Hanacell

手作り自転車工房「ラッツ・ファッツ」

タイヤの空気入れやチューブの交換だけでなく、チェーンの掃除やブレーキの交換など、壊れた自転車は何でも自分で修理してしまう人が多いドイツ。ライプツィヒ東部には、ちょっと変わった自転車工房「ラッツ・ファッツ(Radsfatz)」があります。

自転車好きの5人が集って、2013年にそれまで空き家だった建物を改修し、作業場に。部屋の中に散乱していたゴミを片付けることから始め、天井や壁のペンキを塗り替えるだけでなく、電気の配線まで自分たちでやり直しました。工房の代表者が、刑務所から出所した若者の更生施設で働いているため、彼らを率いて現場工事を行うなど、工房作りは社会貢献のプログラムとしても機能していました。

さて、場所作りが完成した後は、5人のメンバーがそれぞれ工具や機械を持ち寄って、実際に自転車工房がオープンしました。地下室には、あちこちから拾ってきたり寄付された自転車が、整理・保管されています。週に3日開放しているこの工房では「壊れた自転車は自分で修理すること」をモットーにしていて、お金を支払ってサービスを得るお店ではありません。困ったときは助けてくれますが、基本的に自分で考えながら作業することを前提にしています。そして、できるようになったことは、次に同じような問題を抱える人にアドバイスすることで、お金を介さずにノウハウを共有していくのです。

チェーン取り替え
チェーンを取り替えている様子

もし壊れていて交換するパーツが必要であれば、保管してある中古の自転車から部品を取って、工房に寄付金を残していきます。その寄付金から、工房の家賃や光熱費をやり繰りしているのです。

工具
盗難防止のためにも工具は色づけして整理している

自転車修理だけでなく、車体を切断して伸ばして荷台を取り付けたりと「改造自転車」を製作することもできます。溶接の機械は、最初だけ使い方を説明し、手助けしてくれますが、後は自己責任で行います。ただし、この「改造自転車」の製作は、個人的な使用目的ではなく、教育や社会文化活動を行っている団体が地域のために使用する場合のみ可能です。

さらに、昨年から、増えている難民を対象としたプログラムも始めました。移動手段がなく行動範囲が限定されてしまう難民たちと一緒に、中古の自転車を修理して無料で配布する活動を行っているのです。言葉が通じなくとも意図さえ伝われば、一人の難民がほかの難民を連れてきて、その輪は確実に広がっています。

「ラッツ・ファッツ」のように、移民や難民と地域住民をつなぐような非営利の社会文化プロジェクトは、地域に特色を与え、暮らし方の選択肢を増やしています。

www.radsfatz.org

ミンクス 典子
ドイツ建築家協会認定建築家。福岡県出身。東京理科大学建築学科修士課程修了後、2003年に渡欧。欧州各地の設計事務所に所属し、10年から「ミンクス・アーキテクツ」主宰。11年より日独文化交流拠点ライプツィヒ「日本の家」の共同代表。
www.djh-leipzig.de
 
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