れます(当日のみ)。ショーは10月29日(日)まで。

ウーストラ125周年の公式サイト: https://125jahre.uestra.de

田口理穂(たぐち・りほ)
日本で新聞記者を経て1996年よりハノーファー在住。社会学修士。ジャーナリスト、裁判所認定ドイツ語通訳・翻訳士。著書に『市民がつくった電力会社: ドイツ・シェーナウの草の根エネルギー革命』(大月書店)、共著に「お手本の国」のウソ(新潮新書) など。
 
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