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学校に行きたくても起きられない - 起立性調節障害・体位性頻脈症候群 -

中学生の長男が最近朝めまいがすると言って、時々学校を休みます。学校で何かあったのではないかと心配です。午後には元気になるので、夫は気持ちの問題ではないかと疑っているようです。間に挟まれてどうしたらよいか悩んでいます。

Point

  • 思春期の子どもにみられやすい
  • 起立性調節障害(OD)は日本の診断名
  • 朝起きたくても起き上がれない
  • 症状は午後改善、夜元気に
  • 怠けと誤解されやすい
  • 家族による病態の理解が大切

小児の起立不耐症

起立性調節障害(Orthostatische Dysregulation、OD)

起立時の自律神経系による循環動態の調整がうまくいかず、立ち上がった時に脳への血流を維持できずに起立不耐症(Orthostatische Intoleranz、後述)のさまざまな症状を生じる病態です。思春期(10~15歳の小学校高学年から高校生頃)に多く、日本では不登校とも関係する病名として知られています。一方欧米では、ODという診断概念は日本ほど用いられていません。

どうして脳血流が低下?

仰向けの姿勢から急に立ち上がると血液は重力により下半身に移動しようとしますが、血管の収縮や脈拍上昇などにより血圧や脳血流が維持されます。この瞬時の調整を司っているのが自律神経(autonomesNervensystem)の交感神経(sympathischerNerv)で、血行動態の調整ができないと脳への血流が低下します。

身体成長スピードとのアンバランス?

身体の成長が著しい子どもでは、骨の成長、筋肉の増強、血管系の発達、自律神経機能の発達は全て同時に起こるわけではありません(2013年のPediatrics誌、2014年のCPPAHC誌、2018年のPediatrics誌、2019年のFront Neurosci誌)。ODの原因は、自律神経機能の発達が身体成長に追いつかないためと推測されています。

ODに悩む子どもは多い

日常生活に支障をきたさない軽症例を含めると中学生の約10%にみられます(熊本県の2007年の「起立性調節障害対応ガイドライン」)。男女比では1対1.5~2と女子に多く、日本学校保健会の調査によると中学男子の15.9%、女子の25.6%、高校男子の21.7%、女子の27.4%にODが疑われる症状がみられました(平成22年度児童生徒の健康状態サーベイランス)。日本の小児科を受診する10~15歳の子どもの6~8%は、ODが原因といわれています(1999年の旧厚生省の科研費調査、厚生科学研究「心身症、神経症等に関する実態調査と対策に関する研究」)。

どんな症状がある?

朝起きられない、めまい、たちくらみ、頭痛、夜眠れない、吐き気、食欲不振、思考や集中力の低下などが主な症状です。日常生活には支障がない軽症から、遅刻や早退が多く日常生活や学業に一定の支障が出る中等症、毎日症状が強く日常生活に支障がみられる重症例があります。

日本でのOD診断

血圧、心電図、血液検査などを行い、心臓の病気、貧血やほかの病気の有無を調べた上で、日本小児心身医学会のガイドラインで記載されている質問項目をチェックして診断基準を満たせば、起立前後での血圧変動を評価する起立試験を行います。ODは日本独自の診断カテゴリーで、欧米では小児の起立不耐症(後述)に近い概念です。

朝は不調で、夜は元気にスマホ

午前中の症状も、午後には改善し、夜には元気になることも少なくありません。夜にスマホ、ゲームはできても勉強などには打ち込めない理由として、思考・理解・記憶に関与するの脳部位(2014年のNeuroscience誌、2016年のNature誌)とゲームで活動する脳の部位(2017年のFront Hum Neurosci誌)が違うためとの指摘もあります(2011年のNSR誌)。

症状への影響因子

ストレス、生活リズム、雨天や気圧低下なども関与してくると考えられています。進学や新年度のクラス替えなどのストレスが影響することもあります。これらは起立性調節障害発症の原因にはなりませんが、症状の悪化につながります。

改善しますか?

身体成長に伴う自律神経調節機構の未成熟という観点から、多くの子どもでは高校卒業までに改善が期待できます。76%が改善するというPOTS(次項)の予後経過とも近いものです(2009年のPACE誌、2016年のPed Cardiol誌)。

体位性頻脈症候群(POTS)

POTSとは?(Posturales orthostatisches Tachykardiesyndrom)

起立時に心拍数の著しい増加(10分以内に30心拍/分以上[12~19歳では40心拍/分以上])を伴う起立不耐症で、日常生活や就学に支障を生じます(2020年のFront Neurol誌、2026年のHeart Lung Circ誌、POTS and Dysautonomia Japanの「POTS・起立不耐症コミュニケーションブック」)。日本では、POTSはODの一亜型として捉えられています(日本小児心身医学会の「小児起立性調整障害診療ガイドライン改定第3版」)

起立不耐症(Orthostatische Intoleranz)

立ち上がると症状(めまい、たちくらみ、動悸、倦怠感、頭痛、集中力低下、失神など)が出る状態の総称です。日本国外における起立不耐症は、①POTS、②起立性低血圧、③血管迷走神経性失神、④脳低灌流型起立不耐症(OCHOS)に分類されています。

日常生活の中で

怠けやサボりではありません

周囲の病態への理解が大切です。子ども自身も学校に行けないつらさに苦しんでいます。循環動態の調節不全による「病気」であり、怠けているのではなく、気の持ちようで改善するものでもありません。叱しった咤激励ではなく、寄り添う姿勢が大切です。

立ち上がる時の注意

急に立ち上がらない、朝起きるときも目覚めてしばらくは起き上がらないなど、脳の血流が低下しないようにします。立ったままの状態のときは足踏みなども効果があります。下半身に血液が溜まるのを抑えるため、弾性ストッキングも有用です。

生活のリズムを整える

早寝・早起き(目覚め)を心がけます。それが難しい時でも怒ったりせずに、声がけ程度にします。夜間のテレビゲームは時間を決めるか、就寝時間を過ぎたら控えるようにします。

食事の塩分

腎機能が正常であれば、食事の塩分は制限せずに水を多め(1.5リットル/日以上)に摂ることにより、体内の循環血液量を増やせることがあります。

暑い環境下を避ける

気温が高い状態に身を置くと、身体の熱を発散させるために末梢血管が拡張し、血圧は下がりやすくなります。涼しい場所に身を置くことが勧められます。熱いお風呂でも同様です。

学校や周囲の理解

家庭、学校、医療機関の連携による環境調整が重要です。日本小児心身医学会で配布している冊子「起立性調節障害:クラスメートに知ってほしいこと」は本症の理解に有用です。

 
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馬場恒春 内科医師、医学博士、元福島医大助教授。 ザビーネ夫人がノイゲバウア馬場内科クリニックを開設 (Oststraße 51, Tel. 0211-383756)、著者は同分院 (Prinzenallee 19) で診療。

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