Hanacell

暗闇の中で味わうディナー

 Dinner In The Dark――真っ暗闇の中で楽しむ夕食は、最近ドイツで密かなブームになっているそうで、シュトゥットガルトにも、“暗闇レストラン”が北部のコルンヴェストハイム地区にあります。先日、友人からそのレストランの食事券をいただき、早速予約を入れました。

場所は、レンガ造りの古い貯水塔(Wasserturm)。私が訪れた時、まだ中は明るく、心地良さを感じました。約30人のゲストが全員着席した後、司会者が1本のろうそくを持って登場。同時に室内の電気が消え、周囲が一瞬にして暗闇と静けさに包まれました。1本のろうそくの灯りの下、司会者がディナーについて説明。「料理も飲み物もすべてウェイターによって運ばれますが、ウェイターは一切話しません。コース料理のため、料理の個別注文はできませんが、飲み物の追加注文は可能です。ただし注文の際、誰も見えないので、皆さん知恵を使って伝わるようにしてください」と、ユーモアを交えながら話し終えると、不意にろうそくの炎を消しました。あまりにも突然だったので、1人の女性客が悲鳴を上げ、これによって、ある種の恐怖とわくわく感が高まりました。

暗闇の中で食事を楽しめる貯水塔内のレストラン
暗闇の中で食事を楽しめる貯水塔内のレストラン

本当に真っ暗でした。自分の手を目の前に置いてみても、何も見えません。視覚以外の感覚が次第に鋭くなってくるのが分かり、人の気配や空気の流れすらとても敏感に感じ取れるようになってきた頃、最初の料理がテーブルに運ばれました。嗅覚と味覚をフル稼働させたのですが、正直に言って、何を食べているのか よく分かりませんでした……。その後も次々と料理が出てきては、空いたお皿が魔法のように消えていきました。

そんな中でも、フォークとナイフは意外と上手く使うことができ、また、明るいうちにワインボトル、水のボトル、ワイングラス、水用グラスを壁沿いに並べて順番を覚えておいたことが役に立ちました。手探りでボトルとグラスを手に取り、手の感覚で量を推測して、なんとかこぼさずにグラスに注いで乾杯! 無事に デザートまで完食すると、主人がカプチーノを飲みたいと言い、空中に向かって「カプチーノをください!」と何度も叫びましたが、もちろん返事はなし。ちゃんと注文できたのかどうか不安でしたが、再び電気が付いた時にはカプチーノがすでに彼の席に置いてありました。

食後は、実際に食べた料理がカウンターの上に並べられ、ここで再度試食することができました。味覚というのは、実はあまり当てにならないということが分かってびっくり。なんとも貴重な体験をさせていただきました。

食事の後、料理の種明かしに驚くゲストたち
食事の後、料理の種明かしに驚くゲストたち

http://wasserturm.tv

郭 映南
中国生まれの日本国籍。東北芸術工科大学卒業後、シュトゥットガルト造形美術大学でアート写真の知識を深める。その後、台北、北海道、海南島と、渡り鳥のように北と南の島々を転々としながら写真を撮り続ける。
http://kakueinan.wordpress.com
 
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