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溶連菌感染症

溶連菌(ようれんきん)感染症と言われましたが、どんな病気でしょうか?

溶連菌とはどんな細菌ですか。

正式名称は「A群β-溶血性連鎖球菌」と言います。丸い形をした球菌が鎖のように一列連なっているためこのように呼ばれます(図1)。また、実験室で血液を含んだ培地で増殖させると溶血により周囲に環を作ることから、溶血性の名がついています。

連鎖球菌の模式図

どんな病気を引き起こしますか?

咽頭炎・扁桃腺炎のほか、猩紅熱(しょうこうねつ)、とびひ(膿痂疹)、丹毒の原因となります(表1)。稀ですが、合併症として腎臓や心臓の病気を引き起こすこともあります。

表1 溶連菌によって引き起こされる病気
感染後、短期間におこる
・咽頭炎
・扁桃腺炎
・猩紅熱
・とびひ
・丹毒
2週間ほどしてからおこる
・急性糸球体胃炎
・リウマチ熱

感染経路は?

つばやくしゃみを介する飛沫感染と皮膚からの接触感染があります。子供にうつりやすい細菌ですが、感染力はインフルエンザのようなウィルスほど強くありません。家族内感染も多く、兄弟では50%、親では20%に感染がみられます。感染者の50~80%に咽頭炎や扁桃腺炎の発病がみられます。症状がおさまってから2、3日経つと他の人への感染力はなくなります。

乳幼児の溶連菌感染の症状は?

1~3歳児では症状に乏しく、元気がなくなる程度か発熱のみがみられることもあります。この場合は、一般のカゼとの区別がつきにくいことが少なくありません。

季節と関係がありますか?

のどの溶連菌感染症は10~3月の冬の期間に多くみられます。日本では初夏に小流行がみられることもあります。とびびは湿疹の生じ易い夏に出やすいです。

溶連菌による咽頭炎の症状は?

2~5日の潜伏期を経て、咽頭炎や扁桃腺炎を発症します。多くの場合、発熱し、扁桃腺が赤く腫れて、「のどちんこ」の部分に点状の出血班がみられるのが特徴的です。扁桃腺に膿が付着して白く見えることもあります(そのため口臭をともなうことがあります)。発病後4日ほどで独特のイチゴのような舌(イチゴ舌)が見られます。その他、顔や股の部位に赤い小発疹が出ることもあります(表2)。通常は一週間程度で完治します。小児科を受診する子供のうち、溶連菌性咽頭炎の頻度は猩紅熱の約2倍といわれています。

表2 溶連菌の臨床的な病像と診断
所見
38℃以上の発熱と咽頭痛があり
(1) 咽頭・扁桃の発赤
(2)「のどちんこ」を中心とした点状の出血
(3) 全身の砂粒様の発疹
溶連菌感染の確率
(1)のみの場合、15〜30%
(1)に(2)が加わると90%
(1)(2)(3)ではほぼ95%

「猩紅熱」とはどんな病気?

3~12歳の子供では独特の症状を呈することがあります。以前は「猩紅熱」と診断された病態です。すなわち、高熱、イチゴ舌に加え、首のリンパ節が腫れ、発熱から数日内に目から首、脇の下、内股から細かな点状の赤い小発疹が出現し、全身に広がります。全身が真っ赤に見えるため猩紅熱と名付けられました。口の回りは赤くならず、いわゆる「口囲蒼白」の状態になります。数日で発疹は消え、その後手や足の指先から皮膚がめくれてきます。最近は抗生剤の普及もあり、典型的な猩紅熱は昔ほど多くは見られなくなっています。

治療法は?

一般にペニシリン系抗生剤が最も効果的です。抗生剤の服用により2、3日で解熱します。しかし、腎炎やリウマチ熱などの合併症を防ぐためには2週間近く治療を続けることが大切です。発疹が出ている間は他の子供を近づけないように注意します。

幼稚園や学校にはいつから行けますか?

抗生剤を服用し、発熱や発疹が治まって元気があれば幼稚園や学校にいっても大丈夫です。猩紅熱は原因や治療法が不明であった昔は法定伝染病に指定 されていましたが、現在は法的な特別処置は要しません。

「とびひ」も溶連菌感染症?

「とびひ」には水疱をつくるタイプと、小さな紅斑・膿疱をへて痂皮(かさぶた)をつくるタイプがありますが、溶連菌は後者の原因となります。虫刺されや傷口に溶連菌が感染し、その部分を触った手を介して他の体の部分に飛び火していくため「とびひ」と言われており、主に子供にみられます。

急性腎炎とリウマチ熱も溶連菌感染の合併症です

咽頭炎などの溶連菌感染から2~4週間後に出現する病気に急性腎炎とリウマチ熱(名が似ていますが慢性関節リウマチとは違います)があります(図2)。蛋白尿や突然に体がむくみ、尿が少なくなるのが急性腎炎です。一方、溶連菌感染からしばらく後に発熱を伴った関節炎、肘のところの皮下結節、心臓の障害が起こってくるのがリウマチ熱です。

図2

 
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馬場恒春 内科医師、医学博士、元福島医大助教授。 ザビーネ夫人がノイゲバウア馬場内科クリニックを開設 (Oststraße 51, Tel. 0211-383756)、著者は同分院 (Prinzenallee 19) で診療。

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