Hanacell

日本人芸術家らによる野外アート展

日本人3人とドイツ人1人による野外アート展「insight 洞察 einsicht」がハノーファー郊外のグロースブルクヴェーデルで10月末まで開かれています。日本人また日本に関係する芸術家4人が、それぞれの思いを表現しました。

公園での展示であるため、散歩しながら芸術作品が気楽に楽しめます。参加しているアーティストはハンブルク在住の吉川和江さんと宮田昌作さん、ハノーファー在住の文倉千恵子さんとフランク・フーマンさんの4人。吉川さんは、「できたものを飾るのが美術館でありギャラリーだが、そうではなく外に飾るので感情のおもむくままに描いてみた」と言う。「 筆を置いたときに、発想がわいた。自分にとっても新しい一歩、実験となった。自然とともに、作品がどのように変化するのか楽しみ」と語りました。屋内の白い壁に飾るのと違い、野外で展示する自由さを感じたと言います。絵画4点のうち1点は参加型とし、訪れた人が絵画に描き込めるようサインペンが置いてあります。

吉川さんの作品の前にて、左から宮田さん、吉川さん、文倉さん、フーマンさん
吉川さんの作品の前にて、左から宮田さん、吉川さん、文倉さん、フーマンさん

ドイツ在住40年以上という宮田さんは、「小さいものは面白い。小さいと近づいて鑑賞するので、作品との距離が近くなる」と、耳や口など体の部位を粘土で作ったオブジェを出品しました。赤、青、黄色など色鮮やかなオブジェが約20点、木の幹に点々と設置され目を引きます。

文倉さんは気候変動をテーマにし、「地球温暖化が議論される一方、2030年に超氷河期が来るという説もある。けれど地球の気候は太陽の活動の影響を受けており、すべて循環している」との思いを表現しました。大きな絵画2点が木の間から吊り下げられ、青を基調とした絵は氷河期、橙色中心の絵は温暖化を表しています。

フーマンさんは、放射能を警告する立て札と紐で三角地帯をつくり、そこに椅子を置きました。「人間よ、自分のしていることに注意せよ」というメッセージを込めたもので、人類が自ら招いた危険に警告を発しています。フーマンさんは絵画やインスタレーションの製作のほか、ブレーマーハーフェン劇場で舞台美術を担当しています。

フーマンさんが作品として設置した危険地帯の境界線
フーマンさんが作品として設置した危険地帯の境界線

9月1日の開幕式には約60人が訪れ、青空の下で芸術鑑賞をしました。クックスハーフェンからの音楽家ウド・マッケブラントさんが訪れ、ギターを演奏して彩りを添えました。

作品は2カ月展示されます。9、10月と雨も多い時期であるため、傷ついたり、色あせたりもするだろうけれど、それはそれで良いそう。自然の中で目にする芸術には、なんとも言えない味わいがあります。

「insight 洞察 einsicht」展: www.kunstverein-bwi.de/ausstellungen

田口理穂(たぐち・りほ)
日本で新聞記者を経て1996年よりハノーファー在住。社会学修士。ジャーナリスト、裁判所認定ドイツ語通訳・翻訳士。著書に『市民がつくった電力会社: ドイツ・シェーナウの草の根エネルギー革命』(大月書店)、共著に「お手本の国」のウソ(新潮新書) など。
 
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